マス・ヒステリーよりは、少しは冷静に始まっていること
一昨日の記事 "「自然エネルギー比率 20%」 を巡る冒険" に、先輩の alex さんからお小言をいただいてしまった。菅首相の所行はほとんど支持しないけれども、「自然エネルギー推進」だけは 「よくぞ言ってくれた」と思っていると書いたところ、次のようなコメントをくださったのである。
みんな、彼「個人の」「根拠のない」「言いっぱなし」「思いつき」でしょ?
もうすぐ辞めざるを得ないでしょうけれど、誰が、彼のコミットメントを実行するんでしょうか?
それで私は、「別に菅さんの言ったことでなくても、誰の思いつきだろうが、全然構わないんです。なるようになっていけば」というようなレスをしたところ、そういうスタンスがはっきり言って「キライ」と突き放されてしまったのである。う~ん、悲しいなあ。
私は前述の記事で、いわゆる「目標」なんていうのは、誰の思いつきであろうが関係なく 「根拠のない」「言いっぱなし」みたいなものなのだと書いたのである。いちいち根拠を求めてから達成目標を掲げるなんてことは、日常的にもあまりない。達成目標なんて、元々そんなものなのだ。
ところがこと原発に関して言えば、政治家でそんな「根拠のない」「言いっぱなし」のできる無鉄砲で無配慮な人は、菅さんぐらいのものなのである。ほかの政治家では、そんなぶちこわしなことは言えないし、普段は無茶苦茶な数字を部下に押しつけたがる産業界の重鎮たちも、今度ばかりは「根拠がない」と菅さんを批判している。
だから、「誰の思いつきだろうが全然構わない」とはいえ、やっぱりそこは、菅さんしかそんな思いつきだけの発言はできないのだ。その辺のことは、日経ビジネスオンラインに小田島隆さんが「卓袱台返して菅笠ひとり旅」というタイトルで書いておられる通りである。
いやはや、それにしても、私の記事のわずか 2日後に、こんなぶっちゃけたレトリックの記事が出るとは思わなかった。私も相当ぶっちゃけているつもりだが、小田島氏には完全に負けると脱帽したのである。
で、小田島氏はこの記事を次のように締めくくっている。
ニュークリアを分解して、ニューでクリアなエネルギーを作る。たしかに、お伽話じみている。このお伽話を実現するためには、石原さんの言う、「集団ヒステリー」(←地すべり的な世論の爆発)が必要なのかもしれない。
面白そうだ。
私は乗るつもりだ。
なかなか潔いことである。イタリアはさすがにその「集団ヒステリー」で無茶苦茶な一歩を踏み出してしまった。踏み出してしまったからには、何とかしなければならない。いくら根拠のないファンタジーでも、その気でやれば少しは前進するものなのだ。
ただ我が国では、卓袱台ひっくり返して無茶苦茶を言った菅さんは総理を辞める。かなりいろいろな策略を巡らせているようだが、フツーの常識では辞めざるを得ない。小泉さんは「郵政改革」のワン・イシューで大変な支持を得てしまったが、菅さんの場合は「脱原発」のワン・イシューぐらいでは、起死回生の支持率回復なんて不可能だろう。
私は菅さんの思いつきよりもむしろ、民間の風向きの方に期待している。民間企業というのは、なかなか大したものなのである。人間の心が原発から離れて自然エネルギーを求め始めているのを敏感に察知して、いろいろな研究開発をする気になり始めている。
その方が商売になる。商売にならなかったとしても、一時的にしろ株は上がる。ならば、やっちまうのだ。
というわけで、私は菅さんの思いつきだろうが、単なる「マス・ヒステリー」だろうが、発端は何でもいいのだけれど、要するに民間が新しい分野の研究開発を、恐る恐るではあるが、本格化し始めているのを好感していると、そういうわけなのである。
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コメント
え~~!
