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2011/09/06

台風の語源は英語の "typhoon" というけど……

今朝 NHK ラジオの番組でパーソナリティが、「台風というのは、英語の "typhoon" からきたもので、日本語の『台風』が英語の "typhoon" になったというわけではないんですね」と言っていた。

ところが、その 10分後ぐらいに、「『台風』 という日本語の語源としては、英語の "typhoon" からきたという以外に、中国語で 『台湾付近の大風』という意味で、『台風』あるいは風に台と書く『颱風』という言葉が使われていたところから来たという説もある」 という聴取者からのメールが紹介された。

これで思い出したのだが、恥ずかしながら私は高校時代まで、英語の "typhoon" という言葉は日本語の「台風」が英語化されたものと思っていた。実は「台風」の方が外来語で、英語の音に漢字を当てたものらしいと知ったのは大学に入ってからだった。古い日本語には「野分」というのがあったが、「台風」は新しい日本語である。

ちょっと前までは「颱風」と表記されていたが、戦後に当用漢字にしなければならないということで、「台風」になった。英語の "typhoon" の方が「台風」 より古い。と、ここで納得してしまえばすっきりするのだが、こういうことになると私はしつこい。さらに、「じゃあ、英語の "typhoon" の方の語源は何なんだ」と、ずっと思っていたのである。

"Typhoon" とは「太平洋や南シナ海(赤道以北、東経180度以西100度以東)に存在する熱帯低気圧のうち、最大風速(10分間平均)が 34ノット(17.2m/s) 以上のもの」ということなのだから、そもそも英語の本家本元である英国には "typhoon" はない。それに似たような大風なら、ないこともないのだろうが、それは現地では "typhoon" とは呼ばれない。

英国に "typhoon" はないのだし、米国を襲うのは同じようなものでも "hurricane" なのだから、それは元々の英語だったわけがない。 "Typhoon" が発生する地域の言葉から英語に入った外来語に違いない。私としては中国語あたり(ということは「大風」とか)から入ったんだろうなあと、漠然と考えていた。

番組にメールを出した方は、日本語の「台風」の語源説としては、英語の "typhoon" ばかりでなく、中国語の「颱風」 だってあるという、別個のコンセプトをおっしゃっているわけなのだが、そう考えるばかりが能ではない。

英語の外来語を経由して入ってきたのだろうという考えからすれば、中国語の「大風」あるいは「颱風」が英語に入って "typhoon" になり、それが日本語の 「台風」 になったという仮説の方が、ずっと自然に思われる。

そこで「台風/語源」というキーワードでググってみると、中国語の「颱風」説以外にも、アラビア語やギリシア語を起源とする説があるとわかった。Wikipedia から引用してみよう。

ギリシャ神話に登場する恐ろしく巨大な怪物テュポン (τυφων,Typhon) に由来する 「typhoon」から「颱風」 となった。

アラビア語で、嵐を意味する「tufan」が東洋に伝わり、「颱風」となった。また英語では「typhoon」(タイフーン) となった。

台湾と中国福建省で使われる閩南語で、台湾のほうからやってくる強い風を風篩 (風颱、白話字:Hong-thai) と言い[要出典]、それが日本に輸入された。

中国広東省で、激しい風のことを大風 (タイフン) といい、その後、西洋に伝わり、ギリシャ神話のテュポンの影響でギリシャ式の "typhoon" というつづりで書かれるようになり、東洋に逆輸入され 「颱風」 となった。

沖縄(当時は琉球) でつくられた言葉とする説:久米村の気象学者蔡温の造語であるといわれる。

ただし、"英語の "typhoon" は、古くは "touffon" と綴り、16世紀には文献に登場しているため [要出典]、中国語の 「大風」 が由来とする説は不自然とされており、アラビア語起源、ギリシャ語起源の二つの説は無力である" との但し書きがある。

とは言いながら、南シナ海からアラビア、ギリシャに至るまでの地域的広がりを想起させる言葉であるということは言えるのではなかろうか。英語のつづりが "touffon" から  "typhoon" に変わったというのも、こうした広がりをバックグラウンドとした後世の修正とみれば、"typhoon" と「颱風」「台風」は、無縁ではないと考える方が自然だろう。

何となく、沖縄で海を眺めた時の感慨を思い出した。東南アジアがすぐそこで、海で世界とつながっているという実感。

 

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コメント

西洋の文献において始めてそれらしき言葉が使われたのは、ポルトガルの冒険家フェルナン・メンデス・ピントの1560年の著述だと下記にあります。ピントは、中国人がそう呼んでいたと述べているとのことです。
http://www.jstor.org/pss/1798728

極東地域のサイクロンのことのみをtyphoonと呼ぶことからしても、この辺が妥当な感じがしますけどねえ。

投稿: きっしー | 2011/09/06 14:31

きっしー さん:

