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2011年12月18日

「結界」 の意義

自分の仕事部屋で PC に向かい、ある案件の企画書を書いている。その企画書で必要な資料は、あっ、そうか、昨日帰ってきたときに、リビングルームのソファで読んでいて、そのままテーブルに置いて来てしまったんだった。

で、階段を下りてリビングルームに行くが、ドアを開けて入ったとたんに、なぜか資料のことなんかどこかに飛んでしまっていて、テーブルの上にあったテレビのリモコンのスイッチを何気なしに入れてしまう。

すると、BS でサッカーのマンチェスター・ダービーをやっていた。後半の 30分を経過したところで、1 対 1 の同点。かなり盛り上がっている。つい試合の最後まで見てしまい、興奮して仕事部屋に戻ってから、「あれ? 俺は一体何をやってたんだっけ?」。レポートに必要な資料を取りに行ったことを思い出すまで、30分かかった。

と、最近そんなような経験をしたばかりなもので、Slashdot の 「ドアを開けて別の部屋に移動すると前の部屋のことを忘れる? 」 という記事を興味深く読んでしまった。別の部屋に行った途端に用事を忘れてしまうのは、「部屋を移動する」 という行為自体が物忘れの原因になっている可能性があるんだそうだ。

Slashdot の本家記事では、Out of Sight, Out of Mind (視界から消えると、心の中からも消える) という見出しで紹介されている。実験は米ノートルダム大学の研究チームによるもので、コンピューター上の仮想空間と現実の部屋の両方のケースで、部屋の移動による記憶の減少が見られたという。

被験者はテーブルからブロックを取り、移動先のテーブルに置くという作業を行う。移動先のテーブルは大きな部屋では同じ室内、小さな部屋では別の部屋に置 かれており、被験者からは運んでいるブロックは見えない。移動途中でブロックの色と形が提示され、現在持っているブロックまたは直前に置いたブロックと一 致するかどうかを 「Yes」 「No」 で回答するというもの。

実験の結果、いずれも別の部屋に移動した場合の誤答率が高く、回答時間も長くなった。また、元の部屋に戻るパターンではさらに成績が悪かったという。ドアを開けて他の部屋に移動することがイベントの境界となり、新しいイベントモデルが作成される。

ここで作成された新しいイベントモデルが脳のワーキングメモリーに格納されるので、新しい情報は容易に思い出せるが、古いイベントモデルが利用可能な領域は減少しているので、それに関連付けられていた記憶も減少するという可能性を、この論文は指摘しているというのである。

なんだ、目的の場所に着いたとたんに用事を忘れてるというのは、人間誰しももっている 「脳の傾向」 ということだったのか。別に私が忘れっぽいからというわけじゃなかったのだ。大いに安心したぞ。

ちなみに、神社仏閣で鳥居や山門をくぐった途端に、ちょっと意識が新たになって、神聖な気分になるというのは、あの鳥居や山門という 「結界」 をくぐるという行為自体が大きな意味を持っているということなのかもしれない。

ふぅむ、「結界」 というものの意義は、かなり大きいのだな。

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