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2011年5月11日

「焼肉酒家えびす」 と 「フーズフォーラス」 という名称について

生肉による食中毒問題で話題になっている「焼肉酒家えびす」というのは、「やきにくしゅか」ではなく、「やきにくざかや」と読むんだそうだ。なんだか、かなり強引な読ませ方である。個人的には、あまりいいセンスとは思わない。

それから、このチェーンを展開している会社は「株式会社フーズフォーラス」というのだそうで、Wikipedia によると英語名は Foods forus Co.,Ltd. とある(参照)。"Forus" という英単語はみたことがないが、これも Wikipedia によると次のようになっている。

社名の由来は 「Food For Us」 からで、モットーは 「得るより与えよ」 である。

つまり社名の意味は「私たちの食料」ということで、この「私たち」というのが誰を指すのかといえば、"food for you" じゃないのだから、つまり、「俺たちの食い物」という意味で、結論的には「会社側の食い物」ということになる。

会社側の食い物なら、客に食わせずに自分たちで食って自分たちで当たってしまえばよかったのだろうが、なにしろ「得るより与えよ」がモットーなので、客に食わせてしまってこんなことになったわけだ。与えるのもモノによりけりで、よくよく因果なことである。

いや、"food for us" は、「会社側の食い物」じゃなくて、「みんなの食べ物」という意味だという反論があるかもしれない。うむ、確かに 「私たちみんな」というつもりではあったのかもしれない。

しかしそうだとすると、「得るより与えよ」というモットー自体がナンセンスになる。元々「みんなのもの」なら、「得る」だの「与える」だのと言う必要がない。「分かち合う」というならわかるが。

つまり元々の企業理念からして、よく考えると「ちょっと変」で、辻褄の合わない「雰囲気だけの産物」だったようだ。雰囲気だけのモットーや社是みたいなものが、まともに日常の事業展開に活かされている例を、私はこれまで一度も見たことがない。

このあたりの言葉センスということになると、「みんなの党」の英文名称が "Your Party" であるということの方に軍配が上がると思う。その理念通りに運営されてもらいたいと思う。

 

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コメント

'We'が誰を含むかというのはコミュニケーションにおいて定番ともいえる問題ですね。Wikipediaによくまとまった説明がありました。
http://en.wikipedia.org/wiki/We#Inclusive_and_exclusive_we

このラインで無理やり考えるとこの会社の'We'は「与えるまでは会社の(Exclusive)、与えたあとはみんなの(Inclusive)」とシフトする特殊なものだったのでしょうか。まぁそこまで考えてつけた社名とは思えませんけど。

投稿: emi | 2011年5月11日 17:31

emi さん:

ご教示ありがとうございます。

なるほど、We には inclusive と exclusive があるわけですね。

「私たち」 と 「私ども」 の関係かも。

>「与えるまでは会社の(Exclusive)、与えたあとはみんなの(Inclusive)」

結局、いつまでも会社の手からは離れないものというわけですね (^o^)

投稿: tak | 2011年5月11日 20:48

ベトナム語にも
exclusive We
inclusive We
があります

chung toi

chung ta

多分、あの周辺の民族の言語には、ひょっとすると、みんなあるかもしれません
小さなムラ社会で、構成員とそれ以外と言うものは、意識的に大きなちがい・距離があったのでしょう
そういう意識を含む言葉だと思います


投稿: alex99 | 2011年5月11日 23:18

alex さん:

ベトナム語には、exclusive We と inclusive We が、明確な違いとしてあるわけですね。

ふぅむ、ムラ社会ということと、周辺の脅威 (とくに China) という要素によるんじゃないでしょうか。

投稿: tak | 2011年5月11日 23:50

>ふぅむ、ムラ社会ということと、周辺の脅威 (とくに China) という要素によるんじゃないでしょうか。

おっしゃる通りだと思います
ベトナムは約千年、中国の支配を受けましたからね
市内の大通りは、ほとんど、中国に対して反乱を起こした英雄の名前がつけられているほどで、骨の髄まで中国が嫌いな民族です


投稿: alex99 | 2011年5月12日 02:21

付け加え

ベトナムの国民は、それほど中国人が嫌いなのに、その中国人と約千年、一緒に住んだ
大都市には、中国人街があります
例えばサイゴン(ホーチミン)には、大きなチョロン(フランス読みだとショロン)があり、経済の中心です
経済の面でも中国人はベトナム人を圧倒した
そういう中国人を意識しながら exclusive We で「われわれ」というベトナム人の気持ちはよくわかります

ただ、ベトナム統一後は、中国人は疎まれた
ボートピープルとして脱出したベトナム人のかなりの部分は中国系住民です
そういうことも、あの中国の突如のベトナム侵攻の遠因であると思います

投稿: alex99 | 2011年5月12日 05:25

alex さん:

なるほど。

ベトナム在住経験のある alex さんならではの実感。

投稿: tak | 2011年5月12日 16:31

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