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2011年6月27日

もう一歩踏み込む酔狂さ その2

ずっと花の名前に疎い人間だったのだが、近頃は 「和歌ログ」 なんてものをやっているおかげで、少しはわかるようになってきた。花の名前がわからないことには、歌を詠むにも苦労なのである。そんなわけで今や、フツーのオジサンよりは、花の名前を知っているといっていいかもしれない。とは言っても、自慢になるほど知っているわけではないのだが。

で、花の名前を知るということについて、ちょっと考えてみた。本当に疎かった頃は、とにかく、よく見かける花の名前ぐらいは知っておきたいと思っていた。そして名前を知りさえすれば、その花と少しは「お近づき」になれるんじゃないかと感じていた。

そして事実、名前も知らなかった頃よりも、知ってからの方がずっと、その花との関係が近く、そして深くなったような気がするのである。それは確かなことだ。

しかし、名前を知りさえすればいいというものでもないということに、最近気付いたのである。名前を知るというのは、ある意味、諸刃の剣のようなものである。単に名前を知っただけで、「それで OK」と思ってしまうと、それはとても危険なことだ。名前を知っただけでは、「花そのもの」を知ったことにならないのである。それは単なる入り口でしかない。

「これ、何ていう花?」
「それはね、バーベナっていうんだよ」
「あ、そうか、わかった、バーベナだね」

ということになっても、それだけでは「バーベナ」がわかったということにはならない。単にぱっと見と名前がリンクされたというだけのことである。それほど深い意味のあることではない。

それは、「WHO って何?」「世界保健機関だよ」「あ、そうか、わかった」となっても、実はあんまりよくわかっていないんだろうなというのと同じことだ。世界保健機関というのが具体的に何をするところなのかわからなければ、クイズに正解する以上の役には立たない。クイズ的知識は、実はそれほど本質的な知識というわけじゃない。

本当に理解するには、もう一歩踏み込まなければならない。先月 23日に「もう一歩踏み込む酔狂さ」という記事を書いた。そして「そのもの」を理解するためにも、「あっ、そうか」と思った段階からさらに、もう一歩踏み込まなければならないのだ。要するに我々は、自分で思っているほど何もわかっていないのだ。

それを思うと、古代の名前というのは、かなり踏み込んで付けられている。単に他と区別されればいいというだけのことではないようなのだ。古事記に出てくる神々の名前も、今となっては何がなんだかわからない呪文みたいなのが多いが、よく踏み込んでみると、本当に本質を言い表している名前なのだとわかる。

小林秀雄も『本居宣長』でそうしたことについて触れている。古事記の時代の日本語はもしかしたら、その言語構造が完成されて、風化に向かう直前の貴重な豊穣さを醸し出していたのかもしれない。

その名前を文字で書き残すというのも、昔は文字を書くという行為が今ほど日常的なことではなかったから、かなり重要でセレモニアルな意味を持っていたのだろう。だからこそ、昔の石碑に残された文字は、あんなにも装飾的なのだ。素早くメモを取れさえすればいいというのでは、あんな複雑な字体になったはずがない。

近代以前には脈々と息づいていた呪術的な意味を、ものの名前に発見することで、我々は近代を超えることができるかもしれない。

 

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コメント

こんばんは~
とってもすてきな記事
いいですね~~~
私などは
なかなか
踏み込まないで
記号のあたりでおしまいになる一生
ですが・・粋に暮らしてみたいものですね~^^

私の好きな花
(大犬のふぐり)という小ちゃな水色の雑草ですが
あれは、古くは
天人唐草(てんにんからくさ)と言ったそうです。
私の母の家の前の土手を覆い尽くすほど咲き乱れていました。懐かしいです・・・


投稿: tokiko68 | 2011年6月28日 20:23

tokiko68 さん:

>(大犬のふぐり)という小ちゃな水色の雑草ですが
>あれは、古くは
>天人唐草(てんにんからくさ)と言ったそうです。

ほかにも、瑠璃唐草とか星の瞳とかも言うそうですよ。
なかなかのものですね。
星の瞳とは、よくぞ言ってくれたものです。

投稿: tak | 2011年6月29日 15:17

>瑠璃唐草とか星の瞳とかも

すてき!
すてき!

投稿: tokiko68 | 2011年7月 6日 02:26

tokiko68

瑠璃唐草 とか 星の瞳 は、素敵すぎて一般に広がらないのかもしれませんね ^^;)

投稿: tak | 2011年7月 6日 11:35

tak-shonaiさん
そうですね~
>瑠璃唐草 とか 星の瞳 は、素敵すぎて一般に広がらないのかもしれませんね ^^;)

あっはっはっは
森と泉にかこまれて♪
ブルーシャト~♪
このたぐいか・・・・・うぷ

投稿: tokiko68 | 2011年7月 8日 21:11

tokiko68 さん:

「星の瞳」 と 「オオイヌノフグリ」 の落差をブルーシャトーで埋めるとは、また素晴らしい (^o^)

投稿: tak | 2011年7月 9日 19:15

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