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2011年6月19日

「できない理由」 は、やりたくなければいくらでも見つかる

自然エネルギーによる発電を促進すべきだとの主張が力を得つつある一方で、それは無理だという指摘もかなりある。「できない理由」というのは、やりたくなければいくらでも見つかるものだ。

まず、東北の家の屋根に太陽光発電をつけても、冬は雪が積もるので役に立たないという指摘がある。雪下ろしにも苦労するだろうというのである。これについて、東北生まれの私としては、「屋根に雪が積もって大変な地域は限られるんですよ」と教えてあげたい。いくら東北でも、冬中屋根が雪で覆われる豪雪地帯ばかりではない。

「それでも、雪下ろしが必要なほど積もるところもあるだろう」という指摘に対しては、太陽光パネルをつければ、雪がすべり落ちてくれるので、雪下ろしが楽になる可能性があると答えたい。

さらに豪雪地帯ほど、ちょっとした晴れ間のうちに太陽光発電をしてバッテリーに蓄電し、その電気で積もる雪を解かすことを考えたいと、私なんか思う。たとえ冬の間は家庭用の電力を補えなくても、燃料代も人件費もいらない自動雪下ろし装置として使えれば、それはそれで大きなメリットがあるはずだ。(文末参照)

それから、日本の一戸建て家屋約2600万戸のうち、1000万戸は耐震工事をしなければ太陽光パネルは載せられないという、最近急に有名になったテーゼがある。だから、太陽光発電の飛躍的な普及は無理だというのである。

それを言い立てる人は、家というのは建てたら建てっぱなしで、人間は永遠に同じ家屋に住み続けるという、それこそ「あり得ない前提」でものを言っているように、私には聞こえる。実際には、家屋というのは改築したり補強したり、新築したりして住み続けるものなのである。

今現在、1000万戸の家屋が太陽光パネルを載せるのが無理だとしても、その数字は時間とともに減る。太陽光パネルが載らないような家ほど、おっつけ補強、改築、新築に迫られるのだから、それは当然だ。金がない家はどうするのかという問題だが、何らかの助成を得られなければ、いずれにしても居住自体が困難になって取り壊すしかなくなるだろう。

ちょっと余計なことかもしれないが、豪雪地帯の家は雪の重みに耐えるぐらいだから、太陽光パネル程度のものは乗っかるだろう。

次に日照時間の短い盆地や山間の集落はどうするのかという問題だが、盆地と山間しかない山梨県が、実は日照時間が日本で一番長いという統計がある。まさに谷間の集落で日照時間が極端に短いならば、それはそれで、ほかにもっと向いた方策があるだろう。何がなんでも太陽光発電でなければならないという理由はない。

コストの問題に関しては、今は確かに太陽光発電のコストは高い。だが、現在のコスト要因を固定的なものとして将来まで推し量るのは、それこそナンセンスである。新技術のコストは時間とともに下がるのが当然だ。逆に、化石燃料のコストは将来的には上昇する。それは確実だ。どっちを取るかである。

【追記】

太陽光パネルを雪下ろし不要の融雪装置として使うことに関しては、コメント欄に ぐう さんから貴重な情報をいただいた。既に研究開発が進んでいるようである。

(参照) http://www.sharp.co.jp/corporate/rd/21/pdf/86-11.pdf

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日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

太陽電池は電流を逆流させることで融雪ヒーターとしても使えるといった研究もなされているようです。
融雪機能付き太陽光発電システム↓
http://www.sharp.co.jp/corporate/rd/21/pdf/86-11.pdf
雪下ろしをしなくて良いということは売りの一つになるのではないでしょうか。

ちょっと前の記事「自然エネルギー比率20%」ですが、現状でも水力その他で10%程度らしいので、残りは10%だけです。夏の昼間の冷房ピークをならす程度の太陽電池数でも達成できるのではないでしょうか。
今後は間違いなく人口が減ってきますし、省エネも進んで電力自体が減れば、分母が少なくなるので、なおさら達成は容易になると思います。

少々がんばれば可能なレベルなのではないかと思うのですが、どうでしょう。

投稿: ぐう | 2011年6月20日 02:30

ぐう さん:

融雪機能付き太陽光発電システムの情報、ありがとうございます。

この程度のことを考える人がいないはずがないと思っていましたが、やっぱりいましたね。

投稿: tak | 2011年6月20日 10:54

  わたしは太陽光パネルを絶対やるなといっているのではありません。お金をかければ勿論いろんな装置も出来るでしょう。しかし、経済効率が悪い。と言っているのです。補助金を一体何兆円使う気なのでしょう。それだけのお金をかけるのならば、東西日本の周波数統一が先なのではないですか。何せ西日本は毎日雨で、太陽では発電できません。
  化石燃料の埋蔵量は私の子どものころから、一向に減りません。化石燃料が無くなるというのは、原子力推進派の方たちも言っていた神話です。勿論何時かは無くなるでしょう。100年後か、200年後か、500年後か。その時までに オ―ランチキチキも きっと実用化しているでしょう。
  今は太陽光発電に莫大なお金を使う時期ではないと、私は思います。
  山梨県の日照時間が一番長いという話は、たぶん晴天率か何かの間違いだろうと思いますが、日本の晴天率の表がどっかにあったと思います。探してみてください。日本晴れの日はそんなに多くないという事がよくわかります。
  私は地熱発電以外の自然エネルギーは日本向きでないと思っています。

