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2011年8月 7日

世代別ハモり感覚

一昨日の「SMAP がハモらないのは その2」に、テレビ画像論の発端を提供してくれた まこりんさんから、またまた新鮮なご指摘をいただいた。日本人で自然にハモれるのは、60~70年代に青春を送った人限定なんじゃないかというのである。ちょっと引用する。

多分、自然にハモれる日本人ってのは、60~70年代に青春を送った人限定なんじゃないかな―って思います。洋楽が自然と入ってくる環境で、かつ、友達が集まると自然と誰かがギター持ってきてっていう、その二つが重なるのってその世代限定な感じですし。たしかにあの時代の邦楽フォークってハモり、そこそこ多いですしね。

確かにそんなようなことがあるかもしれない。私は若い人間が 3人集まればギターを弾けるヤツが少なくとも 1人はいて、そいつの伴奏でちょっとハモってみるなんていうのは、日常茶飯事なのだと思っていたが、今どきの若い連中にはギターを弾けるやつが案外少ないのである。最近それを知って、心底驚いた。

あるいは、エレキ・ギターを持っていてもまともにコードを押さえられるヤツが少ない。C - Am - F - G7 というコード進行を G に移調したら G - Em - C - D7 になるという当たり前すぎることでも、わかってるやつなんかさらに少ない。そんなだから、自然のハモり感覚が体に入ってるやつとなると、絶望的に少ない。

だから、何人かが一緒に歌っても、ユニゾン以外の選択肢がない。あるいは「アカペラ・コーラスやります」なんていうから期待して聞いてみると、リードボーカル以外はベース・ラインと「口(クチ)パーカッション」だけなんていうのが多くて、こけそうになる。あんなのは、ちっとも「コーラス」じゃない。

「ここは最高のハモりどころじゃないか」というようなサビを、済ました顔でユニゾンされちゃうと、私なんか気持ち悪くてイライラしてしまう。「こいつら、絶対損してる!」と思う。ところが、まこりんさんは、次のようにおっしゃる。

私の世代なんかは完全に90年代のカラオケボックス全盛で、いわゆる個人個人が好きな曲勝手に歌うっていうノリで。人が歌っている時はカタログ見て曲選ぶ時間ですから、ハモる暇なんてないわけですよ。つか、唐突にハモり入れたりする人はちょっとうざい人?扱いだったりしますし。

ふむふむ、これもわかる気がする。盛り上げるためにハモってあげると、メインメロディ歌ってるやつがハモりにつられて壊れてしまって、「じゃまするな」なんて怒り出したりする。そんなのはオッサンだけかと思っていたが、実は若いやつほどよく壊れる。ハモりが「じゃま」になっちゃうという、信じられない世界が現出している。

確かに、東アジアにおいては、60~70年代青春派以外には、「ハモり」なんて別の世界のお話なのかもしれない。ものすごく哀しいことだが。

と思っていたら、平成の清少納言、朱鷺子さんから次のようなコメントをいただいた。

実は、私も皆さんと一緒にお炊事などする機会があった時、
じゃあ、歌うたいながらしましょう~なんて言って、
「夏は来ぬ」 とか、ハモッていた時代がありましたよ。

う、これ、すごい! 60~70年代青春派の "sing out" スタイルのハモりとはまったく異質の世界。これはもう、昭和のお嬢様の世界である。私なんか、不覚にも萌えちゃうのである。

"Sing out" スタイル(← このリンク先は必見! 私は何度見ても泣ける) では、ハモりはとても様式的に決まり切っていて、つまりパターン化されていて、体感として慣れさえすれば楽譜なんて読めなくても自然につけられる。さらに慣れると、即興的バリエーションも加えながら、どんどん進化して、陶酔のリズムの世界になる。

ところが『夏は来ぬ』(とか『椰子の実』とか『冬景色』とか『夏の思い出』とか『遙かな友に』とか) になると、「主旋律」と「低音部」とかがきちんと作り込まれていて、その通りに歌うと、えも言われぬ美しいハーモニーとして響き合う。

どっちかといえば、楽譜で憶えて合わせましょうという世界だ。"Sing out" とはスタイルが違う。使う筋肉が違う。賛美歌とゴスペルぐらい違う。

音楽は奥が深い。朱鷺子さんと『夏は来ぬ』をハモってみたい。

 

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コメント

きゃ~
もえ~~

投稿: tokiko68 | 2011年8月 7日 18:10

tokiko68 さん:

萌え萌えです (^o^)

投稿: tak | 2011年8月 7日 22:50

中学時代は、音楽の時間には必ずハモって歌わされた。
相手の声を聞きながらハモって歌うって快感だったと、記憶している。ユニゾンじゃ歌ってても楽しくないのに。

テストで「椰子の実」を女子と二人でハモって、先生に“うまい”って褒められたのを思い出した。そのときは歌ってて“いい感じ”ってハモりに酔ってた。(気が遠くなるほど昔の体験!)

最近の音楽の時間ってハモらないんでしょうかね。

投稿: ハマッコー | 2011年8月 8日 00:56

ハマッコー さん:

>相手の声を聞きながらハモって歌うって快感だったと、記憶している。ユニゾンじゃ歌ってても楽しくないのに。

少なくとも、西洋音階の曲を複数で歌うからには、「ユニゾンじゃ歌ってても楽しくない」 って感覚はありますよね。

車に乗って、ずっとセカンド・ギアだけで走ってるみたいな感じ。

>最近の音楽の時間ってハモらないんでしょうかね。

そんなことはないんでしょうけど、最近の連中はハモりの心地よさを知らないんじゃないかという気はしますね。

投稿: tak | 2011年8月 8日 02:17

中学時代、「大地讃頌」なんて、歌いながら涙を流して…、る奴もいました。

 歌詞全体を眺めていると、正直「なにコイツ。上から目線で…」と思ってました。
 クライマックスの、「頌えよ 誉めよ 頌えよ 土を」という部分で、歌っていた当時も、聞くだけになった現在も、必ずグッとくる状態です。

 ハモリというか、うねりのような歌声の中にいて、それを構成しているという陶酔感。
 これからも、カラオケでこっそりハモッてみます。

投稿: 乙痴庵 | 2011年8月 8日 19:05

乙痴庵 さん:

「大地讃頌」って、かなりヘビーですね ^^;)

作詞者はウチの高校の校歌を作詞した人であります。

>ハモリというか、うねりのような歌声の中にいて、それを構成しているという陶酔感。

それはまさに「陶酔感」でありますね。

投稿: tak | 2011年8月 8日 21:39

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