政治家の失言問題と、「上品なジョーク」がウケない風土
一川防衛大臣が、身内の民主党内部からさえ辞任要求されかかっている状況なんだそうだ。前原政調会長が1995年の米兵による沖縄少女暴行事件について、一川大臣が「詳細には知らない」と国会答弁した件で、「勉強不足が過ぎる」と厳しく批判したという(参照)。
本当に日本という国は、政治家が自らの余計な発言で辞任に追い込まれるケースが多すぎる。私は昨年 2月の石井一参院議員の「島根・鳥取は日本のチベット」発言に関連して、「本当にもう政治家って、こんなことを公の場で言ったらおかしなことになると決まっているのに、どうして言ってしまうんだろう」と絶望的な疑問を呈した。(参照)
しかし、自民党政権の時代からこれほど政治家の「問題発言」とか「失言」とかいう話が連続するとなると、これはもう、何か構造的な問題があるとしか思えない。いや、きっとそうに違いないのである。
それについて、上述の「島根・鳥取は日本のチベット」発言問題を論じた記事で、私は次のように書いている。
前の「女性、産む機械」論でおかしなことになった自民党の柳澤伯夫さんの場合もそうだが、こういう人たちって、こんな馬鹿馬鹿しい発言がその場でウケるものと期待して、わざとそんな言い方をしているんじゃないかと思われるフシがある。
そんな言い方をする必然性のある文脈では全然ないのに、あえてウケを狙って、「私は冗談ぽい言い方や柔らかい例え話もできる政治家なんですよ」というところを見せて、ポピュリズム的な人気を得ようなんて思ってるんじゃないかという気さえするのだ。
一川さんの「防衛問題には素人だから、これが本当のシビリアン・コントロール」なんていう発言もそうなのだが、ポピュリズム的ウケを狙ってスベっちゃってる場合が多いような気がするのである。要するに、そんな馬鹿な発言をした当人の悪趣味ということは基本にあるのだが、そんな悪趣味を言外に要求する有権者もやはり悪趣味なのである。
そしてその、政治家と有権者の悪趣味の合わせ技の結果による「問題発言」を、「待ってました」とばかりにマスコミにリークする人がいる。
つまり、有権者と政治家の悪趣味の合わせ技と、リーク好きのオッサン(あるいはオバサン?)というのが、政治家失言問題の二大要素だという気がする。そしてマスコミは前後の文脈をカットして、「問題発言」とか「失言」 とか言われる部分だけ取り上げるのだから、そりゃもう大変な「トンデモ発言」になってしまうのである。
これはもう、政治風土の問題である。政治家のオッサンたちは講演会とかになると、「自分の支持者たちがこんなに集まってくれたのか」と、ちょっといい気持ちになり、ついサービスし過ぎて下世話なレトリックを行使したくなるみたいなのだ。そしてそんな中に、マスコミへの「ご注進好き」な人が混じっていると、「失言問題」は完成する。
しかしこんなことが続きすぎると、多くの政治家が警戒して、率直な発言を控えてしまうだろう。しかし本当は率直な発言が問題なのではなく、下世話な、あるいはレベルの低すぎるレトリックが問題なのだということは、過去の多くの「失言問題」から得られる教訓だ。
リップ・サービスしたかったら、少しは上品なジョークを多用すればいいという気もするのだが、私の経験から言わせてもらうと、日本のオッサンたちには上品なジョークって、全然受けないのである。受けないどころか、下手すると「気取ってる」なんて受け取られかねない。ウケを狙うとどうしても、下世話に落とさなければいけないというようなところがある。
つまり我が国の大衆は下世話を欲しながら、まともに下世話で応えられると「けしからん」といきり立つ傾向があるのだよね。これはもう、なかなか困ったことなのである。こんな状況だから政治家の方でも、なかなか上品なジョークが上手にならない。
そうならないために、上品なジョークをちゃんと理解してウケてあげなきゃいけないと思うのだが、どういうわけか、やっぱりなかなかウケないんだよね。
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