確かに言いました(笑)
「別に菅さんの言ったことでなくても、誰の思いつきだろうが、全然構わないんです。」
とおっしゃったが、他の誰かの発案なら別ですが、スッカラカンが見苦しくも余命を伸ばすための思いつき大乱発の中の一つなだけですから、
「自然エネルギー推進だけはよくぞ言ってくれたと思っている」
とは、言ってほしくなかった(笑)
同じ事を言うにしても、スッカラカンだけはいけません
それに、スッカラカンが手をつけたものは、せっかくtak shonaiさんが賛成しても、彼が辞任したら、すべてゴミ箱行きですよ
そういう点で、賛成するほどのことか?申し上げただけで、悪意はありません(笑)
しかし、昨日のこの法案推進のための集い?では、ソフトバンクの孫さんが、狂ったように大はしゃぎで、「首相の土俵際の粘りは素晴らしい!この法案を絶対に成立させて欲しい」なんて、トチ狂った事を言ってスッカラカンの両手を握って大感激してるんですからびっくりしました
あの男も、突然、アタマの方がソフトになってしまったんでしょうか?
法案自体は反対するほどのものでは無いのかも知れませんが、こんなにスッカラカンを持ち上げる男が近頃いるとはびっくりしました
投稿: alex99 | 2011年6月18日 00:46
日本の経営者は「やる前に出来ない理由を言うな。まずやってみろ」というのが大好きです。
投稿: ohotodo | 2011年6月18日 01:03
私は正直言って自然エネルギー信者は困ったものだと思っています。私は日本の海に洋上風車が林立するのは好みません。東北の家の屋根に太陽光発電をつけると雪おろしに苦労するでしょう。第一発電できません。日本には約2600万戸の家屋があるそうですが、内1000万戸は耐震工事をしなければ太陽光発電の装置は載らないそうです。雪深い東北や裏日本、日照時間の短い盆地や山間の集落、都会のビル陰の家屋、とても1000万戸は無理でしょう。いや、掛け声が重要なのだという方もいるかも知れません。しかし、今の効率の悪い太陽光発電に莫大な補助金をかけるなら、(今、取り付けた家庭でペイするように感じるのは補助金と、電力会社による高額な買い取りのおかげです。電力会社は、そのお金を全ての家庭に上乗せした料金で回収しているのです。)他にやる事があるでしょう。と私は思います。自然エネルギーで唯一私が同意出来るのは地熱発電所です。地下に地熱発電所を作るのは不可能でしょうか。
ハイブリッドガスタービンを私は推奨します。ロシアからパイプラインを引けば良いのです。勿論、中東の天然ガス、アメリカのシェールガスも購入すれば良い。CO2の排出量も少なく安上がりで発電効率も良いので、日本経済の為にはこれが一番です。CO2は0じゃないといけないという人は、太陽光発電装置の製造物流にどれだけCO2が排出されているか知らない人です。
太陽光発電にも唯一良いところもあります。雇用を生みます。私が、わずかばかりの役員報酬を頂いているところも太陽光発電装置の販売を一部門でしております。担当部長は張り切っております。私は権限もないですし、せっかくのビジネスチャンスに水を差すことも出来ず、悶々としております。
投稿: basara | 2011年6月18日 06:15
聞きかじりで恐縮ですが、電力が手元に届くのは、発電所からの供給の40%ぐらいで、他のエネルギーよりも効率が悪いそうです。
新エネルギーも重要ですが、この効率を上げる方法はないものだろうか。
投稿: 乙痴庵 | 2011年6月18日 06:45
乙痴庵 さん
>聞きかじりで恐縮ですが、電力が手元に届くのは、発電所からの供給の40%ぐらいで、他のエネルギーよりも効率が悪いそうです。
>新エネルギーも重要ですが、この効率を上げる方法はないものだろうか。
そこまで送電ロスは大きくないと思いますよ。大昔は送電ロスが30%くらいありましたが、現在は最大110万ボルトで送電しますので、ロスは7%~5%程度でしょう。
投稿: ハマッコー | 2011年6月18日 14:50
EPR 投入したエネルギーの何倍のエネルギーが生み出せるかという数値です。
中東の油田で60くらい、米国の油田では自噴しないので圧力を加えたりするのでを3だそうです。
すでに今の太陽光発電のEPRは最低でも10以上で最大では30ぐらいです。
価格が高いのは手間がかかっている、人件費が高いということです。見方を変えれば雇用に
貢献しているといえます。
ちなみに米国のとうもろこしによるバイオ燃料のEPRは1.3で2にも届きません。
ブラジルのサトウキビ由来のバイオ燃料は8~9のEPRです。
天然ガスのEPRは不明ですが、液化などにエネルギーが要るので石油の半分あればよい方
でしょう。シェールガスは生産にエネルギーをつかうので天然ガス以下です。厳しい見方をする人
は石油をガスに換えているだけだと言っています。
いずれ化石燃料のEPRは2を切ることになるでしょう。
どうであれ将来は自然エネルギーに頼らざるをえません。
発電に費やした化石燃料に対する消費出来る電気のエネルギー効率が40%なのだと思います。
発電につかわれたエネルギーの多くは温排水として捨てられています。
廃温水も各家庭、事業所に給温水できればエネルギーの無駄がなくなります。
給温水をやるには消費地と発電所が近くになければいけません。
当面は小型の発電所を分散配置し廃温水を無駄にしないでエネルギー効率を上げることです。
そのためには発送電分離は絶対に必要です。
投稿: ohotodo | 2011年6月18日 16:29
太陽光パネルの寿命は20年で、また買い換えです
何回も買い換えることの出来る家庭がどれだけあるか?