投稿: basara | 2011年6月21日 04:32

日照時間ランキングというのもありました。1位山梨県、2位高知県という表ですね。年間2128時間というのを十分と感じるか、どうか。1位でも年間200日にもいかない。残りは化石燃料に頼るしかない。だから、化石燃料にたよる発電所も必要だ。
  co2が出ないというメリット以外考えられないと思うのですが。
  もし地球温暖化を防ぐために日本が犠牲になると考えるのなら、アメリカ軍に竹槍じゃないのかなあ。それに最新の火力発電所はCO2は殆んど出さないし。
  私は地球温暖化を別に問題だとは思っていないのですが、もし問題だとしても、もっと別の方法を考えましょう。オ―ランチオキトリウムとか。

投稿: basara | 2011年6月21日 04:57

basara さん:

>わたしは太陽光パネルを絶対やるなといっているのではありません。

私も、「太陽光パネルだけに注力しろ」と言っているわけではありません。

前からいろいろな方策で補い合う必要があると言っています。

>経済効率が悪い。と言っているのです。

現在のコスト効率を固定的に考えて将来まで語るのはナンセンスと、これも前から言っています。

>それだけのお金をかけるのならば、東西日本の周波数統一が先なのではないですか。

私も、東西の周波数統一は必要と考えています。

>何せ西日本は毎日雨で、太陽では発電できません。

それは明らかに不正確な表現でしょう。

>化石燃料の埋蔵量は私の子どものころから、一向に減りません。化石燃料が無くなるというのは、原子力推進派の方たちも言っていた神話です。

それは主にオイルピークの問題に還元されると思います。一部では、オイルピークは既に過ぎているという指摘もありますが、これも視点と利害関係でどうとでもいうことのできる問題のようです。

一つだけはっきりと言い切れるのは、化石燃料はある日突然枯渇するというものではありません。コスト的に徐々に合わなくなっていくものです。

その意味で、既にピークを過ぎていると言っている人もいるわけです。

>私は地熱発電以外の自然エネルギーは日本向きでないと思っています。

それもやはり、視点と利害関係でどうとでもいうことのできる問題のようです。

>1位でも年間200日にもいかない。残りは化石燃料に頼るしかない。だから、化石燃料にたよる発電所も必要だ。

私も、「化石燃料に頼る発電所が不必要」とは言っていません。何度も言いますが、多様なシステムで補い合うことが必要です。

>それに最新の火力発電所はCO2は殆んど出さないし。

それは、稼働停止中の火力発電所のことですか?

>オ―ランチオキトリウムとか。

オーランチオキトリウムが有望であることは、確かなことと思いますがが、それは未だ実験室段階の技術です。

それに比べて太陽光は少なくとも実用段階にあるのです。

で、誤解のないように言っておきますが、私はオーランチオキトリウムの活用を否定するわけではありません。有望だと感じています。

何度も何度も何度も言いますが、いろいろな技術で補い合うことが必要です。

何度も何度も何度も何度も言いますが、「これさえあれば大丈夫」 という技術を求めるコンセプトの方が危険です。

>年間2128時間というのを十分と感じるか、どうか。1位でも年間200日にもいかない。

時間を単純に日数に置き換えるというのは、短絡的でしょう。

投稿: tak | 2011年6月21日 11:27

経済効率ばっか考えていると、冗長性がなくなって、行動選択肢が貧しくなり、結局、最終的に良い結果をもたらさないように思いますが。
タイタニック効果(無謬神話、安全神話を生みだす。そして、沈む。)が働きますので、一点集中型の技術革新は危険です。
保険が効きません。つんのめったら、そこで御仕舞になります。

一応、メーカー管理系なんで、一言。

投稿: luckdragon2009 | 2011年6月22日 13:23

luckdragon2009 さん:

>経済効率ばっか考えていると、冗長性がなくなって、行動選択肢が貧しくなり、結局、最終的に良い結果をもたらさないように思いますが。

メーカー管理系の立場でそれを言えるというのは、ある種の健全さを感じます。

>タイタニック効果(無謬神話、安全神話を生みだす。そして、沈む。)が働きますので、一点集中型の技術革新は危険です。

まさに、福島原発はその効果が働いたようにみえるんですよね。私には。

投稿: tak | 2011年6月22日 19:30

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