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2011年11月 6日

「自転車は車道」の原則は、地方都市ではまったくの愚策

道交法の原則に従って自転車を車両として扱うことを徹底し、歩道ではなく車道を走行するように求めた「自転車交通総合対策」が 10月 25日付で全国の警察本部に通達されたのだそうだ。自転車と歩行者の事故が急増しているので、それを防ぐ狙いなのだという。

しかしこれを全国一律に適用することに、私は大いに疑問を感じる。いや、疑問というより、実感としてヒヤヒヤしている。危なくてしょうがない。

歩道上で歩行者と自転車がぶつかりやすいのは、歩行者がぞろぞろ歩く中をぬって自転車が走る都会に限ったお話で、地方都市では限られた繁華街以外では、歩道なんて誰も歩いておらず、ガラガラなのである。どうせガラガラなら、それを無駄にせず、自転車に使わせてやる方がいいというのは、誰が考えてもわかる。

ガラガラの歩道から車がびゅんびゅん走る車道に自転車を下ろしてしまったら、かえって事故が増えるに決まっている。しかも自転車と歩行者の事故なら、命に関わることはめったにないだろうが、車と自転車の事故は、そんなものでは済まない。

私の住んでいるつくば周辺なんて、自動車に限らず自転車の運転マナーだってひどいもので、「自転車は左側通行」という原則なんて、誰も知らないんじゃないかと思うほどだ。しかも暗い夜道を無灯火で走っている。私の印象では、夜道を走る自転車の 8割以上は無灯火で、点灯している方が圧倒的少数派だ。

考えてもみるがいい。茨城の田舎道は、日が暮れたら真っ暗になる。そんな中を、死にたくてしょうがない連中が、無灯火の自転車で右側通行してくるのである。これまではそいつらの半分は歩道を走っていたので、なんとかなった。しかしこれからは、車道を走らされるのである。危なくてしょうがない。

願わくは、茨城の自転車はどうせ交通ルールなんて誰も知らないんだから、今後もちゃっかりと、歩道を走ってもらいたいものなのである。とにかく「自転車は車道」という原則は、ほとんどの地方都市の交通事情にそぐわないのだ。

読売新聞の群馬版に「歩道ガラガラでも自転車は車道…困惑の車王国」という記事が出ていた。群馬では「自転車は車道」という原則徹底に、県警幹部ですら困惑しているという。

全国統計では、歩行者と自転車の事故は、昨年 2760件で、2000年(1827件)の1.5倍に増加したが、県内は昨年 30件で、00年(35件)と同水準。一方、自転車と車の事故は昨年、県内で 3136件と対歩行者事故の 100倍以上で、県警幹部の一人は「大都市部と群馬では、事情が違う。人のいない歩道から、車だらけの車道に自転車を下ろして、むしろ事故が増えるのではないか」と、頭を悩ませている。

車社会なのは群馬県ばかりではない。ほとんどの地方都市が車社会なのである。だったら、自転車を危ない車道から安全な歩道に逃がしてやる方がいい。何度も言うように、歩道はガラガラなんだから。

今回の通達は早急に見直してもらいたいと思うのだが、どうせお役人のことだから、自転車と自動車の事故が急増してから、初めて重たい腰を上げるだろう。それまで事故に遭ってしまう者が不憫である。

私としても自転車にぶつからないように、最大限に気を付けなければ。

 

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コメント

私はよく自転車に乗りますが、自転車通行可の表示があれば歩道を走ってます。それができないとなると、相当な危険を感じますね。

一年経って自転車の事故死者数のデータが出てから考え直すとしたら、実に愚かなことですね。

中央が地方のことを考慮しない典型例。

投稿: ハマッコー | 2011年11月 6日 21:39

ハマッコー さん:

>私はよく自転車に乗りますが、自転車通行可の表示があれば歩道を走ってます。それができないとなると、相当な危険を感じますね。

実感として、コワイですよね。

車を運転する者としても、自転車に乗る者としても、どちらもヒヤヒヤものです。

>中央が地方のことを考慮しない典型例。

全くその通りです。

投稿: tak | 2011年11月 6日 22:46

まあ、役人の考えそうなことじゃないでしょうか。

1.自動車と自転車の事故⇒自動車は保険に入っているし、運転手の業務上の責任はより重い。
2.自転車と歩行者の事故⇒保険に入っていることは稀。ルールの運用状況が不明確だと自分たちの責任も問われかねない。

