"「こんなの論外だ!」アマゾンの契約書に激怒する出版社員 国内130社に電子書籍化を迫る" という記事が BLOGOS の記事が話題になっている。記事の内容は、アマゾンが日本の出版業界にとっては到底受け入れがたい横暴な条件で、電子書籍化を要求しているというものだ。
それに対して日本の出版業界はかなり反発していて、アマゾンのもくろむ日本の出版業界への電子書籍での参入は、当面大きな抵抗に阻まれることが予想されるというのである。
私は出版業界の中身については全然詳しくないので、かなり安易な立場からかもしれないということを十分に自覚しながらも、「消費者の立場から」という「伝家の宝刀」的な言い方をさせてもらうとすれば、「難しい話はどうでもいいから、日本もさっさと電子書籍化を進めてくれよ」ということになる。
出版業界の現状は、これまでの「紙の媒体で売る」というビジネスモデルに最適化しているのは当然だから、電子書籍化なんてことはしたくないのだろう。しかし、全ての消費者とは言わないし、圧倒的多くの消費者ですらないかもしれないので、ここでは慎重に「少なからぬ消費者によって」ということにしておくが、電子書籍化は確実に望まれている。
私は自分の部屋の書棚にぎっしりと収納された本を見るに付け、「ああ、これが小さなハードディスク(あるいは別のデジタル・メディアでもいい)に入ったら、なんと楽だろう」とため息をつく。
先日の東日本大震災では、書棚の本がガラガラに崩れ落ちて、それをきちんと系統立てて収納しなおすのにかなりの手間がかかった。これが例えば、iPad の中に入っていて、それがどっかのクラウドにバックアップされているのだとしたら、余計な力仕事はせずに済んだのだ。
もちろん、電子書籍に向かない出版物もある。例えば現状での地図、図鑑などだ。紙の媒体としての地図や図鑑は、パラパラとめくれる利便性において、電子書籍に勝る。しかし検索と表示の手法が進化すれば、これらもデジタルの方が有利になるかもしれない。
ごくフツーのテキスト中心の書籍ならば、電子書籍の方がずっと有利だ。もちろん、読みやすさで言えば紙の媒体の方が上回るかもしれないが、「モノ」としての取り扱いのしやすさということまで考えれば、デジタルの圧倒的勝利である。
読みたい時にさっとダウンロードして、読み終われば収納にスペースをとらず、読み返したくなれば、いつでも即座に取り出すことができる。
日本での電子書籍化にあたっての最大の問題点は、市場の規模ということだろう。
英語の書籍ならば、ほとんど全世界を相手にすることができるが、日本語書籍の市場は人口 1億 2000万ほどの日本国内にほぼ限られる。しかも、その中で電子書籍を読むことのできるデバイスを持っている人口は、まだまだ多くない。
その上、この国では「本は紙の媒体で持ちたい」という伝統的(?)消費者が少なくないので、電子書籍の可能性は未知数だ。そんな市場を相手にするのは、リスクが大きいだろう。
その辺のショッピング・センターの、大規模でない書店の品揃えをみると、日本の書籍市場の中身が推定できる。よく売れる本というのは、その時々のベストセラーと、メジャーな雑誌と、コミックだけだ。ちなみにコミックは一部で電子書籍化が進行中らしいが、私はあまり興味がないので、ここでは取り上げない。
一番問題なのは、私のようなタイプのちょっと物好きな消費者(ここでは書籍の話だから「読者」と言う方がいいかもしれないが)にとっては、その辺の書店では買う本がないのである。というわけで、私のような読者が本を買うのは、都心に出た時に大型書店で本あさりをするか、目的の本が明確な時にアマゾンで注文するかしかないのだ。
もし日本市場で電子書籍化が進んだら、まずアマゾンなどで注文した時に、本が届くまで待つ必要がなくなる。注文したらその場でダウンロードできるのだから、すぐに読み始められる。さらに、大型書店でするしかなかった本あさりが、いつでもどこでも、手元のデバイスでできるようになる。
私のような読者が読みたい本の多くはテキスト中心だから、電子書籍化にはそれほどの手間がかからないだろう。どうせ今どきのことだから、印刷の前段階ではデジタル化されているはずなのである。
極端にいえば、編集段階での最終原稿をそのままテキスト・ファイルでダウンロードさせてもらってもいいと思うほどだ。こちらで勝手に読みやすいフォーマットに変換しちゃうから。それでは簡単にコピーされちゃうのが問題というなら、特殊処理をした PDF でもなんでもいい。
ベストセラーにはほど遠いような範疇の書籍ほど、紙の本のカタチにしない方がコスト的に有利なはずだ。在庫だって本のカタチにしない方がいいし、ロングテイル対応にしても簡単にできる。
だからあまり数が売れないような、よほどの物好きを対象としたものほど、紙の媒体とはせず、しかも電子書籍のフォーマットにすらとらわれずに PDF か何かで、ちゃちゃっと対応してもらいたいと思うのである。
ああ、ごちゃごちゃ言わずに、本は電子書籍でダウンロードするのが当然という世の中になってもらいたいものなのである。好事家向けの本までそうしろとは、もちろん言わないから。
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