福島原発 「冷温停止」 実現の前倒しについて考える
政府と東京電力はこのほど、福島第 1原発事故収束への工程表を一部改定して、「冷温停止状態」の実現を年内に前倒しする意向を示した。「冷温停止状態」というのは原子炉圧力容器底部の温度を摂氏 100度以下にすることなんだそうで、「ちっとも『冷温』じゃないじゃん!」と言いたくもなるが、そこはそれ、フツーの世界じゃなくて原子力の世界なので。
事故直後に発表された工程表をみて、「あまりにも楽観的すぎる見通しじゃないの」と思っていた私は、「おぉ、やればできるじゃないか!」と一瞬喜びかけたが、よく考えればそれほど無邪気に喜んでばかりもいられない。
メルトダウンして格納容器に落ちてしまった核燃料はそのままだし、既に 100度以下になったとされる 1、3号機でも、放射性物質の放出は続いている。おまけに原子炉建屋地下の亀裂から地下水が流入するという、当初は想定していなかった事態も発生していることだし、事態はそれほど前進するというわけではない。
「冷温停止状態」という言葉からは、かなり安心できるステップに移行しそうなイメージをかき立てられるが、実際のところは、「事故を起こした 3基とも 100度を切ります」という数字上の一区切りというだけのことで、困難な作業はこれまで通り続くわけである。
とまあ、いろいろな不安定要因があることは誰も否定できないので、この「前倒し」については工程表には明記せず、「大雨や余震のリスクもあり、努力目標」(園田政務官)と位置付けられている。
そして、この「前倒し」発表の翌日の 21日、藤村官房長官が待ちかねたように、来年夏までに原発を再稼働させるという野田首相の発言を、政府方針として追認した。う~ん、これ、手回しいいなあ。良すぎるなあ。
うがった見方をすれば、産業界からの圧力を受けて原発再稼働への道を敷くために、「原発事故処理も、当初の見通しより前倒しで進んでいることだし」ということを既成事実化するために、「努力目標」なんていう苦しい但し書きを付けながらでも発表する必要があったんだろう。まあ、そのくらいの根回しはするわな。
既に何度も明らかにしているように、私の立場は 「反原発」 であるが、4月 18日の記事では次のように書いている。
私自身の立場も 「反原発」 ではあるが、自分としては 「現実的反原発派」 というポジションに立っていると思っていて、「ただちにすべての原発の運転を停止しろ」 などと言っているわけではない。
原発はゆくゆくはすべて止めなければならないが、現時点でそんなことをしたら、社会が壊れてしまう。原発を運転し続けるリスクと即時運転停止によってもた
らされる社会混乱のリスクを比べたら、後者の方がずっと大きいので、ここは仕方がないから、ある程度長い時間をかけて原発依存から脱却していくべきだとい
うのが、私の主張である。
それなら 「脱原発 の方がいいではないかと言われそうだが、心の底ではしっかりと原発反対なので、あえて流行りの言葉は使わずに 「反原発」と言い通している。
そういうわけなので、私は原発再稼働には何が何でも反対というわけではないが、「なるべく早い段階ですっぱりと止める」ということを前提にして、最低限の稼働に留めてもらいたいと思っているわけなのである。
そのための節電はいくらでもする。今年の夏だって、我が家はエアコンのプラグをコンセントから抜いたままでしっかりと乗り切ったんだし。
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