また巨大地震が来たら日本の家屋だとパネルがほとんど落下して環境に優しいはずの太陽光で死者が大量にでるのでは?
地熱発電に於いては、温泉との競合が問題だそうです
それに温泉が出なくなると言う問題もある
また、日本の地熱水は硫黄分が多くて処理が難しい
風力は騒音と低周波のため大きな砂漠でないと難しい
日本の風では発電の効率が悪い
色々あります(笑)
投稿: alex99 | 2011年6月18日 17:42
太陽光パネルの寿命は20年ではありません。
25年経過した中古の太陽電池モジュールが、新品時の80%以上の性能を保有しているという結果が出ており、リユースされております。なにより設置後2年以内に発電した電気量で太陽電池システムが作れてしまうのです。3年目以降は純粋にエネルギーを0から生み出すのです。
10年先20年先の太陽光発電のコストが今と同じであるはずはないと思います。
余剰電力買取価格は普及するにつれ下がるであろう太陽光発電を先行して購入した人に損をさせないように決められたもので今年は太陽光発電が安くなった分だけ下げられ48円から42円になっています。
今後、化石燃料の価格は必ずあがります。日本はお金をだして、それを海外から購入するより、国内で雇用を生み出す再生可能エネルギーを普及させる方が国益にかないます。化石燃料の価格が上がれば火力発電のコストも上昇すると考えるべきでしょう。
地熱は高温岩体発電が有望です。出来ない理由を並びたてるより実現する方法を考えるべきではないでしょうか。
投稿: ohotodo | 2011年6月18日 19:51
太陽光パネルの寿命については、設置業者自身がそういうことをネットで書いていましたよ
米国の風力発電に長年携わっていた技術者が、風力発電が有望な自然エネルギーだというのはウソだと書いていた
>設置後2年以内に発電した電気量で太陽電池システムが作れてしまうのです。3年目以降は純粋にエネルギーを0から生み出すのです
そんな素晴らしい話なら、なぜ、太陽熱パネル全盛とならないんですか?
私がネットで見たある試算だと、なかなかペイするところまで行かないということでした
電力会社が買い取ると言うが、本当は面倒だから電力を廃棄しているという話もある
補助金をもらってはじめて何とかペイしても、その補助金は結局、国民の負担でしょう?
