雪で傘をさすか、ささないか
京都から帰ってみると、取手駅前は雪である。京都でも少し降ったが、帰る頃にはすっかり晴れていたから、ちょっと驚きである。この分だと、夜中のうちに少し積もるかもしれない。
今日は時間がないので、ごく軽い話題である。それは雪の中を歩くのに、傘をさすかささないかという問題だ。
40年以上前に東京に出てきた時、私は東京の人間がちょっとした雪で傘をさすのを見て驚いた。私の生まれた山形県の酒田では、雪の中を傘さして歩くという習慣がないのである。
で、身についた習慣通りに傘をささずに歩いたら、服がびしょ濡れになった。東京の雪はボタ雪なので、すぐに解けてしまうのである。「なるほど、東京では雪でも傘をささなければいけないんだ」と、初めて納得した。
一方、私の田舎では雪の日には傘をささずに済む。雪の質が違うから、びしょ濡れにならない。しかし実際には、「傘をささずに済む」というよりはむしろ、「傘をさせない」と言った方がいいかもしれない。なにしろ季節風がものすごいので、傘なんかさしたらすぐに壊れてしまうのである。
雪の中を歩いて帰ってきても、玄関を入る前にコートやパーカをポンポンと叩くと、乾いた雪がバサバサ落ちる。服はちっとも濡れていない。しかも、体の片方にしか雪は付いていない。
例えば、自宅から西の方向にある所から帰ってきたら、背中は雪だらけだが、前面はカラカラだ。そう、酒田というところでは、雪は上から降るのではなく、横から吹きつけるのだ。
もっとひどくなると、下から吹き上がる。これがいわゆる「地吹雪」である。酒田というところは、街中で平気でホワイトアウトして、「遭難するんじゃないか」と思うことが、冗談じゃなくあるのだ。
冬山で傘をさす人なんかいないように、酒田では、雪で傘なんかささないのである。そんなわけで、私は今でも、雪の中を歩くのに傘をさすのに、言い知れぬ違和感をおぼえてしまう。
そうしないと濡れるとわかっていても。
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コメント
文末の響きがなんだか文学的に読めて、文系人間としてはにやり。
うっかりと路傍の石に蹴躓いた時、文学的に考える人と力学的に考える人がいるのは、なかなか面白いと思っています。石ころの気持ちだなんて、誰にも分かる筈のないものについて耽りたくなる。
まあ、大体は何とも思わず蹴飛ばしますが。体育会系の人なら、コンディションの悪さに思いを馳せちゃったりして?
話が逸れましたが、北国の人はレインコートも馴染みが薄いのでしょうか。
南国なら馴染んでいるかと言われれば、まあ、そうでもないですけどね ^^ 台風の時の時の買い出しには必要かな…
投稿: 抹茶 | 2012年2月17日 22:37
抹茶 さん:
実のところ、私の田舎では今では、ほとんどの人が車を使うので、レインコートはあまり着ないんじゃないかと思います。
学生諸君も、カジュアルなコートかパーカでしょうね。
投稿: tak | 2012年2月18日 01:58
>冬山で傘をさす人なんかいないように、酒田では、雪で傘なんかささないのである。
なるほどっ! つまりはブリザードなのですね。
地吹雪や雪に傘をささない理由を説明するのに、いつも多くの言葉を使って説明してあまり理解してもらえずガッタリと疲れますが、これだとわかりやすいかも。(^^;)
今年は地吹雪が多く難儀しています。
奇しくも私の今回のエントリーも地吹雪なんですよ。写真見ると「へー」なんですが、実は死ぬ思いをして撮っています・・・。
ちなみに、↑「レインコート」は、東京出張用に持っています。地元では全く使いません。
持っているのは「アノラック」「ヤッケ」「ダウンパーカー」しかもこれらは絶対フード付きでなくてはなりません。(フードの口が窄まるやつです)
冬場に傘なんかさしていたら呆れられてしまいます。
(^_^)v
投稿: 伊藤 | 2012年2月18日 11:25
私は何の疑いもなく雪の日に傘をさす地域で育ったので、アメリカの雪国に住んで初めて「おぉぉ、雪なのに濡れない!」と感動しました。takさんと逆ですね。
こちらでは傘を使う機会は大変少ないです。小雨なら気にせずに歩き、大雨ならなるべく早く車に駆け込むので。大粒の霰なら傘なんて簡単に破れます。夏に日傘をさすこともありません。日本からのおみやげで『晴雨兼用傘』をいただいたのですが、車に積んだままです。
日本の傘は軽くて丈夫でおしゃれですが、そうやって進化するのもやはり傘の登場頻度が高ければこそなのでしょうね。
投稿: emi | 2012年2月18日 18:39
伊藤 さん:
>なるほどっ! つまりはブリザードなのですね。
酒田というところは、フツーに人間が都市生活をしているところとしては、世界最凶のブリザード地帯なんだそうです。
酒田に住んでいると、なかば当たり前みたいに思っていますが、あんなの、冬山なみですよ。
とくに今年の雪は大変みたいですね。
「風の記憶」、拝見しました。
コワイですね。
アイスバーンだけなら、ゆっくり行けばなんとかなりますが、ホワイトアウトしてしまったら、歩くのだってほとんど手探りですからね ^^;)
投稿: tak | 2012年2月18日 20:52
emi さん:
>こちらでは傘を使う機会は大変少ないです。小雨なら気にせずに歩き、大雨ならなるべく早く車に駆け込むので。
日本の田舎でも似たようなものですよ。
でも、日本人は小糠雨ならまだしも、「小雨」になったら傘をさしたがるところが違うかな。
多くの日本人は、雨に濡れると体が溶けてしまうのです。
(と、外国人には説明します ^^;)
>夏に日傘をさすこともありません。
そういえば、米国でパラソルというのを見たことがないですね。
サングラスは欠かさないのに (^o^)
実は、日傘や便座カバーを使いたがるメンタリティは、私にもよくわかりません。
投稿: tak | 2012年2月18日 21:24