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2012年4月13日

祇園の暴走事故について

私は 「健康のためなら命も惜しくない」 というパラドックスをよく喩えに出すのだが、京都祇園の暴走事故も、「仕事を続けるためなら命も惜しくない」という心理で運転を続けたことによる悲劇のようだ。

このところてんかんを患っている運転者による死亡事故が、よくニュースになる。交通死亡事故の圧倒的多数は、てんかん患者ではない運転者によるものだとはいえ、明らかな危険が予見可能である以上、重度のてんかん患者には運転免許の交付を行わないなどの措置が必要だろう。

「差別につながる」などの指摘もあるが、それを言ってしまったら、免許交付時の色弱や難聴の検査でさえも問題になりかねない。重度のてんかんは色弱や難聴と同様に自動車運転時の危険につながるのだから、やはり現状以上の対策が必要だろう。

ただし、すべてのてんかん患者が運転免許交付を受けるべきではないと主張しているわけではない。それを言ったら、それこそ差別になってしまう。色弱でも、交通信号の赤・青(緑)・黄の区別がつきさえすれば運転できるし、難聴でもそれほどひどくなければ OK だ。程度問題である。

最近の医療の進歩によって、てんかんも適切な治療を受けてさえいれば、多くはそれほど深刻な発作は出ないとされているので、患者の多くは問題なく運転免許の交付を受けることができるだろう。ただ、これは色弱や難聴の検査のように簡単に調べられないので、自己申告に頼ることになるのが問題だ。

残念ながら今回の祇園の事故では、藤崎容疑者の症状はそれほど軽いものではなかったようだ。通院していた病院は適切な治療をしてきたうえで、「本人と家族に対しては自動車の運転は禁止だと何度も伝えていた」としており、さらに本人の家族も仕事を辞めるように忠告し、母親が区役所に障害者認定について相談したばかりだったという。

しかし当人は、運転免許更新時にもてんかんについての申告をせず、さらに会社にも伝えていなかったようだ。残念なことに、まさに 「仕事を続けるためなら命も惜しくない」 という状態である。今回のような事故では、自分の命だけでなく他人の命も巻き添えにしてしまうのだから、くれぐれも慎重さが求められる。ただ、それはなかなか困難だろうが。

ところで今回の事故に関するニュースで、細かいところにこだわるのが専門の私が最も気になったのは、時事ドットコムの次の記述だ。(参照

同容疑者は 1、2年前からてんかんの発作を起こしていたといい、家族は運転を続けるのであれば会社を辞めるよう忠告していたが、会社側は病気について全く把握していなかったとしている。

「運転を続けるのであれば会社を辞めるよう忠告」というのは、にわかには信じられない。これが本当なら、 「仕事を続けるためなら命も惜しくない」という以上のカオスだ。私としては、記者の筆が滑ったものと信じたい。

 

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コメント

理屈にかなうように解釈するなら、「(今の会社だと業務上)運転を続けるのであれば、(それは危険だから、運転しなくてもいい仕事に就くために)会社を辞めるべきだ」ということになりますかねぇ。

家族は冷静にコメントできる状況ではないでしょうから、「???」と思うような言葉が出てきてしまっても不思議はないと思いますが、記者は、そのコメントがどういう趣旨なのかきちんと確認して書くべきだと思います。

投稿: 山辺響 | 2012年4月13日 17:16

山辺響 さん:

おっしゃるとおりの解釈が妥当だと思います。

記者は家族と同じぐらい混乱していたようですね。

投稿: tak | 2012年4月13日 18:58

いつも楽しく拝見させて頂いております。

今回の事件については、家族・親族側から見たらどうなんでしょう?
「てんかん協会(すいませんうろ覚えです)」みたいから声明も出てる様ですが、人命の方が大事だと思います・・・。

と言ってもおっしゃる様に運転できないなら免職と言う会社側の言い方は、私としては納得できませんが。

投稿: Senna | 2012年4月13日 19:56

Senna さん:

コメントありがとうございます。

>今回の事件については、家族・親族側から見たらどうなんでしょう?

誰の 「家族・親族側」 ですか?
加害者側の? それとも被害者側の?

文脈からすると、被害者側のということのように受け取ってもいいのかなという気もしますが。

>運転できないなら免職と言う会社側の言い方は、私としては納得できませんが。

会社側の言い分がそうだったのかどうかということについては、少なくとも私は確認していません。

加害者側の家族は会社には相談したと言っているようですが、会社側は知らなかったと言っていて、言い分が食い違っているようですね。

投稿: tak | 2012年4月14日 20:47

いつも楽しく拝見しております。

私の文章が言葉足らずだった様で申し訳ありません。
この様な事件が日々多々発生する事は分かっております。
中には運転者のうっかり見落とし等もあるでしょう。
また、病気等が理由の場合もあると思います。

色々なご意見があると思いますが、私としては交通事故を起こしてしまった理由として欲しくない…。
と言うご意見のつもりでした。

なお
>今回の事件については、家族・親族側から見たらどうなんでしょう?

のコメントについてですが、「被害者側」についてのつもりでした。


最後に
今回のコメントについて不愉快な思いをされたのであれば、心より申し訳ないと思います。
大変申し訳ありませんでした。

では、コメント欄での投稿で大変申し訳ありませんが今回はこれで失礼させて頂きます。

投稿: Senna | 2012年4月14日 22:54

Senna さん:

素早い反応、ありがとうございます。

不明な点を確認しただけで、別に不愉快な思いはしていませんから、お気になさらないでくださいね。

投稿: tak | 2012年4月14日 23:54

いつも、本当に楽しく拝見させて頂いております。

温かい返信コメントありがとうございます。
これからも毎日の更新楽しみにしております。

この度は大変申し訳ありませんでした。

投稿: Senna | 2012年4月15日 00:37

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