原発のコストが実は高かったという話と同じで、自然エネルギーのコストも、グラスルーツから積算すれば、高いはずです
実現する方法を考えようというのと、今の時点で、実現可能性が高いかどうかと言う事は別です
もちろん、将来は技術的なブレイクスルーが期待されるし、コストも下がり、効率も上がるでしょうが、現状は非常に厳しいはずです
投稿: alex99 | 2011年6月19日 00:53
alex さん、ohotodo さん、basara さん、乙痴庵 さん、ハマッコー さん:
えぇと、忙しくてレスをさぼっている間に、コメント欄が一人歩きしているようで、恐縮です。
この問題はどの視点から見るかでかなり結論がちがってくるようです。
今はいろいろな論議をして、実現可能性を探るべきときでしょう。ですから、明らかな誤解以外はいたずらに否定せずにいきたいと思っています。
大雑把にいって、発送電分離という方向性は、メリットの方が大きいと思います。
それから明らかな誤解の一つに、「太陽光パネルの寿命は 20年」 というのがあります。新しいものはまだまだ壊れていないので、何年で壊れるのかわからないというのが本当のところのようです。
ohotodo さんが書かれているように、25年以上経っても十分稼働しているパネルがありますので、新型はさらに長持ちすると思われます。
また、太陽光パネルが地震で落ちるので危険という指摘ですが、今回の震災でも落ちてきた太陽光パネルで怪我したとか死んだとかいうニュースを、私は知りません。
(私が知らないだけかもしれませんが)
もしかしたら、瓦の落ちるのを防いだかもしれません。
日本の家屋の多くが耐震補強をしなければ太陽光パネルを載せられないという指摘に対しては、「現状ではそうかもしれないね」 というだけのことです。
載せられないのなら、補強すればいいだけの話です。
改築や新築という至極当然の話を無視した議論の方がよっぽどナンセンスと言うしかありません。
(古い家が何十年経ってもそのままというはずがないではありませんか)
コスト要因については、ベースが時代と共に変わりますので、今現在の話をもとにして将来を語るのはナンセンスです。
ただ、化石燃料のコストが今後上がるということだけは確かなことです。
投稿: tak | 2011年6月19日 21:56
私の住んでいる西日本はもう数日前から全域で雨です。太陽光発電は全域で稼働していません。その間は別方式で発電しなければいけません。私は結局二重投資をしなければいけない発電方式に大きな投資をする事に疑問を感じるのです。雨が殆んど降らない地域では大変有効な方式でも、日本では非効率な方式だと思うのです。同じ金額を投資するのなら、もっと良い方式があると思います。しばらくは化石燃料に頼り、将来的に、技術のブレークスル―があって、雨の日も雪の日も発電できるようになってからでも遅くありません。数兆円の税金を使うのですから、もっと議論が必要ではありませんか。
太陽光発電を設置する方が、全て自己資金で行い、自宅のみで電力を使用するというのならば、私は全く異議はありません。
耐震工事はそりゃあ、いすれはしなければいけませんよね。
投稿: basara | 2011年6月20日 04:19
basara さん:
>私の住んでいる西日本はもう数日前から全域で雨です。太陽光発電は全域で稼働していません。
時々雨が降ってくれるので、パネル表面についたゴミが流されて、発電効率が落ちないで済むようです。
太陽光パネルを設置した家で、パネル表面の掃除をしたという話を聞いたことがありませんが、それは雨のおかげのようです。
「雨は自動メンテ・システム」 と考えればいいんじゃないでしょうか。
(メンテ中は、原発でも止めなきゃいけませんし)
>私は結局二重投資をしなければいけない発電方式に大きな投資をする事に疑問を感じるのです。
なんにしろ、「これさえあれば十分!」 という技術はないんじゃないでしょうか。
いずれにしても、いろいろなシステムで補い合うということになるんだと思いますよ。
>しばらくは化石燃料に頼り、将来的に、技術のブレークスル―があって、雨の日も雪の日も発電できるようになってからでも遅くありません。数兆円の税金を使うのですから、もっと議論が必要ではありませんか。
技術のブレイクスルーを期待するにあたっては、研究室だけで細々とやるよりも、ある程度実用に供しつつ、いろいろなフィードバックを得るとともに、スケールメリットを徐々に拡大しながら進めなければならないはずですので、あえてブレーキをかける必要はないのではないでしょうか。
>同じ金額を投資するのなら、もっと良い方式があると思います。
「もっと良い方式」 が客観的かつ具体的に示されれば、それに乗り換える方がいいのは当然ですが。
>太陽光発電を設置する方が、全て自己資金で行い、自宅のみで電力を使用するというのならば、私は全く異議はありません。
上述の意味合いから、現在使われている補助金支出、電力買取りは、巡り巡って研究開発を促進するものと考えることができます。
補助金が需要を促進し、その需要増加がさらなる研究開発をエンカレッジしますので、長い目で見れば利益は還元されると思いますよ。
投稿: tak | 2011年6月20日 10:49