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2011年12月22日

安めぐみさん、お気の毒だが、「20代で結婚」 じゃなかったのだよ

今日、所用で都心に向かって渋滞の首都高をノロノロ進んでいたら、ラジオで安めぐみという女性タレントが、「20代最後の日に結婚」 というニュースを流していた。このタレントの誕生日が 12月 22日なので、その 1日前に婚姻届を出して、「20代のうちに結婚したい」 という願いを叶えたのだそうだ。

うーん、しかし、安めぐみさんにははなはだ恐縮だが、それでは 「20代のうちに結婚」 という願いは満たされなかったのだよ、実は。民法の規定によると、人間は誕生日の前日に年を取るのだ。つまり、誕生日の前日に婚姻届を出したのでは、「ちょうど 30歳になった日に結婚した」 ということになるのだよ。

この規定については、実は私も長いこと知らなかったのだが、調べてみたら、そういうことだったのだ。奇しくも 7年前の今日に書いた "「早生まれ」 の込み入った事情" という記事に書いてある。直接的には、「どうして 4月 1日生まれまでが、『早生まれ』 という扱いになるのか」 を論じた記事だ。

我が国における年齢を含む 「期間」 というのは民法によって定められており、その第 143条によると、「其起算日ニ応当スル日ノ前日ヲ以テ満了」 とある。言い回しがややこしいのだが、人間の年齢に関して噛みくだいて言えば、誕生日の前日でそれまでの年齢を 「満了」 する。要するに誕生日の前日に歳をとってしまうということだ。(前日の何時かは定められていないから、前日になったとたんに歳をとるのだろう)

厳密な理屈で考えれば、誕生した時刻をもって、その人のそれまでの年齢は満了して、一つ年を取るのだろうが、それを言ったら運用がうっとうしいことになるので、法律的には誕生日の前日になった瞬間に年を取るということになっているらしい。

それで、4月 1日生まれの子どもが満 6歳とみなされるのも、「いわゆる 6歳の誕生日」の前日、3月 31日なのである。

学校教育法第 22条は「保護者(子女に対して親権を行う者、親権を行う者のないときは、未成年後見人をいう。以下同じ)は、子女の満 6才に達した日の翌日以降における最初の学年の初めから、(中略) 就学させる義務を負う」と定めている。

再び 7年前の記事から引用しよう。

ということは、4月 1日生まれの子どもは 3月 31日に満 6歳になり、その翌日 (ここが大事なところだ)、つまり 4月 1日に始まる小学校の新学年に間に合うというわけだ。「最初の学年の初め」(=学校の新学年)というのは、入学式が何日であれ、法律上は 4月 1日と決まっているのである。

ここで、「ちょっと待てよ」と言いたくなるのは、私だけではあるまい。というのは、4月 2日生まれの子どもだって、民法に従えば 「最初の学年の初め」 である 4月 1日には満 6歳になっているわけなのだから、 「早生まれ」 扱いにしてもよさそうなものなのである。しかし、前述の通り「満 6才に達した日の翌日以降における最初の学年の初め」という規定を作って、4月 2日生まれを「早生まれ」の枠から巧妙に閉め出しているのだ。

実にまったく煩雑なお話である。普通に考えれば「4月 1日が誕生日の子は、新学年開始の日に満 6歳になるので、ギリギリセーフで、小学校に入学できる」と考える方が、結果オーライで、ずっとシンプルに済ませられる気がする。しかし民法というのは、他の様々の期間計算(例えば飲み屋のつけの時効とか)とのからみで整合性をとるために、誕生日の前日に年をとると規定せざるを得ないようなのだ。

と、このようなことで、日本人は誕生日の前日に年を取るのである。20代のうちに結婚したいという願いが、実は叶えられなかった安めぐみさんは、実にお気の毒さまである。でもまあ、そこはそれ、気分の問題だから、いいか。

【2020年 7月 28日 追記】

実はこの記事は誤りで、安めぐみ さんは、ギリギリで「20代最後の日に結婚」というのが間に合ったようなのである。お詫びして修正申し上げたい。

というのは、「誕生日の前日に年を取る」ということに関しては、誕生日の前日になった途端に年を取るのではなく、誕生日の前日が終わらんとする一瞬(24時)に年を取るとされているようなのだ。詳しくは、2020年 7月 28日付の "人は誕生日の前日に年を取るわけなのだが" を参照されたい。

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コメント

わたしも前に調べたことがあります。たしか、わたしが調べたときは「前日の24時に歳をとる」ということだったように思います。正子のことを前日の24時とみなすか当日の0時とみなすかは運用というのか取り決めの問題ですね。

投稿: たんご屋 | 2011年12月24日 10:45

たんご屋 さん:

恐縮ですが、「前日の24時に歳をとる」という条文はないんじゃないですかねえ。

投稿: tak | 2011年12月25日 00:22

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