ユニバーサル・デザインを巡る冒険
お寺さんにもいろいろあって、お宝的仏像などを一杯所蔵しているところがある。あるいはそれほどのお宝ではないが、とにかく仏像が山ほどあるお寺さんもある。中には 「五百羅漢像」 などといって、500体もの羅漢さんが押し合いへし合いするように並んでいるのを見せてくれるところもある。
そしてそれを案内・説明してくれるお坊さんが、「こちらには 500もの羅漢さんが並んでいらっしゃいますが、驚くべきことに、同じお顔は一つもありません」 なんて言ったりする。
こうした説明を聞くたびに、へそ曲がりの私は、「そりゃそうだ。同じ顔を作る方が難しいだろう」 と思ってしまうのである。一つ一つ手作りなのだもの。全部違っていて当然だ。
ところが機械で大量生産する時代になると、同じモノをたくさん作る方がずっと楽になる。例えば電車の吊り革である。昔は吊り革の長さは一定だった。そしていつの頃からか、ドア付近と通路の上の吊り革だけがちょっと短めになって、長さが 2種類になった。
ドア付近と通路は人の動きが多いので、吊り革が頭にぶつからないように配慮しているのだろう。私なんか 6尺近い身長だから、普通の長さの吊り革だと顔面にガシガシぶつかる。それに吊り革なんか低すぎるから、普段は吊り革をぶら下げているバーにつかまっている。
しかし中には、普通の長さの吊り革にも手の届かない人がいる。子供や老人には珍しいことじゃない。日本は文明国には珍しく、年寄りに席を譲るということが当たり前じゃない国だから、背の低いお年寄りはドアのそばの縦のバーしか捕まるところがない。
しかし最近になってようやく、吊り革の長さのバリエーションが増えているようなのだ。田園都市線などでは、一定間隔で普通より長い吊り革がぶら下がっているという。子供や老人でも捕まりやすいようにという 「ユニバーサル・デザイン」 らしい。
一定スペックの製品を大量に作ることによる効率化という発想から、ようやく進化しつつあるようなのだ。
しかし、よく考えると、お年寄りが立っているのを見かけたら、ほぼ自動的に立って席を譲るような習慣が行き渡れば、こんなことは必要なくなるかもしれない。それこそ、ソフトウェアのユニバーサル・デザインなんだろうけどね。
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コメント
横浜市営地下鉄では、若者が年寄りに席を譲るという光景はまず見かけません。
なぜかというと、全席優先席になっているからですね。
健常者は席が空いててもそもそも席に座らないのです。
したがって年寄り用のつり革も必要ないというわけです。
もっとも進んだかたちだと思います。
投稿: ハマッコー | 2011年9月15日 16:08
わたしの田舎の駅は最近改札が2階になってしまって「年寄りや障碍者が困る」と母が怒っていました。エレベーターはありますけれど、あれは電気がなければ動かないものですしね。ユニバーサルデザインの実現にはやはり電気も必要なんですね。
投稿: たんご屋 | 2011年9月16日 10:49
たんご屋さんのコメントで思い出しましたが、
自県の中央駅では新幹線ホーム完成と同時に在来線側のエスカレーターが撤去されてしまいました。
階段裏のエレベーターを使えという事なんでしょうが、どうにも表示が控え目で、年輩の観光客の方々が難儀しているようなのをよく見かけるようになりました。
肝心の新幹線側エスカレーターはなんと、長雨で浸水してしまって(九州なのに防水を考えないなんてどうなっているのでしょう)二、三ヶ月は使用不可の状態でした。
地元民ですら不便に感じたのですから、他県の方達はさぞかし呆れるだろうなあと溜め息が出ます。
身内にも他人にも嬉しい観光都市はまだまだ遠い!
投稿: 抹茶 | 2011年9月16日 15:40
ハマッコー さん:
>なぜかというと、全席優先席になっているからですね。
いいですね。元々、電車の座席ってそういうもんだと思うんですよね。
投稿: tak | 2011年9月17日 13:36
たんご屋 さん:
>わたしの田舎の駅は最近改札が2階になってしまって「年寄りや障碍者が困る」と母が怒っていました。エレベーターはありますけれど、あれは電気がなければ動かないものですしね。ユニバーサルデザインの実現にはやはり電気も必要なんですね。
鉄道の駅というのは、「線路を越える」 という条件がつきまとうので、ある程度以上の本数があると、どうしても階段が必要になって、「どうせ階段登るなら」 ってなことで、改札も階段の上に作ってしまうんでしょうね。
もっと田舎だったら、本数も少ないので、線路を直にわたってホームを移動しちゃいますけど、鉄道会社としては、事故があったときのことを考えて、階段を昇って移動させたがるんでしょうね。
投稿: tak | 2011年9月17日 13:39
抹茶 さん:
なんとまあ、それはがっかりですね。
世の中には、屋外のエスカレーターというのもいくらでもありますから、長雨で浸水というのは、かなり手抜きっぽいですね。
投稿: tak | 2011年9月17日 13:43