今年の夏の歩調がやたら速く感じられるのは
私は常々、七夕を新暦で祝うのは本当に興醒めだと言っている。「梅雨も明けないうちの七夕に、何の意味があるのか」というのである。本来の七夕の季節感については、5年前の「今年は七夕が 2度ある」という記事に次のように書いてある。(この年は 「閏 7月」 があったので、旧暦の 7月 7日が本当に 2度あった)
暑い盛りを過ぎて、日の沈むのが早くなり、夜がだんだんと長くなる。黄昏時を過ぎると、少しは涼しい風が吹き始めて、見上げると、水蒸気に霞んだ夏の夜空とは異なり、星々が清かに輝いている。本来の七夕は、そんな季節感の行事である。
そして、旧暦の 7日というのは、どの月でも上弦の月となるのだが、夏が過ぎたばかりのすっきりとした上弦の月は、舟の形をして、天の川を横切り、あたかも、ベガとアルタイルの間を結ぶように見える。これが、七夕のインスピレーションの根幹である。
今年の梅雨明けは驚異的に早かったが、それでも関東甲信越・北陸・北九州のそれは 7月 9日で、関西・東海でも 7月 8日だった。やはり、新暦の七夕はかなり無理な話なのである。そして、東北などで祝う「月遅れの七夕」(8月 7日に祝う)も、例年ならば少し早すぎる。旧暦 7月 7日は、新暦では 8月中旬頃になることが多いからである。
ところが今年はめずらしく、月遅れの七夕が旧暦の正しい七夕よりもたった 1日とはいえ遅くなってしまうのだ。本来の七夕 (旧暦 7月 7日) は、今年は新暦では 8月 6日なのである。
新暦と旧暦の差は 1ヶ月以上開いていることが多いのだが、今年のように旧暦が新暦にかなり追いついてきて、1ヶ月を切ることもある。そして、追いつきすぎるとおかしなことになるので、時々 「閏月」 を入れて調整する。それで来年の旧暦 3月は 2回あるということになる。それまでは、旧暦はさらに少しずつ新暦に追いついてくることになる。
こうした事情を考えると、今年の梅雨入りと梅雨明けがやたら早かったのも納得がいく。新暦で考えるとずいぶん早かったのだが、旧暦で考えれば、そんなに驚異的に早かったというわけじゃない。関東で言えば、梅雨入りは新暦 5月 27日(旧暦 4月 25日)、梅雨明けは 新暦 7月 9日(旧暦 6月 9日)で、旧暦の 5月はまるまる梅雨だったことになる。
梅雨は昔「五月雨」といったぐらいのもので、旧暦 5月頃の長雨のことである。ということは、今年の梅雨は入るのも明けるのも、決してそれほど早かったわけじゃない。旧暦で考えれば、「フツーのタイミング」だったということだ。
アジアの東端に位置する日本の季節感は、旧暦で考える方が実感的にしっくりとくることが多い。そして今年の夏の歩調の速さも、旧暦で考えれば納得がいく。今年の季節感が新暦で考えるとずいぶん前倒しで推移しているように感じられるのは、旧暦がずいぶん追いついてきているにすぎないとみることができるのである。
気象庁の 3ヶ月予報によると、今年の夏は平年並以上に「暑い夏」になるのだそうだ。そして「暑い夏」とはいえ、「去年ほどの猛暑にはならない」とのことだった。ところが実感としては、「もう十分、去年の夏ぐらい暑いんですけど」という感じになっている。どうしてくれるんだ。
しかしそれも、旧暦で考えれば納得がいく。今年の夏は、もう既にピークに達しているのだ。そして 8月の声をきけば、お盆休みの前に少しはしのぎやすくなっているかもしれない。何しろ今年は、新暦 8月 7日(月遅れの七夕)の時点で、歳時記では秋の季語とされている「七夕」(本当の七夕=旧暦 7月 7日)を過ぎてしまっているのだ。
実際には、何しろ急速に 「温暖化」が進んでいるので、お盆休みの前にしのぎやすくなるなんていうのは、甘すぎる期待かもしれない。しかし、少なくとも今年の夏の暑さはこれからピークになるのではなく、既にピークなのだと考えていいだろうと、私としては思っている。
というわけで、今日もエアコンのスイッチを入れずに、なんのことなく耐えきったのである。
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