文明と文化の違い
文化人類学者の梅棹忠夫氏は、文明と文化の違いについて、「文明は腹の足しになり、文化は心の足しになるもの」とおっしゃったそうだ。なるほど、なんとなくしっくりくる説明である。ならば、現代を生きる我々は、文明と文化のどちらをより必要としているのだろうか。
世界には飢餓に苦しむ人が約 10億人いるといわれる。全世界の人口が 60億人とすれば、飢餓人口はその約 17%に達するわけだ。その一方で、肥満人口は 20億人になるというデータもあり、肥満比率は約 33%となる。なんと、3人に 1人が肥満というのだね。
世界の 6人に 1人は、文明生活に浴しておらず、その倍の数の人たちが文明に浸りすぎている。そして文明自体は、このギャップを解決するに至っていない。単純にみると、世界の 3分の 1の人たちは、自らが享受しすぎている文明の恩恵を、自分たちのおよそ半分しかいない人たちにも分け与える義務があるように思われる。
しかし、ことはそう単純には解決しない。世界のギャップは、文明と文化がうまい具合にミックスされていないから起こるのだ。富は一度偏り始めると、止めどなく偏ってしまう。この偏在を解消するには、文化の力が必要だと思う。
文明は食べても食べても食べ飽きず、一方、文化は足るを知る。「飽食の時代」と言われる物質文明のピークにいるものとしては、そろそろ食い続けることに飽きて、「心の足し」をこれまで以上に求め始めてもいい頃だ。
私は「文明は食い散らかすが、文化はその後始末までできる」と思っている。そして、「心の足し」は、エゴイスティックな発想からは得られない。人間はエンパシー (相手の身になって考える思いやり) という心の働きを、本能的に持っている。
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