『唯一郎句集』 レビュー 番外編1
父の葬儀で久しぶりに多くの親戚に会い、唯一郎直系の親戚にも会った。唯一郎は私の母方の実の祖父で、自由律の俳人だった。私は昨年春まで 一年以上かけて『唯一郎句集』のレビューをやっている (参照)。
彼女にレビューの話をしたら、自宅に唯一郎自筆の句があるというので、急遽持ってきてもらった。60年以上も前の半紙で、シミだらけになっていて、句帳をもたなかった人らしく、落款もないシンプルなものだが、確かに「唯一郎」という署名がある。
決して達筆というわけではないが、みずみずしい感性を感じさせる繊細な筆致だ。したためられているのは 2句。
落葉を喰う鶏におどろけよ吾児よ
どよもすも秋潮の箒草立枯畑
どちらも 『唯一郎句集』 に収録されている。初めの句は 『唯一郎句集』 レビュー #70 で次のようにレビューしている。
地飼いの鶏が、乾いて細かくちぎれた落葉をついばんでいる。それを見ている唯一郎と息子。唯一郎は鶏が落葉をついばんで食うことに驚いている。
そして、それを何気なく眺めている息子 (私の伯父にあたる) にも少し驚いている。「一緒に驚いてみようじゃないか」 と思っているが、息子はただ無邪気に眺めているだけである。
二句めは句集では表記が 「どよもすも秋潮のほうき草立つ枯畑」 になっている。半紙にあるとおりの表記だと、「箒草、立枯れ畑」 という風に読んでもいいではないかという気になる。 『唯一郎句集』 レビュー #72 では、次のように書いている。
「どよもす」 は 「どよめく」 と共通して、「響き渡る」 という意味。秋の海の波が高くなって、浜に打ち寄せる音も大きくなっている。冬になればさらに海は荒れて、海鳴りがとどろき渡るようになる。
海岸の畑に立つほうき草。ほうき草は、その名の通り、枯れた茎を束ねてほうきにする植物。実は 「とんぶり」 と呼ばれる珍味である。
刈り取る前の枯れたほうき草の彼方に、荒れる海が見えるという、映画のような荒涼とした光景。
親類の家に行けば、もっといろいろな直筆があるかもしれない。
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