ヨシキリの鳴き声
6日の立夏を過ぎ、急に世の中が暖かくなって、周囲の自然の密度が濃くなった。地面には草が伸び、木々は新緑に包まれ、辺りの空気は野鳥やカエルの鳴き声で満たされる。余震がかなり間遠になり、いのちの息づくのを感じて、少しほっとしている。
一日家に籠もって、ウェブ関連の仕事をしているが、あまり根を詰めると肩が凝ってしかたがないので、昼過ぎに裏の土手を散歩してみた。Tシャツ一枚で、風が涼しく感じられて気持ちがいい。
川の向こう岸から、オオヨシキリの鳴き声がひっきりなしに聞こえる。ヨシキリというのは、葦の茂みの中でキリキリと騒々しく鳴くからヨシキリというのだろう。かなりわかりやすい命名である。
ヨシキリは「葦切」と書いたり「葦雀」と書いたりする。また「葦原雀」などともいう。「吉原雀」になってしまうと、江戸時代に吉原に賑やかに出入りする客たちのことを言った。「吉原雀」という長唄もある。
ヨシキリは別名「行々子」と書いて、文字通り「ギョウギョウシ」ともいう。騒々しい鳴き声からそんな名になったのだろう。私の祖父、唯一郎の句集に、「行々子」 の登場する句がある。
はつきりと行々子の巣が見える六月の朝空 (参照)
月が來る行々子啼くにまかして歩むなり(参照)
大正から昭和の酒田でも、ヨシキリは騒々しく鳴いていたものらしい。夏がくる。
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コメント
どちらも感覚が研ぎ澄まされていいですね。
自然を好む自分も癒される句です。
「うれしい」という感想です。
投稿: jerjey | 2011年5月 9日 23:17
jerjey さん:
ヨシキリの鳴き声はかなり騒々しいんですが、鳥の声が聞こえないよりはずっといいですね。
ところで、ヨシキリの鳴き声は 「キリキリ…」 とばかり聞こえていましたが、「行々子」 という別名を知ってからは、「ギョ ギョ ギョ シー シー シー」 と聞こえるようになりました。
人間の耳というのは、案外いい加減なものですね。
投稿: tak | 2011年5月10日 19:42