三鷹高校元校長の訴訟を巡る冒険
都立三鷹高校の元校長が都に損害賠償を求めた訴訟で全面敗訴したこと(参照)が、あちこちで結構な話題になっている。
原告の土肥信雄氏(63)は、校長を定年退職した後に、「希望すればほぼ全員(90%以上) が採用される非常勤教員としての採用を不合格とされた」が、それは校長時代に、職員会議での挙手や採決を禁じた東京都教育委員会の通知を撤回するように、いろいろな形で社会にアピールし続けたことへの報復的なものだと主張している。
それで、職員会議での挙手や採決を禁じるのは違法であり、自分が非常勤教員として採用されなかったことによる不利益の損害賠償を求めたというのが、今回の訴訟の骨子と、私は解釈している。
結論から言って、土肥氏の主張には無理があると思う。そもそも職員会議での挙手や採決を禁じた通知そのものが、裁判長の言うように「一部の学校で、職員の挙手等により職員会議が校長の意思決定を拘束するケースがあったのを適正化する」ことを目的としていた。
つまり、一部の教師が職員会議でああだこうだと文句を言って、校長の方針による学校運営がまともにできなくなるという実態があったので、それを適正化するための通達だったわけだ。「校長の言うことは何でも反対」というような教職員組合の体質があることは、よく聞かれるところである。
通達だけを見ると、いかにも学校内部で民主的運営がなされないように思われるが、そもそも組織運営において、上からの業務命令を下の段階での裁決で覆すなんてことは、非常識というもので、普通の会社ではありえないことだ。
土肥氏のいうように、この通達で学校での自由な発言が阻害されるというなら、フツーの会社なんて監獄みたいなものということになる。実際には通達に従っても、自由な発言を封じない運用はいくらでも可能ではないか。自由な議論はきちんとして、その上で、意志決定をするのが校長の仕事なのである。組織というのはそういうものである。
それでもまだ文句があるなら、職員会議ではなく団体交渉権を行使する場で要求すればいい。
土肥氏は「議論をしても学校運営に反映されないなら、発言しても仕方がないということになり、結果的に自由な発言が阻害される」といったような主旨の発言をされているようだが、それこそ短絡的な思考というものだろう。そのあたりこそ、校長の裁量による運用で解決していくべきことである。
それから非常勤職員としての採用についても、雇う雇わないは、教育委員会の裁量による。「希望すればほとんど採用されるはずなのに、採用されなかったのだから、損害賠償しろ」というのは、ちょっと厚かましい気がする。
自分の主張を社会にアピールしたいなら、初めから馬の合わない教育委員会なんかに雇われないで、独立してやっていけばいいのにと、私なんか思ってしまうがなあ。
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コメント
懐かしいですね。一次情報にあたられることをおすすめします。内容はともかく、裁判にまでなったのは教育委員会の対応故ですから。
元校長の懸念もわからなくはないですし。
投稿: vagari | 2012年2月 8日 01:01
vagari さん:
>一次情報にあたられることをおすすめします。内容はともかく、裁判にまでなったのは教育委員会の対応故ですから。
一次情報って、どれなんでしょうかね。
土肥氏に対する教育委員会の評価が、最低だったというようなことでしょうか。
>元校長の懸念もわからなくはないですし。
私も、「わからなくはない」ということには同感です。
石原都知事や橋下大阪市長みたいなやり方には、私も賛成できませんしね。
投稿: tak | 2012年2月 8日 21:16
ご自身の主張は岩波から本を出していたかと、支援サイトもあったはずですが今はどうでしょう。
今は校長の権限が昔より強いですから。自分は通知に従っていた上で意見していたようです。
裁判は勝てそうな事のみ主張していたので意外です。教育委員会も「君は面倒だから採用しない」とすれば良いのに、能力評価を最低にするから報復だと言われる。対応が下手過ぎです。
投稿: vagari | 2012年2月 9日 22:57
vagari さん:
>今は校長の権限が昔より強いですから。自分は通知に従っていた上で意見していたようです。
それは確かにその通りのようですね。
>教育委員会も「君は面倒だから採用しない」とすれば良いのに、能力評価を最低にするから報復だと言われる。対応が下手過ぎです。
まったくその通りです。
「報復」というより、子どもの喧嘩以下だという気がします。
というようなことを踏まえてもなお (あるいは踏まえてこそ)、私は、土肥氏は教育委員会とは自ら手を切ってしかるべきだと思います。
喧嘩相手に雇われたいと思い、雇われなかった分の損害賠償せよとは、個人的感覚としては解せません。
投稿: tak | 2012年2月 9日 23:51