「自然エネルギー比率 20%」 を巡る冒険
ちょっと旧聞なのだが、G8 で菅首相が「2020年代の早い時期に自然エネルギー比率 20% を達成する」と発表して、産業界から猛反発を浴びた。いわく「数値に根拠が乏しい」「実現性が薄い」「思いつきでしかない」などなど。
私はほかの多くの日本人同様、菅首相には批判的だが、この「自然エネルギー比率 20% 」発言には、むしろ好感を抱いている。「よくぞ言ってくれた」というぐらいのものである。もしかして、菅さんでない別の人が言ったのなら、世の中でももっと冷静に受け止められていたかもしれない。
私がこの記事で言いたいのは、「数値に根拠がない」と批判する産業界の重鎮の多くは、自分自身の会社に戻れば、根拠もへったくれもない一見無理っぽい数値目標を現場に押しつけて、強く達成を求めているということである。自分がやっているのと同様なことを菅首相がやると、急に「不可能」と文句をいうところが、なかなかおもしろい。
重厚長大系産業の第一線で働く友人・知人たちも、口を揃えて「根拠たっぷりで楽に達成できそうな数値を目標に掲げるなんて、我々の仕事ではあり得ないね」と言っている。「初めは無理としか思えないような数値目標を設定して、それに向かって必死に努力するからこそ、これまでもいろいろな難題を解決してきたんだよ」と。
考えてみれば、昭和 40年代から実施された自動車の排ガス規制にしても、当初は「そんな無茶な数値は達成できるわけがない」とか 「そんなことにコストをかけたら、国際競争力がなくなって、自動車産業はつぶれる」とか、さんざんな言われ方をしたものだ。ところが、実際には見事に達成されて、自動車産業の国際競争力まで高まった。
省エネ技術や低コスト化の促進にしても、「これまでだって、雑巾をギリギリまで絞りきるようなことをやってきているんだから、これ以上の技術開発は困難」と、常に言われていながら、結果的には年々進歩してきている。要は決まった方向に向かってちゃんと努力する体制が作れるかどうかなのだ。
ところが自然エネルギー促進に関しては、重厚長大型産業ではなかなか「ちゃんと努力できる体制」を作りたくないみたいなのである。それを進展させると、世の中の仕組みが「重厚長大」でなくなってしまうから、自らの利益にならないと直感しているようなのだ。
とはいえ、世の中の趨勢がどうやらこれまでとは別のシステムを採用する方向に、徐々にではあるが向いているようなので、産業界としてもそれに適応せざるを得ない。何だかんだと文句を言いながらも、原子力で養われたハイテク・ノウハウを別の分野に適用していくといったようなことを模索し始めている。
世の中というのはこのようにして、「なるようになっていく」ものなのかもしれない。
| 固定リンク
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 東京スカイツリーから隅田川花火を見下ろすと(2023.05.22)
- 日本の「マスク神話」って、メチャクチャ強いのだね(2023.05.19)
- 岐阜市の「オリジナル SDG's ロゴ」を巡る冒険(2023.05.09)
- 「東浩紀さんにサブスクライブ」なんてしないよ(2023.05.02)
- 風速 10メートルの中で自転車をこぐ時の体感(2023.04.29)
コメント
まあ、それはいいんですけれど
スッカラカンの
◆ 自然エネルギー20%
◆ 太陽光パネル1000万戸
◆ 自然エネルギー庁新設
みんな、彼「個人の」「根拠のない」「言いっぱなし」「思いつき」でしょ?
もうすぐ辞めざるを得ないでしょうけれど、誰が、彼のコミットメントを実行するんでしょうか?
みんなが、無視するだけでしょう
すぐゴミ箱行きです
市民活動家の時は、体制側の施策になんでも反対していれば良かったが、自ら研究調査して政策を立案すると言う事は、まるっきり出来ない
まさにスッカラカンですね
投稿: alex99 | 2011年6月16日 00:32
alex さん:
「彼のコミットメント」を実行するんでなくてもいいんです。
誰の思いつきだろうが、全然構わないんです。
なるようになっていけば。
投稿: tak | 2011年6月16日 22:40
ハッキリ言って、そういう、tak shonaiさんのスタンス
キライですね
投稿: alex99 | 2011年6月17日 04:12
alex さん:
そう言われそうな気がしていました。
テキトーなスタンスで恐縮です ^^
投稿: tak | 2011年6月17日 07:45