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2012年4月 2日

日本は「わびさび」の世界でやっていく方がいい

先日、水戸方面での仕事の帰りに 1時間以上車を運転しながらカーラジオを聞いていると、某評論家(とくに名を秘すわけではなく、単に誰だか忘れたので「某」である) が、最近の日本経済の舵取りについて大いに苦言を呈していた。

日本経済の舵取りの失敗は、製造業にこだわりすぎたことなのだそうである。うむ、それについては、私も半分は同感だ。

「半分」というのは、製造業の中身によるということで、同じ製造業でも、日本でなければできない製造業を保持するには、ある程度すそ野だって広くなければならない。問題は、あまり重要でもない、つまり「すそ野」にもならない分野にしがみつく人が、今でも多いことである。

評論家氏のお説に戻ろう。じゃあ、日本はどうすればよかったのかというと、米国や英国のように、新しい産業にシフトすればよかったのだそうだ。英国は金融に、米国は IT にシフトして、経済の低迷から立ち直ったのだから、日本もそうすべきだったのだというのである。

それを聞いて、「おいおい、それはちょっと無責任な指摘だろうよ」と私は思った。金融と IT って、日本人が一番お下手で苦手な分野じゃないか。そもそも、あの「バブル経済」とその後に続く「バブル崩壊」そのものが、日本人が「金融方面へのシフト」に雪崩を打った結果なのだから。

バブル前夜、中小企業の社長連中は、銀行と経営コンサルタントのいうがままに金を借りて株を買い、土地を買い、ゴルフ会員権を買って、数年後にはそれがすべて紙切れになった。そして、それまで健全経営していた会社を潰すことになり、銀行は膨大な不良債権処理に追われた。

つまり、バブル期からバブル崩壊に至る時期に、日本人は慣れない金融に踊りすぎ、大失敗して、徹底的に懲りてしまったのだ。後悔のあまり、「やっぱり額に汗して、地道に働くのが人としての正しい道なのだ」ということになったのである。

つまり、従来の産業ではないニュー・カマーが経済をリードするという構造を確立しようとすると、寄ってたかって潰されたのである。こうした「羮に懲りて膾を吹く」という状態の日本経済に、「金融にシフトしましょう」なんて言っても、聞かれるわけがなかったのである。

某評論家氏の言うもう一つの柱、「IT」にしても、話が発端からおかしかった。そもそも IT というのは、余計なコストをカットして業務を効率化するためのもののはずが、日本の IT 業界は 「遅れてきたバブル」という状態で、要りもしないシステムを企業に押しつけて余計な金を出させようとしたのである。

バブル末期に IT 屋の言うがままに過剰なシステムを導入したおかげで、維持費に四苦八苦している企業経営者が、「もうあいつらの口車には乗らん」と思うのもしかたのないところで、日本の中小企業のほとんどは、IT 活用といえば、PC の最低限の利用にとどまっている。

おまけに、国策として IT 分野に補助金を出そうということになったおかげで、日本の IT 分野は余計な手続きに時間がかかるばかりで、機敏な動きができなくなった。そして単に補助金をもらいさえすればいいという思惑の企業が群がるばかりの世界になったのである。

私なんか、中小企業が本当に使える必要十分でコンパクトなシステムの提供こそが大切と思って、いろいろやったのだが、この「バブリー・イメージ」に邪魔されて、なかなか理解されなかったという経験をもつ。

ちなみに今は、額に汗して滅私奉公するというコンセプトの企業の元気がいいが、その多くは「ブラック企業」かそれに近い内情をもつ。これもまたやりすぎで、ちょっと景気が改善しさえすれば、まず従業員がいなくなるはずだ。

日本はあまり余計なことをせず、しばらくは「わびさび」の世界でやっていく方がいいと、私は思っている。

 

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