なるほど。貴重な情報、ありがとうございます。

ヨーロッパの文献で最初にそれらしい言葉が現れたのが、Pinto の著述で、ポルトガル語で "tufaõ" とあると。

オリジナルの中国語は "Tung fung" で、意味は 「東風」 だと。

だとすると、中国語起源であることは間違いなさそうですが、元の中国語が 「大風」 とか 「颱風」 とかだとするのは、ちょっと検証しなおす必要がありそうですね。

「東風」 だったかもしれないと。

日本語では 「東風」 というと 「こち吹かば…」 など、そよそよした春風ということになっていますが、中国の台湾海峡付近では違っていたのかもしれないと。

今回の台風12号にしても、いちばん大きな被害をもたらしたのは、南東からの湿った風ということでしたから、「東風」 だったとしても不思議ではありません。

それから、Wikipedia の

"英語の 「typhoon」 は、古くは 「touffon」 と綴り、16世紀には文献に登場しているため [要出典]、中国語の 「大風」 が由来とする説は不自然とされており……

という記述は、ポルトガル語の "tufaõ" を英語風に記述すると "touffon" になるでしょうから、「東風」 から来たのだとすれば、「不自然」 ではなく、むしろ 「自然」 ということになりますね。

ちなみに、今でもポルトガル語では颱風のことを "tufao" というみたいですが、オンライン辞書で引いたら "tufaõ" ではなく "tufão" になって出てきました。

投稿: tak | 2011/09/06 15:13

ご無沙汰しています。

香港では、英語表記は、Tropical Cyclone http://www.hko.gov.hk/informtc/tcMain.htm

香港気象台の台風表記は、繁体字表記で「熱帶氣旋」ですが、
http://www.hko.gov.hk/informtc/tcMain_uc.htm

但し、香港のニュースでは、「颱風」の表記が普通です。
広東語が口語ベースなので、書く時は、「颱風」なのですが、通常は、「風球」と呼び、ニュースでも、「風球」と、アナウンサーは、発音します。警報も、「○号風球」となり、1号、3号、8号、10号と、順に強くなり、8号以上は、香港の会社・役所などは、すべて、休み成ります。
香港の場合、雨より、風で名物の看板が落ちてきて、怪我をすることがありますが、8号以上だと、仮に看板が落ちて、怪我をさせても、掛けているほうには、責任がなくなります。そういうことからなのか、風球と、風が強調されているように感じます。

台風の由来からは、ちょっと外れましたが、香港では、
こうなっています。

投稿: ヒロ | 2011/09/06 17:56

ヒロ さん:

おもしろい情報、ありがとうございます。

"Tropical Cyclone" の用法をみていると、どうやら "hurricane" と "typhoon" の上位概念のようなもので、後述の 2つは Tropical Cyclone に含まれるという関係のような気がします。

香港では最も公式な表記が「熱帶氣旋」(多分 tropical cyclone の直訳なんでしょうね) で、準公式が 「颱風」(古来よりの表現)、一般的なのが 「風球」 ということと理解していいんでしょうか。

レベル 8 以上は看板が落ちても責任がないというのは、おもしろいですね。

ちゃんと想定しているくせに 「想定外」 に類した逃げ道を使っていいというのは、中国ならではの曲技 (くせわざ) です(^o^)

投稿: tak | 2011/09/06 23:00

Takさん

香港では最も公式な表記が「熱帶氣旋」(多分 tropical cyclone の直訳なんでしょうね) で、準公式が 「颱風」(古来よりの表現)、一般的なのが 「風球」 ということと理解していいんでしょうか。

はい、この理解で正しいです。

香港は、小さい地域なので、風球(台風)が来ても、数時間で、通り過ぎてしまいます。なので、8号風球警報が出ても、一日中休みと言うことは、この20年で1回くらいです。後は、半日とかです。香港人が一番嫌がるのが、19:00くらいに出て、明け方には、警報が解けてしまうことです。せっかくの、特別な休み(麻雀をする人が多い)が、なくなって、がっかりするのです。

投稿: ヒロ | 2011/09/07 11:24

ヒロ さん:

>香港人が一番嫌がるのが、19:00くらいに出て、明け方には、警報が解けてしまうことです。せっかくの、特別な休み(麻雀をする人が多い)が、なくなって、がっかりするのです。

それは、気持ちわかります。
一度警報を出したら、めったに解除しないでもらいたいところですね (^o^)

投稿: tak | 2011/09/08 19:56

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台風が2つ発生して沖縄本島が挟まれようとしています。今日も台風直撃じゃないのに、風がとても強く、いやいやこれ台風だろって感じでした。台風10号は九州に向かっているみたいで、最近も梅雨の影響で大雨の被害が凄かったので、ちょっと心配です。... [続きを読む]

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