法人需要でも「ポスト PC」革命なのだね
Wired の "アップルが先導する「ポスト PC」革命の意味" という記事が興味深い。私は初めの頃、iPad というデバイスはコンシューマー・マーケットで圧倒的な強みを発揮するもので、法人向け需要は、まだまだ PC のものだとばかり思っていた。しかしそれは、私の認識不足だったらしい。この記事の 4ページ目(参照) には、次のような記述がある。
企業が私物の iPad を職場に持ち込む幹部のサポートに追われていたのはつい2年前のことだが、いまではまったく逆の状況になっており、iPad を支給した社員に対して「どうしても必要なら自分のノートパソコンを使ってくれ」と言うような場合も増えているという。
つまり、2年前には企業は社員に PC を 1台ずつ支給してそれを使うように求め、社員が私物の iPad を持ち込むことを快く思っていなかった。しかし最近では PC ではなく iPad を 1台ずつ支給して、それを使うように求め始めた。iPad ではこなせないこみいった作業を、PC でこなしたかったら、私物の PC を使えと言い始めたのである。
私は雇われ社員の立場を離れてもう 8年以上になるので、なんとなく忘れかけていたが、そういえば、前にフツーのオフィスで働いていた時も、PC でなければこなせない込み入った作業をする人なんて、限られていた。
フツーのオフィスワークなんて、簡単な体裁のドキュメントを作成したり、メールの受発信をしたり、ちょっと金額は張るが関数の内容はお小遣い帳か家計簿と変わらないレベルのスプレッドシートを作るぐらいのものだった。よっぽど慣れてきて初めてプレゼンを作成したりするが、それができるのは部署の 3割もいない。
プレゼンテーションの作成を含め、その程度のことなら何も PC を使わなくても iPad で十分だ。ということは、これまでフツーの企業は、コンパクト・カーで十分なドライバーに大出力のスポーツカーを使わせるような無駄遣いをしてきたわけだ。
そしてそれによって、PC の使い方にいつまでも習熟しない社員のサポートために、システム部門の要員がうっとうしい作業を強いられたり、ほんの少し PC 操作の得意な社員が隣のデスクのおっさんの 「ちょっと、表の幅の広げ方教えて」 なんていう初歩的な質問にしょっちゅう悩まされるという、馬鹿馬鹿しい非効率を継続してきたわけである。
なるほど、一般のオフィス・ワーカーこそ、iPad を使えばいいのだ。彼らの多くは、PC でなければできないようなジョブをしているわけじゃないのだ。それにどうせ、両手の人差し指でキーボードを叩いているだけなのだから、ディスプレイに表示されるソフトウェア・キーボードでも、入力が遅くなったなんて感じなくて済むのだ。
さらに法人需要で iPad を使うメリットとして、あまり言われないことだが、アプリケーションの安さが上げられる。MS Office を使ったら、Word、Excel、PowerPoint だけのセットでも 28,000円ぐらいするが、iPad のアプリで揃えると、3つで 3,600円とか、優待システムを利用すると 2,500円ちょっとかで買えたりする。フツーの消費者でも衝動買いできる価格だ。
これだけのメリットがあれば、企業が iPad を導入するのもわかる。PC は本当に必要とする社員にだけ与えればいいのだ。そして、Microsoft が Windows タブレットの展開を始めるといっても、もう既に遅すぎる。企業はそれまで待てない。
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