卵 6個の目玉焼きという贅沢
子どもの頃からの夢の一つに、「卵 6個の目玉焼きを食う」というのがあった。小学校で見せられた教育映画に出てきたシーンが忘れられなかったからである。
それはドイツかどこかの民話を元にした実写映画で、猟師のお父さんが狩りに出かけたまま何日も帰ってこないのを、森の中の一軒家でたった一人で待つ少年が主人公だったと思う。おなかを空かせて待っていた少年の元にやっと帰ってきたお父さんは、ちゃんと待っていたご褒美に、卵 6個の目玉焼きを作ってくれたのだった。
スクリーンにクローズアップで映された卵 6個の目玉焼きは超ゴージャスで、「この世にこれ以上のご馳走があろうか」というほどの衝撃だった。私は舌なめずりをして見入った。自分でも食べたくてたまらなかったが、家に帰って「卵 6個の目玉焼きを食べたい」なんて言っても、「何を馬鹿なことを」と言われるに決まっているから、言い出せなかった。
しかしこの時の衝撃的なイメージは成長しても心の奥に潜み続けていて、甘美な夢にまでなっていたのである。
ある時、このことを妻に告白すると、妻はいとも簡単に言い放った。
「あら、そんなに食べたかったら食べりゃいいじゃないの。卵 6個なんて 200円もしないんだから」
考えてみれば、その通りなのであった。子どもの頃の感慨としてはチョー贅沢なことなのだったが、今憶えば、ラーメン 1杯食べるよりもずっと安上がりなのである。そうか、どうしてそのことに今まで気付かなかったのだろう。
妻はしかし、こう付け加えることも忘れなかった。
「食べるんだったら、そういうイレギュラーなのは自分で作ってね」
そこで、今朝の朝食に卵 6個の目玉焼きを食べることにしたのである。夕べ寝る前に冷蔵庫の中に卵が 9個あることを確認しておいた。今朝見るとそれは 8個に減っていたが、問題ない。さあ、作ろう。
フライパンに入れる前に、ボウルに卵 6個を割って入れる。やってみると、どんぶり一杯ぐらいの量になる。ちょっとしたものだ。これだけで満腹になるのは確実だ。よし、今日の朝食は卵 6個以外には何も食わないことに決めた。
できあがりは、この写真である。写真だとわかりにくいが、かなりの厚みがある。最大で 3㎝ ぐらいだろう。とにかくずっしり感がある。
味そのものは普通の目玉焼きと全然変わらない。これは当然だ。しかし食べ応えは相当のものである。本当に、これだけで十分満腹になった。かなりの満足感である。ああ、これで子どもの頃からの夢は叶った。こんなに簡単に叶うとは思わなかった。
さて、食後感だが、正直なところやや腹にもたれている。その気になればいつでもできるチョー安上がりの贅沢だが、多分、もう二度とすることはないだろうと思っている。私は健康診断の度に、コレステロール値はかなり低く出るのであまりその点の心配はないのだが、いずれにしても目玉焼きは、卵 1個か 2個がちょうどいい。
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コメント
確かに、卵は貴重品でしたね。母親がパートに出ても、一日300円くらい。卵が一個15円位でしたからね。
弁当に卵焼きが入ると嬉しかったです。それを六個使うなんて想像を絶する贅沢かもしれません。
私の贅沢は、"羊羹を丸ごと一本ひとりでたべる”ですが、まだやったことがありません。考えて見れば、吉祥寺の朝五時から並ばないと買えない超人気店の羊羹でも、一本千円もあれば買える。先が残り少なくなってきたから今のうちにやっておこうかな。
投稿: ハマッコー | 2011年5月28日 22:07
僕の夢は
「イチゴ+生クリームのケーキを丸ごと1個いっぺんに食べる」
もちろんショートケーキではありません。直径18cm以上の円形のケーキです。
金額的には目玉焼きよりずっと高いものですが、手の届かないものではありません。
いつかはきっと!と思っていましたが、今では完食できるかどうかの方が問題になってきました(;_;)
投稿: 蝠樂亭 | 2011年5月28日 22:55
ハマッコー さん:
>確かに、卵は貴重品でしたね。
卵一個まるごととバナナは、病気でもしないと食べられませんでした。
>私の贅沢は、"羊羹を丸ごと一本ひとりでたべる”ですが、まだやったことがありません。
そりゃまた、すごい。
食う体力のあるうちにやっておいた方がいいですよ (^o^)
投稿: tak | 2011年5月29日 11:41
蝠樂亭 さん:
>僕の夢は
>「イチゴ+生クリームのケーキを丸ごと1個いっぺんに食べる」
>もちろんショートケーキではありません。直径18cm以上の円形のケーキです。
ホールサイズは、いくらおいしくてもなかなかきつそうですね。
>いつかはきっと!と思っていましたが、今では完食できるかどうかの方が問題になってきました(;_;)
今のウチです (^o^)
投稿: tak | 2011年5月29日 11:44
私の家では、目玉焼きの下にベーコンを2切れほど敷いていたのですが、子供心に、ベーコンだけを焦げないようにカリカリにしたのを山盛りにして食べたいと思っていました。
大人になってから気付いたのは、そもそも一般的には目玉焼きとベーコンは一体として焼くわけではないみたいだということです。
このへん、どうなんでしょう?私の両親は二人とも大阪出身なので、お好み焼きで豚肉を下に敷いて焼くようなノリだったのかと疑っているのですが。
投稿: きっしー | 2011年5月30日 20:01
きっしー さん:
>大人になってから気付いたのは、そもそも一般的には目玉焼きとベーコンは一体として焼くわけではないみたいだということです。
そういえば私の母も、ベーコンを下に敷くスタイルのベーコンエッグを焼いてくれていました。
英国式の "bacon and egg" は、お皿の上に別々に乗ってますね。
アレって、日本独特なんでしょうかね。
>私の両親は二人とも大阪出身なので、お好み焼きで豚肉を下に敷いて焼くようなノリだったのかと疑っているのですが。
私の生まれた土地は、日本で最もお好み焼きの普及していないところ (秋田と山形) ですから、その発想とも限らないと思いますけどね。
投稿: tak | 2011年5月30日 23:04
tak-shonaiさん
こんばんは~
すごおおおおい!!!
子供のころの夢だったんですか!
あっははは
すばらしい!!
そうだ、卵は貴重品でしたからねぇ。
1個を3人で、
しょうゆをいっぱい入れた、卵かけごはんを
食べた戦後を思い出した。う~~む。
私は50年前に「お弁当は、ゆで卵10個にして」
とたのんだら
ほんとうに、ゆでたまご10個いれてありました。
あっははは。
そうでした、いつか
私の夢もかなえてやろう。
で、私の夢って?
何か食べたかったかしら?
投稿: tokiko68 | 2011年8月18日 19:05
Tokiko68 さん:
>私は50年前に「お弁当は、ゆで卵10個にして」
>とたのんだら
>ほんとうに、ゆでたまご10個いれてありました。
それは、まさに贅沢というものです。
作るのに手間はかからなかったでしょうけど。
投稿: tak | 2011年8月19日 19:11