「見れることができます」 とか 「可能できます」 とか
最近ラジオを聞いていてすごく気になるのが、「聞けることができる」とか「見れることができる」とか「書けることができる」とか、要するに可能を二重に表現する人がかなり多いことだ。
初めは単純な言い間違いで、当人も言ってしまってから「やば! 公共の電波を使って変な言い方しちまったけど、まあ、ここはトボけておこう」ぐらいに思っているに違いないと推察していたが、どうやら、そうでもないようなのだ。
というのは、同じような言い間違いをする人がかなり多いし、つい勢いで言ってしまったというよりは、ゆっくり言葉を選びながらこんな言い方をしてしまっているように聞こえることが、かなり頻繁にあるのだ。
野球解説の人なんか、結構平気で「腰の回転やタメを意識して、初めて打てることができるんです」なんて言う。ラジオだからわからないが、かなりのドヤ顔ってやつになってしまってるんじゃないかという雰囲気なのである。当人、案外ものすごく論理的な言い方をしているつもりなのかもしれない。
いや、野球解説だけでなく、いわゆる「なんとか評論家」とかいう類の人たちも、かなりこの手の妙な言い回しがお好きなようなのだ。もしかしたら、この言い方を連発する人って、日本語としておかしいんだということに気付いていないのかもしれない。それを思うとちょっとコワイ。
というわけで、つい思いあまって今月 2日に、そんなような tweet をした(参照)ところ、f_memo さんが、次のようなレスをくださった。(参照)
「可能できます」なんて表現も検索するとたくさん出てくるので、言ってる人達は違和感はないんじゃないでしょうか。
あまりのことに、にわかには信じがたかったので、試しにググって見ると、なんとこれが本当のお話で、こんなにたくさん ヒットしてしまうのである。もっとも、検索結果のトップにランクされているのは、faint memory さんという方がブログで「可能できます」という妙な表現に疑問を呈しておられる記事 (参照)で、次のような文例が挙げられている。
- 運が良ければ入手可能できます。
- 発行雑誌の全文検索が可能できます。
- 地デジチューナーに接続可能できるんですか?
- 様々な用途に利用可能できる手ごろなサイズ。etc……
faint memory さんは、"もしかして「可能できる」を「できる」の強調表現として意図して使っていたりするのでしょうか" とおっしゃっているが、本当に意図して使っているのだとしたら、読んだり聞いたりする方はちょっと悲しくなってしまうのだがなあ。
それはそれとして、もしかして、f_memo さん は、faint memory さん と同一人物? 違っていたらごめんなさい。
【平成 23年 6月 13日 追記】
Twitter 上での f_memo さんの tweet(参照)により、めでたく同一人物と判明した。ありがとうございました。
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コメント
ちょっと話題が外れますが
NHKのアナウンサーが(それも複数)「見せて」という所を「見して」という(それも毎回)のを聞いて、激しい違和感と反感(笑)を感じています
代表的なのが、最近まで夕方7時のニュースを読んでいた男性のアナウンサーですけれど
NHKも落ちたもんだと思ってますが、NHK内部でそういう注意をする人間もいないのかな~?
ひょっとして、私が間違っているのかな~?