都市部の自転車通行がダメな歩道だけを指定すればよさそうなものですが、そういう発想にはならないんでしょうね。

せめて灯火と衣服等に付ける反射材を義務付けし、それが定着するような措置を同時に取るべきでしょうね。歩道が無いような道路でも効果があるし。

投稿: きっしー | 2011年11月 7日 10:19

無灯火、逆走はもちろん論外です(あと信号無視、携帯などの「ながら運転」も)。車道を走るなら(走らせるなら)、「車両」としての自覚を持たせることが絶対に必要です(クルマを運転する人で、無灯火・逆走・信号無視をやる人はほとんどいないですよね、それと同じレベルで)。

そしてもちろん、takさんが最後に「自転車にぶつからないように、最大限に気を付けなければ」と書いていらっしゃるように、自動車側の意識変革(車道は自動車だけのものではない)も必須です。

ただ、根本的な問題はそこではなく、

自転車が歩道を走ると、自転車と自動車が衝突する事故が増える、

ということです(今回の警察庁の通達はそこを正しく理解している内容だと思います)。

だから、自転車が自動車とぶつからないようにするには、自転車を車道に下ろさなければならない。

「え? そんな馬鹿な」と普通は思いますよね。私も最初はそう思いました。

というわけで、『自転車の安全鉄則』(疋田智、朝日新書)の一読をお勧めします。著者が、日本国内における最善の自転車行政の試みとして紹介しているのは栃木県宇都宮市。十分に「地方都市」ですよね。

ちなみにきっしーさんがおっしゃっている「灯火と反射材」はすでに義務づけられています(衣服等、ではありませんが)。灯火(道交法第五十二条)及び後方反射材もしくは尾灯(同第六十三条9の2)を付けていない自転車は公道を走行できません。守らせる措置(取り締まりなど)は不十分ですが。

投稿: 山辺響 | 2011年11月 7日 11:53

きっしー さん:

同感です。

投稿: tak | 2011年11月 7日 14:47

山辺響 さん:

ご指摘の危険性は、日頃薄々感じていましたが、それは、歩道のない田舎道で、自転車が逆走している場合も同じですね。

悲しいことに、田舎道を走る自転車のマナーは最悪で、歩道を走るか車道を走るかに関わらず、同様の危険は日常茶飯事です。

さらに、ご指摘とは逆のケースもあります。その場合は、自転車が歩道を走る方が安全ですね。

逆のケースとは、自転車が細い道からいきなり飛び出して左折し、左側車線に合流してくることです。これは経験上かなり多く、車の側が急ブレーキを踏むことが度々です。この場合は、自転車が歩道を通ってくれればいいのにと、心の底から思います。

根本的には、交通規則を守る意識の徹底と、自転車専用レーンの設置が必要でしょうが、それには 100年かかりそうです ^^;)

投稿: tak | 2011年11月 7日 15:08

あ、誤解されたようですが、私が書いた

自転車が歩道を走ると、自転車と自動車が衝突する事故が増える、

というのは、

脇道から出てくる自動車と、歩道を走る自転車がぶつかる、

という意味ではありません。

これは私のオリジナルの主張ではないので詳しくは前掲の書籍を読んでいただきたいのですが、核心部分だけ書いてしまうと、こういうことです。

たとえば自動車を運転していて、車線の左側を同じ方向に走っている自転車がいるとします(自転車、自動車とも法律を遵守しており、今回の警察通達がめざす状況です)。

邪魔だな、危ないな、と思いますよね、普通は(「邪魔だな」は性格しだい?)。

なぜ、そう思うのか。

自転車が「見えている」からです。

歩道を走る自転車は「見えません」。物理的に見える場合でも、少なくとも「自車と今にもぶつかる可能性が高い危険な存在」としては認識されていません。隔離されていますから。

その「見えていない」「危険ではない」存在が、いきなり「ぶつかる相手」として出現するのです。しかも、歩行者よりも相当に速いスピードで。

どこで? 自転車対自動車の衝突事故の7割が起きている場所=「交差点」で。

そりゃ、避けられませんて。

車道を共有して走っている場合は、「邪魔だな危ないな」と常に意識にありますから、「交差点で急に出現」することにはならないのです。

ご指摘の「脇道から急に自転車が飛び出して左側車線に合流する」は、「逆走」と同様に法律違反(一時停止不遵守)でしょう。問題は、そのような違法行為が事故の原因になっているのではなく、「法律を守って」歩道を走っていることが事故の原因になっている、ということなのです。

