北朝鮮の「ミサイル」騒動
北朝鮮が「人工衛星打上げロケット」としながら、北朝鮮以外の国では足並み揃えて「ミサイルだ」と言い立て、発射されてみたらミサイルにもなりきれていなかったことがバレてしまった「アレ」は、本当に一体何だったんだろう?
北朝鮮のキム・ジョンウンとその取り巻き連中は、「アレ」をどのように位置づけていたんだろう。彼らにしてみれば、「ロケット」のような「ミサイル」のような、曰く言い難いものであって、まあ、それなら対外的には「ロケット」ということにしておこうと、そんな思惑だったんだろう。
「ミサイル」じゃありませんよ、あくまで「ロケット」なんですよということにしておいて、まあ、人工衛星の打上げに成功するなんて誰も思っていないけど、その副産物として、ミサイルとしての軍事効果を対外的にアピールできると思っていただろうというのは、言うまでもない。
たまたま、ひょんな幸運からロケットとしての打ち上げまでうまく行ったとしても、積み込んでいた「人工衛星」が軌道にのって作動するはずはないから、あれはダミーもいいところだったんだろう。最もラッキーなケースでの発表予定稿は、「ロケットは成層圏に達したが、人工衛星の切り離しに惜しくも失敗」とかいうものだったに違いない。
ところが、今回の北朝鮮の読みは甘すぎた。ミサイルとしてさえチョー出来損ないで、本来なら「沖縄の基地なんて、十分射程内だぜ」と言える効果を期待していたのだろうが、その遙か手前で空中分解して落っこちてしまった。そこまでひどいものとは、少なくともキム・ジョンウンは聞かされていなかっただろう。
さらに、世界は初めから「ロケットじゃなくてミサイルなので、国連安保理決議違反」と、もろに一方的に決めつけた。もう少し灰色部分が残ると期待していたんだろうが、中国までむかつかせてしまったし、一度決まっていた米国の食糧支援はおじゃんになった。キム・ジョンウンの威信は傷つくし、踏んだり蹴ったりである。
これは、北朝鮮内の情報が無茶苦茶になっていることの現われだろうと想像する。キム・ジョンウンの元には多分、まともな情報が上がってきていないのだ。急な世襲を仕立て上げなければならないどさくさで、まともなことを言ったら粛正されるに決まっているから、誰も本当のことは言えないのだ。彼の周囲は茶坊主ばかりになってしまっているだろう。
だから北朝鮮内の技術屋は、まともに飛ぶかどうかわからないミサイルを、「沖縄の向こうまで確実に飛ばせる」と言い、外交屋は「あくまでロケットと言い続ければ、ウヤムヤのままで切り抜けられる」と進言していたのだろう。下手したら「人工衛星打上げまで成功すれば、スパイ衛星として使える」なんてことまで言っていたかもしれない。
デタラメな情報に踊らされ、超希望的な憶測だけでものごとを進める以外に、引っ込みのつかない状況になっているとしか思われない。それでキム・ジョンウンは、高らかに「ロケット打上げ」を発表し、いつにないほど外国人記者団を招き入れたのだ。そこまでしてしまった以上、「思ったよりヤバそうだから、やっぱり中止」なんてことはできない。
それは案外、戦前の日本にも似た状況だろうと思われる。となると、いつ真珠湾攻撃みたいなことをやらかさないとも限らないが、現代の技術では、戦争準備みたいなことをやったら衛星写真でバレバレになる。
ということは、あの「ロケット」があっという間に落っこちてしまったことは、実は最も幸いなストーリーだったと言えないこともない。「はい、ウチはそこまでの軍事力なんてありませんから、そんなに脅威と思わないでください」 というメッセージになるからだ。もしかしたらあれは、「瀬戸際の計算ずく自爆」だったかもしれない。
下手に沖縄の向こうまで飛んじゃったら、こんなもんじゃ済まなかっただろうし。
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コメント
アレは何だったのか。
発射後まもなく、四分五裂して燃え尽きる。
金日成生誕100周年&金正恩国防委員長就任を奉祝する、「花火」以外の何物でもない……。あえて言うなら「ロケット花火」?
投稿: 山辺響 | 2012年4月16日 09:38
山辺響 さん:
>あえて言うなら「ロケット花火」?
ずいぶん高くついたロケット花火でしたね ^^;)
投稿: tak | 2012年4月16日 21:24
うーん。
彼の国のことだから真相はわかりませんが、もしかしたらジョンウン氏にとっては、成功しても失敗しても良い状況だったのではないかと思います。
成功すれば手柄は立つし、失敗した場合は今後強硬派を抑え込む上で重要なポイントになります。
どこまで現実的な考え方をする人物なのかわかりませんが、後者の方が好ましいシナリオだと思っていたとしても不思議ではありません。直前に米国に歩み寄る姿勢を見せていたこととも整合性があるような気がします。
買いかぶりかなあ?
投稿: きっしー | 2012年4月17日 13:01
きっしー さん:
>成功すれば手柄は立つし、失敗した場合は今後強硬派を抑え込む上で重要なポイントになります。
確かに、強硬派は大分粛正されたようですね。
後世からみると、これは重要なターニングポイントになっていたりして。
投稿: tak | 2012年4月17日 23:55