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2011年6月 1日

「PC を諦めよう」というのだが

いろいろなしがらみで、還暦を過ぎたおばあさんに近いおばさんたちに PC の使い方の指導をしなければならないことがある。あるいは、指導とまでいかなくても、PC の操作法を訊ねられることがあるのだけれど、こう言っちゃなんだが、訊ねられても困るというケースがほとんどだ。そもそも、一体何を聞かれているのかもわからないのである。

「○○さんからデジカメを送ってもらったんだけど、どうしたら受け取れるの?」 と、電話で聞かれたことがある。

「宅急便か何かで?」
「違うのよ、メールで送ってもらったのよ」
「メールで、デジカメを送ってもらった? あぁ、わかった。デジカメじゃなくて、デジカメで撮った写真を送ってもらったんでしょ」
「そうそう、写真を送ってもらったの。ごめんなさいね、そんな区別もつかないおばさんなもんだから、あなたも大変でしょう?」

はいはい、正直言って、いや、正直言うまでもなく大変である。本当に大変である。

「それなら簡単ですよ。メールを開けばいいんです」
「メールを開いても、肝腎の写真が見あたらないのよ」
「じゃあ、先方が添付し忘れたんでしょうから、もう一度送り直してくれるよう、頼んでみてください」
「どうしたら頼めるの?」
「もらったメールに 『写真が貼付されてないから、もう一度送ってください』とか何とか、返信すればいいんです」
「どうすれば、返信できるの?」
「もらったメールをもう一度開いて、『返信』 ボタンを押せばいいんです」

(しばらくして)

「今、開いて見てるんだけど、どこにも『返信』ボタンってないのよね」
「えぇ? おかしいなあ、メーラーは何を使ってるんですか?」
「ごめんなさいね、メーラーって何?」
「普段、メールを出したり受け取ったりする時には、どんなアイコンをクリックしてるんですか?」
「えぇと、『いんたーねっと・えくすぷろーら』っていうやつ」

ここでこちらは腰砕けになる。よ~く聞いてみると、彼女はメールを開いたのではなく、相手のブログを開いてみただけだったりするのである。

「いいですか? もらったメールを開くのと、その人のブログをのぞいて見るのとは、全然違うんです。メールを開いてみてください」
「あの人のメールは、いつも開いて見てるのよ」
「だぁからぁ、それはメールじゃなくて、ブログというものなんですぅ! いいですか? メール、ホームページとかブログとかじゃなく、あのお手紙みたいなやつ、そのお手紙みたいなメールを開いてみてください」
「あぁ、わかった、パソコンじゃなくてケータイを見ればいいのね」
「…… はい …… 多分、そういうことだと思いますよ」

ここまできて、ものすごい徒労感に襲われる。

ちょっと前までは、「私もパソコンぐらい使いたいから、教えてちょうだいね」とオバサンたちに言われたら、「はい、いいですよ。パソコンなんて慣れれば簡単ですから、どんどん使いこなしてください」と応えていたが、近頃はそんなことは到底言えなくなった。

「ウィンドウズ・ビスタになってから、画面が変わっちゃって全然わからなくなっちゃたのよ」なんて言われて、何のことかとよく聞いてみると、Word 2007 になってからの UI の変化のことを言っているようなのである。この人、多分、Word 2003 を使っていた時だって、ほとんど分かっていなかったんだろう。

何度教えてあげても OS とアプリケーションの区別がつかず、ウェブページとメールがごっちゃになっていて、さらに PC 起動時に入力するパスワードとメールを受信するときのパスワードとは別物なのだということも理解できず、ということは、わからなくなった時に質問しようにも、自分は何がわかっていないのかすらわからない。

この段階に来て、私は彼女らに「もう、パソコンを使うなんて諦めましょ!」と言っている。「こう言っちゃ恐縮だけど、もう、パソコン使うなんて、無理ですよ。いつまで経っても理解できないことに無駄な時間を費やすよりは、もうパソコンなんてスッパリと諦めて、iPad っていういいのがありますから、これからはそれを使ってください」

「あいぱっどって何?」と聞かれたら、ポケットから iPhone を出してこう言う。「これのおっきなやつと思ってもらえばいいです。要するにケータイみたいなもんだから、簡単です。ケータイなら使えるでしょ」

「ケータイなら使えるかも。でも、それってドコモ?」
「いえ、ドコモじゃありません。ソフトバンク・モバイルです」
「あぁ、じゃ、ダメだ。私のケータイはドコモだから」

ああ、もう、本当に本当に疲れるのである。

 

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コメント

新作落語が一席できそうですね。でも聴く相手がオバサンだと笑いがとれない。

投稿: ハマッコー | 2011年6月 2日 00:14

あはは、確かによくあるやり取りですね。
うちの祖母も電子レンジの使い方を覚えてくれず、洗濯機がやっとでした。
母に携帯の使い方を覚えてもらうのも難しい…

しかし、身内にPCにとても詳しい人がいるのですが、彼の説明にはいつも閉口します。
全ての専門用語を「相手も知っているもの」という調子でいつも話すため、
この記事のおばさん寄りなうちの母などは目を白黒させるばかりです(^_^;)

機器のトラブル解決の腕だけは良いのですけどね。
takさんの仰る『理系の知識に文系の語り口』の組み合わせの素晴らしさに思いを馳せては、
ついため息をもらしてしまいます。
…はぁ…

投稿: 抹茶 | 2011年6月 2日 01:42

ハマッコー さん:

>新作落語が一席できそうですね。でも聴く相手がオバサンだと笑いがとれない。

浅草演芸場が、静まりかえります。きっと (^o^)

投稿: tak | 2011年6月 2日 08:47

抹茶 さん:

「理系の知識に文系の語り口」ならいいのですが、「オバサンの世界の IT 用語事典」というのが必要だとすら思えます。
(以下、オバサンの IT用語の本当の意味)

カチッ = クリック
カチカチッ = ダブルクリック
メール = インターネット
ホームページ = インターネット
ウィンドウズ = ソフトウェア
ワープロ = パソコン
機種 = バージョン
コピー = 印刷
こないだ作ったヤツ = ファイル
再起動 = 電源を抜く

これ以上の話になると、「?????」 になります。

投稿: tak | 2011年6月 2日 09:06

tak shonaiさん
【オバサンの IT用語】

大笑い

PCを終了するのに、電源コードを抜くという豪快なプレー?は、女性に多かった
さすがに、今は、少ないでしょうけれど

投稿: alex99 | 2011年6月 2日 10:18

alex さん:

>PCを終了するのに、電源コードを抜くという豪快なプレー?は、女性に多かった
>さすがに、今は、少ないでしょうけれど

いや、今でもフリーズするとやる人多いんです。
ところが最近はノート型が多いので、それでも落ちず、お父ちゃんに相談して、しまいにはバッテリー外すという荒技に出るんです (^o^)

投稿: tak | 2011年6月 2日 17:57

tak-shonaiさん
こんばんは~
笑えませ~~ん・・涙

ってゆうか
私は時々、
おばさんとおじさんにPCをおしえてあげる人に
なりたいと、こころの底から思うのよ。

私の思うことと、考えることが
あの方々と同じだからこそ
上手におしえてあげられると思うのよ。
きっと!

あああ
だれか
私に聞いてくださあ~~い。
おしえてあげるうう~おばあちゃん!おじいちゃん!
私がとっても上手ですよん。
なんて・・・・・


投稿: tokiko68 | 2011年7月19日 21:48

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