山の標高訂正と、生意気な木っ端役人
日本中で山の標高が訂正されてしまっているのを知ったのは、昨年夏頃のことだ。きっかけは、帰郷の際にいつも越える国道 112号線(通称: 月山街道、あるいは 六十里越え街道) で、月山の標高が 1,984メートルと表記された案内を見たことである。
「おいおい、月山の標高は 1,980メートルだろうよ、案内板が間違ってちゃ、困るなあ」と、私はつぶやいたのである。庄内ラブの私のことだから、鳥海山の標高は 2,230メートル、月山は 1,980メートルと、小学生の頃からきちんと頭に刷り込まれている。
ところがよく調べてみると、確かに 1,984メートルが正しいようなのだ (参照)。どうやら、何年か前に公式データの標高が訂正されてしまったようなのである。それだけでなく、我が心の山、鳥海山までもある年を境に、2,236メートルに変わっていたのである。いつの間に 6メートルも盛り上がってしまったんだ。
ちょっと調べてみると、こうした標高の訂正は全国的に行われているようで、有名なところでは、日光の男体山や、北アルプスの剣岳、南アルプスの北岳などが上げられる。
修正年月日 | 山名 | 修正前 | 修正後 |
2003年10月07日 | 男体山 | 2,484m | 2,486m |
2004年10月15日 | 北岳 | 3,192m | 3,193m |
2004年10月28日 | 剱岳 | 2,997m | 2,999m |
ご覧のように、修正後はいずれも 1~2メートル高くなっている。しかし、月山や鳥海山のように、4メートルとか 6メートルとかいうのは、少し誤差がありすぎのような気がしないでもない。
ところが、昨年末に開かれた高校の同窓会で久しぶりに会った S君は、鳥海山の高さは 2,230メートルよりちょっと高いということを、ずっと昔から知っていたというのである。「鳥海山の本当の標高は、国土地理院の公式データよりは高い」と、先祖から言い伝えられていたというのだ。
S君の先祖は、またぎをしていたという。またぎとは、Goo 辞書では「東北地方などの山間部に住む、古い猟法を守って狩りを行う狩猟者」と説明されている。そして S君の先祖は、明治期の鳥海山標高の測量にあたり、基準となる三角点の柱石を山頂まで運ぶ仕事を請け負ったのだという。山奥に分け入るプロとして。
重い柱石をふもとから山頂に担ぎ上げるのだから、かなりの重労働である。よくまあ、そんな仕事を引き受けたものだ。もっとも、息子 2人とのチームで交代しながら運び上げたようだが。
ところがその際に山頂まで同行した国土地理院の役人 3人が、やたらと横柄で気にくわない若造ばかりだった。そいつらは、重い柱石を背負う S君のおじいさんのおじいさん(作造じいさん)親子に、やたらと高圧的な態度であたったので、作造じいさんたちは、相当ぶち切れてしまったのだそうだ。
そこで頭に来た親子は、鳥海山の本当の最高点をちゃんと知っていたにもかかわらず、そこに辿り着く前に、「ここが一番高い」 とごまかして、そこに柱石を立て、さっさと降りてきてしまったのだそうだ。
柱石を下ろして身軽になった作造じいさんたちは、生意気な木っ端役人どもをひいひい言わせながら、すたすたと下山してきたという。役人どもはそれから三日間も過労と筋肉痛で寝込んでしまったが、作造じいさんは「ざまみろ」と思っていたそうだ。
そんなわけでこの時、三角点となる柱石は実際の最高点より 6メートル低いところに置かれ、それを基準に測量が行われたため、鳥海山の標高はずっと 2,230メートルと思われてきたのである。それが訂正されるまでに、100年近い年月が流れたのは、みな国土地理院の生意気な木っ端役人のせいである。
そして作造じいさんの子孫である S君の家では、「鳥海山は、本当はもう 3間以上高い」と言い伝えられてきていて、彼の親類縁者はみなそれを知っていたのだそうだ。親類縁者以外は、それを聞いても誰も信じてくれなかったが、今、S君は 「作造じいさんからの言い伝えは正しかった」と、鼻高々なのである。
ちなみに、今でも鳥海山の標高は 2,230メートルと思いこんでいる人はかなりいて、「鳥海山 2230」 というキーワードでググってみると、こんなにたくさん 見つかる。
最近になって標高の訂正された山が全国にかなりあるということは、明治の頃に柱石を運び上げる登山に同行した役人に、生意気なヤツがかなりいたということじゃあるまいか。そしてその中でも、鳥海山と月山の柱石を運び上げる際に同行した役人が、とくに生意気だったということだ。
お役人には是非、心していただきたいところである。役人が生意気な態度に出ると、100年スパンで不正確なデータが保存されてしまうのだ。
【4月 2日 追記】
えぇと、本気にされた方には甚だ申し訳ありませんが、例年通り、エイプリルフール・ネタですので、よろしくお願いいたします。
| 固定リンク
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 桜を愛でながらのポタリングを楽しんだ(2021.03.29)
- 職務質問されやすいスーツ・スタイル(2021.03.22)
- またしても「震度 4」(2021.03.20)
- 「刺身の食卓への出し方」と「結婚した意味」(2021.03.03)
- 「お辞儀ハンコ」とか「ZOOM の上座/下座」とか(2021.03.02)
コメント
☆⌒d(*^ー゚)b !!
投稿: naokaz | 2011年4月 1日 10:05
そんなドラマがあったんですね。
ちぃぃぃぃぃぃとも、存じ上げませんでした。
でも、以前に鳥海山の高さ話は聞いていたような…。
ご無沙汰いたしておりました。拙もがんばります。
投稿: 乙痴庵 | 2011年4月 1日 11:30
すてき!!!!


すばらしいお話だわ~ン
ざまみろ役人どの!
またぎ=かっこいい~~~~
投稿: tokiko68 | 2011年4月 1日 16:31
なんとそういことだったのか!!と、マジに読み込んでしまいました。
えーと、毎年恒例のものでよろしいのでしょうか。
無粋なコメントすみません。
投稿: 山姥 | 2011年4月 1日 22:06
naokaz さん:
乙痴庵 さん:
tokiko68 さん:
山姥 さん:
tokiko68 さん以外の方は、感づいておられるご様子ですが、お察しの通り、エイプリルフール・ネタです。
時節柄、地味ネタですが、今回は本気でダマシにかかりました。
それでもひっかからなかったお三方は、立派です。
そして tokiko68 さんは、本当に素晴らしい方です。
投稿: tak | 2011年4月 2日 00:08
え--------!!!!!!!!
エイプリルフールだったのおおおおおお?????
tak_shonaiさんがエイプリルフールだなんて!!!!
まじですかああああああ???????
投稿: tokiko68 | 2011年4月 2日 18:48
tokiko68 さん:
>tak_shonaiさんがエイプリルフールだなんて!!!!
年中行事化してますので、そのあたりはご理解の程、よろしくお願いいたします m(_ _)m
投稿: tak | 2011年4月 2日 23:01