と、これは全部、前掲書の受け売りですが(汗)

投稿: 山辺響 | 2011年11月 7日 15:38

連投すみません。

今回の警察庁通達を実施するのがかなりの困難と努力を伴うだろう、という点では私も同感です。

それは恐らく「原発を必要としない社会」を志向していくのと同じくらいの意識の変革が必要だろうし、しかも原発と違って自転車は身近な存在であるだけに、いっそうそれに関わる習慣を変えていくことは困難かもしれません。

ただ、実はそれは単なる意識の問題であって、コスト的には微々たるもので済む話なんですよね。自転車専用レーンなんてのも、「あれば嬉しいけどね」くらいのものだと思っています。自転車が法律とマナーをきちんと守る、そして自動車が今までより「少し」遠慮する。それだけの話です。自転車専用レーンなんてのも、「あれば嬉しいけどね」くらいのものだと思っています。

投稿: 山辺響 | 2011年11月 7日 15:48

山辺響 さん:

>どこで? 自転車対自動車の衝突事故の7割が起きている場所=「交差点」で。

「脇道から出てくる自動車と、歩道を走る自転車がぶつかる」というのは、交差点事故に含まれるという関係だと理解しており、しかも最も多いケースと想像しているのですが、間違いでしょうか?

>歩道を走る自転車は「見えません」。

うーん、地方都市のほとんどの道路では、よく見えるんですがね。洒落た並木も植え込みもないし、歩道も狭いし。それに、歩道から突然車道に飛び出してきたりするので、油断ならないし ^^;)

自転車と猫は、とにかく予測できない動きをするので、よくよく気をつけています。

投稿: tak | 2011年11月 7日 23:57

>「脇道から出てくる自動車と、歩道を走る自転車がぶつかる」というのは、交差点事故に含まれるという関係だと理解しており、しかも最も多いケースと想像しているのですが、間違いでしょうか?

最も多いかどうかは私も知りません。が、それも交差点事故に含まれそうな気がします。それもまた、車道を走っていればかなりの程度防げるでしょう。繰り返しますが、逆走自転車とか、一時不停止の飛び出しは論外です。

地方都市の道路では、路駐も少ないのかな……。街路樹やガードレールなどの柵、看板類も大きいですが、それ以上に大都市では路駐車両が視野を遮っているように思います。まぁさらにそれ以上に、心理的な壁(同じ車道を共有していない)が大きいでしょうが。

いずれにせよ、おおかたの自転車が車道を走るようになれば「歩道から突然車道に飛び出してきたりする」例は激減するでしょうね。

要するに、「突然危険が発生する」のと「常に危険なので気をつける」のと、どちらが事故につながるか、という話だろうと思います。

思うに、誰もがtakさんのように自転車を常に気にしつつクルマを運転しているのであれば、歩道走行だろうが車道走行だろうが事故はあまり起きないでしょう。他方、自分の話で恐縮ですが、私のように常に左側通行・信号厳守でクルマとのコミュニケーションを意識して走行する自転車ばかりであれば、やはり事故は少ないでしょう。

それを同時に実現するには「自転車は車両である」という位置づけを明確にすることが王道である、と。

投稿: 山辺響 | 2011年11月 8日 09:34

山辺響 さん:

>それを同時に実現するには「自転車は車両である」という位置づけを明確にすることが王道である、と。

それには、まったく同感です。

自転車走行する人たちの多くは、その自覚が決定的に欠如していると思います。

投稿: tak | 2011年11月 8日 21:07

少し手前味噌になりますが、3年前に上梓した街づくりに関する本が、少しずつ行政に浸透して社会実験などが行われ、当初は反対していた警察もようやく方針を変えたものと考えられます。
報道を通して通達を聞いた人は強い違和感を抱いた様子ですが、通達を直接読むと、車線を減らしてでも自転車レーンを確保することなどを可能にする、画期的な方針転換であることがよく分かります。
特に、地方都市の市街地は、自転車天国に変身する可能性もあります。
よろしければ、拙著もご一瞥を。

投稿: シライ | 2011年11月10日 10:43

シライ さん:

へえ、そうなんですか。

そのうちちょっと見直してみましょう。

投稿: tak | 2011年11月11日 00:04

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