投稿: alex99 | 2011年6月12日 00:34
私も、ちょっと話題が外れますが
昔、alexさんの地元のサンテレビのアナウンサーが、阪神戦の実況中継でしきりに
“さあ、ここで汚名挽回しなければなりません”
と言ってました。(このアナウンサーはこのフレーズが気に入ってたようで、一試合に10回くらい使ってました)
その度に、汚名挽回してどうするんだと、突っ込みを入れてました。私が疑問に思ったのは、局内に間違いを指摘する人はいないのだろうかということです。もしかしたら、地位の高いアナでそれを指摘できる人がいなかったのかもしれませんが。
アナウンサー(達)⇒言葉のプロ集団という私の思い込みがいけないのかも。
“汚名挽回”は今でも時々聞かれますね。(サンテレビに限らず)
投稿: ハマッコー | 2011年6月12日 02:27
alex さん:
>NHKのアナウンサーが(それも複数)「見せて」という所を「見して」という(それも毎回)のを聞いて、激しい違和感と反感(笑)を感じています
正しくは 「見せて」 に決まってますが、口語では 「見して」 もよく聞きますね。
関西方面でも聞かれますが、東京下町でも 「どれ、見してみな」 なんて言います。江戸落語では市民権を得ているんじゃないかとすら思えます。
これは以下の二つの要因の合わせ技かと思っています。
1.最初の 「見」 がイ列なので、それに引きずられて、「せ」 が無声音の 「し」 に音便化する。
2."「名詞」 プラス 「サ行変格活用動詞」" の用法に引きずられている。
(「準備して」 とか、もっとビミョーには 「お花見して」 とか)
ちなみに、庄内弁では 「見せる」 を 「見しる」 (「し」 は有声音) と発音します。「見せて」 は 「見しで」 (やはり有声音) です。
これは単に、訛りというものです。九州辺りの「見しぇて」 となる訛りに近いのではないかと思っています。言ってる当人は 「見せて」 と言ってるつもりのところが共通しています (^o^)
投稿: tak | 2011年6月12日 07:34
ハマッコー さん:
「汚名挽回」 については、『続弾! 問題な日本語』(大修館書店) では、「挽回」 という言葉には 「取り戻す」 という意味の他に 「巻き返す」 という意味もあるので、「頽勢を挽回する」 という用法がある以上、「汚名挽回」 も間違いではないとしています。
ビミョーですが。
投稿: tak | 2011年6月12日 07:39
tak shonaiさん
>口語では 「見して」 もよく聞きますね。
ここんとこ、私は全く納得していません
口語と言うより、方言に近くありませんか?
品格的に、正式・公式な場所で使うと、みっともない言葉ですよ
使っている人の品格・教養を疑います
一般に使われることもある?
それで、口語に昇格ですか?
少なくとも、NHKのアナウンサーがニュースで使う言葉ではないと私は確信していると言う事をお伝えしておきます(笑)
投稿: alex99 | 2011年6月12日 13:15
alex さん:
>口語と言うより、方言に近くありませんか?
私は方言とは理解していません。
それは関東、関西のどちらでも聞かれるからです。
あくまでも音便に近いものと思います。
>品格的に、正式・公式な場所で使うと、みっともない言葉ですよ
それはその通りであります。下世話な音便です。
>少なくとも、NHKのアナウンサーがニュースで使う言葉ではない
まったくもって、その通りであります。
投稿: tak | 2011年6月12日 21:08
ハマッコーさん
タイガーズの場合、挽回しなければならない汚名には事欠かないということではないでしょうか。
わはは。
投稿: きっしー | 2011年6月13日 09:11
きっしー さん:
>タイガーズの場合、挽回しなければならない汚名には事欠かないということではないでしょうか。
なるほど、汚名がなければ、そんなことを言う必然性がないと。
投稿: tak | 2011年6月13日 10:18
広島出身者の感覚ですが。
「見して」は言いますね。
でも「させて」が「さして」になる例や、「着せて」が「着して」になることはあっても「決めて」は「決みて」にならないあたり、直前のイ列に引きずられる説はちょっと違うんじゃないかと思いました。
理由は分からないけれど、「せて」が特に言いにくい気はします。
投稿: タニー | 2011年6月13日 11:29
タニー さん:
>でも「させて」が「さして」になる例や、「着せて」が「着して」になることはあっても「決めて」は「決みて」にならないあたり、直前のイ列に引きずられる説はちょっと違うんじゃないかと思いました。
失礼、言葉足らずでした。
直前のイ列に引きずられた 「し」 がさらに無声音化しています。
【mishite】 ではなく 【mishte】 となりますね。
無声音化を前提とした音便とでもいいますか。
該当の私のコメントを修正しておきました。
(ご指摘ありがとうございます)
「決めて」 は 「み」 が無声音にならないので、そのままですね。
投稿: tak | 2011年6月13日 14:37
きっしーさん
>タイガーズの場合、挽回しなければならない汚名には事欠かないということではないでしょうか。
わはは。
“ああ、悲運のタイガース”といわれてた時代に、サンテレビを見てたもので、“さあ、ここでタイガース汚名挽回ですね”というフレーズを何度聞いたことか。
投稿: ハマッコー | 2011年6月14日 18:55
ハマッコー さん:
大変な時代があったんですね ^^;
投稿: tak | 2011年6月14日 20:40