枝野官房長官の「説得力」
同じ感慨を持たれる方がとても多いと思うのだけれど、今回の大地震関連の政府公報のあり方で、官房長官が仙谷さんから枝野さんに交代してくれていたことは、日本にとって本当に不幸中の幸いだった。仙谷さんが毎回あの仏頂面で出てきて、永田町言葉そのままにぶつぶつ言っていたら、日本に暴動が起きるところだった。
この件について、広報専門家の立場からとてもよくまとめられているブログ記事を見つけたので、紹介しておく。「the Public Returns - 続・広報の視点」 というブログの 「枝野官房長官から学べる10のこと:危機管理広報の視点から」 という記事だ。
この記事では、危機管理広報の観点からみた枝野官房長官の対応姿勢の素晴らしさが、次のような 10項目にまとめられている。(以下引用)
- しっかりとした口調で、ゆっくりと、文節を切りながら説明する。
- 原稿を読まずに自分の言葉で話す。
- 記者を指名する際、回答する際に目を見て答える。
- (放射能漏れしているなどの)可能性を否定せず 「可能性はあるが」と受け止める。
- 専門家の判断が必要な部分については、その旨を述べつつ、自らの見解を示す。
- 誤解が起きそうなところを繰り返し、説明する。
- 最大の関心事といえる放射能の身体への影響についてきちんと説明する (数値だけではなく、放射線を浴びた時間が健康に影響を与えることの説明など。「毎時」 が省略されている場合がある)。
- 質問に対して回避的な答えはせずに、事実ベースでできる範囲の回答をする。
- スポークスマンとして常に登場する。
- 国民一人ひとりができることを具体的に説明する(節電に協力を、チェーンメールをしない、買いだめをしない等)。
私も元、某外資系団体で広報の仕事をしていたので、とてもよくわかる。よくまとまった指摘だと思う。私自身の名誉のためにもちょっとだけ言っておくけど、日本の企業では、「営業で使い物にならないやつが広報に飛ばされる」というほど広報は軽んじられる傾向にあるが、欧米での広報はかなり重要な仕事と位置づけられている。
今回のようにリスク・マネジメントの領域を越えたクライシス・マネジメントという事態になってみると、広報の重要性がよくわかるだろう。もし枝野さんが、わかったようなわからないようなお役人言葉か理系言葉そのままに繰り返すだけだったら、日本中大混乱になっていたところだ。
Wikipedia で枝野さんのキャリアを確認してみると、東北大学法学部卒で、「栃木県立宇都宮高等学校時代は校内の弁論大会で 3年連続優勝した」とある(参照)。この「非理系」にして、弁論術に長けた官房長官の存在が、今回の事態にどれだけ貢献しているか、計り知れない。
例えば放射能の身体への影響についてというような、国民の最大の関心事については、純理系、とくに現場の技術者に説明させてもほとんどいいことはない。前にも書いた(「文系/理系」と「論理的/感覚的」)ことがあるが、現場の技術者というのは、自分の専門領域については詳しいが、それを人に説明するのがチョー下手な人が多い。
彼らの多くは、数値を語ることで全てを説明できたと思っている。しかし今回の事態でいえば、「400ミリシーベルトの放射能濃度」なんて言われても、素人にとっては何の意味ももたない。重要なのは、その数値の放射能濃度が、具体的にどのような影響を人体に及ぼすのか、端的に言えば、「大丈夫なのか、そうでないのか」ということだ。
そうしたことを、広範囲の情報を組み合わせながらきちんと整理して、説得力ある形で語ることのできる枝野さんは、官房長官としてとても有能である。菅首相のモタモタしたかみまくりの会見を聞くにつけ、「お前はいいから、早く官房長官を出せ!」と言いたくなる人が多いだろう。
そりゃ、枝野さんは理系の人間じゃなく、放射能についての専門知識もないだろうから、現場から伝えられる情報を整理して自分の言葉に置き換えているだけなのだろう。つまり彼の言うことが本当の本当なのかは、わからない。わからないけれど、今必要なのは、あながちでたらめではなさそうな情報の「説得力」なのだ。
この「説得力」というのは、専門家向けのという意味ではない。国民の大多数を占める素人向けの説得力である。それがなければ、パニックになる。その意味で秀逸なビデオを発見したので、最後にご紹介しておこう。(もう有名になったから、既にご覧になったかもしれないが)
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コメント
とても魅力的な記事でした。
また遊びにきます。
ありがとうございます。
投稿: 履歴書の書き方の見本 | 2011年3月17日 14:43
履歴書の書き方の見本 さん:
あんた、あちこちのブログ (ざっと6000件以上かな)にまったく同じ文面のコメント書いて、自分のサイトに誘おうとしてるでしょ。
↓ こちらを見ればわかる。
http://bit.ly/dUJT1k
http://bit.ly/ezf0xh
自分のサイトの品位が落ちまくりですよ。
投稿: tak | 2011年3月17日 15:44
すでに官房長官を辞任していたことは、仙谷さんにとってもラッキーでしたね。仙谷さんの人を小ばかにしているような態度では、あのブリーフィングはとても務まらない。
本人もほっとしていると思います。
それにしても枝野さんはいつ寝ているのだろう。
投稿: ハマッコー | 2011年3月17日 16:40
コミュニケーションスキルって、知識や実行力と並んで
危機管理の重要ファクターなんだなぁ、と
枝野さんの顔見るたび思います。
本当に千石さんじゃなくてよかったなぁ、と。
千石さんだったらそれこそ二次災害じゃないかと。
それにしても枝野さん、ホントにいつ寝てるんでしょう。
実は3人くらいいるとか。
投稿: S太郎 | 2011年3月18日 11:38
ハマッコー さん:
>すでに官房長官を辞任していたことは、仙谷さんにとってもラッキーでしたね。仙谷さんの人を小ばかにしているような態度では、あのブリーフィングはとても務まらない。
>本人もほっとしていると思います。
枝野さんがダウンして自分に代役が回ってこないように祈っているでしょう。
(副官房長官って、ちょっと恐いな)
投稿: tak | 2011年3月18日 17:37
S太郎 さん:
>仙谷さんだったらそれこそ二次災害じゃないかと。
それは確実です。
(当人がよほど心を入れ替えない限り)
投稿: tak | 2011年3月18日 17:38
まあ、あの悪人面を見なければいけないのですか
それだけで、ストレスです
民主党って、それほどに人材不足なのか
それなら、政権につくべきではなかった
投稿: alex99 | 2011年3月18日 17:56
枝野さん、スポークスマンとしては優秀でした
しかし、政治家としてどうか?
それは別問題です
それを混同する声が出るのが懸念されます
投稿: alex99 | 2011年3月18日 18:37
alex さん:
>民主党って、それほどに人材不足なのか
>それなら、政権につくべきではなかった
反主流派はほとんど排除されてますからね。
そんな贅沢ができる顔ぶれじゃないのに。
>枝野さん、スポークスマンとしては優秀でした
>しかし、政治家としてどうか?
その懸念は、まっとうな懸念です。
彼は今望みうる最高の官房長官でしょうが、総理大臣としてどうかというのは、全然別問題です。
まあ、今の総理大臣よりはヒドイということはないと思いますが。
投稿: tak | 2011年3月18日 18:56