録音とメモ
私はインタビューした内容を記事原稿にまとめるなんていう仕事もしている。元々は繊維業界紙の記者をしていて、その後も広報関係の仕事を続けていたのだから、記事を書く仕事は 35年以上やっているわけだ。
最近はインタビューするのに、ボイスレコーダーを使う人が結構多いらしい。あるいはスマホで録音なんていう手もあるようだ。手書きのメモを取りながら、確認用に録音もするというケースが一番多いらしい。
しかし私は、ボイスレコーダーやスマホで録音するということは滅多にない。対談や鼎談、あるいは講演会の録音を文字に起こすことはあっても、自分がインタビューするのに録音というのは、まずない。
10年前に、「そろそろ私もボイスレコーダーぐらい持っとく方がいいかも」なんて思って、安物の小さい IC レコーダーを買い、一度使ってみたが、操作が面倒な上に、せっかく録音しても再生して聞くのが面倒なので、結局それっきりになった。
さらに 5年前、「前に買ったボイスレコーダーを使いこなしていないのは、使いにくい機種だったからに違いない」と、いかにも使いやすそうで、簡単に PC にも取り込めるタイプの最新型を買ったのだが、これはもう、一度も使っていない。完全に無駄な投資になってしまっている。
そもそも私は、業界紙の記者という仕事を始めた時、当時の編集長に「テープレコーダーを使って取材するなんていうのは、最低の記者やで」と教わった。「考えてもみぃ、目の前にテープレコーダーをどんと置いて録音されて、本音を話す奴がどこにおる? 本音を聞きたかったら、メモかてポケットの中でするもんや」
さすがに私は、ポケットの中でメモをとるなんていう超絶技巧を身に付けるには至らなかったが、録音なしで超高速メモをとるという技は、しっかりとモノにすることができた。まるで世間話をしているような雰囲気で、要点のみを小さな手帖にさりげなくメモするようにしていると、相手も気楽にいろいろなことをしゃべってくれる。
それに下手に録音なんてことをすると、1時間のインタビューの内容を再現するのに、そのまま 1時間かかる。どうでもいいところを早送りしても、少なくとも 40分以下にはならない。しかしメモだと、10分で再現できるのである。いらちな私としては、録音なんてことはうっとうしくてやってられないのである。
「メモだけだと、相手の発言をよく追えないこともあるから、録音で確認することも必要」なんていう人もいるが、メモでわからないようなところは、録音を聞いてもやっぱりよくわからないのである。だったらメモを取りながら、「えぇと、ちょっと待ってくださいよ。それって、○○が××ってことですか?」と、その場で確認する方がいい。
メモの欠点は、速く書くので、自分で書いた字が自分で読めなくなってしまうことがあることだ。だから、原稿はなるべく記憶の新しいうちに書くに越したことはない。それでちゃんと締切もを守れるという効果もある。
ただ、録音をしておくというのは、記事が出た後で取材先に「俺、そんなこと言うとらん」とごねられた時に、「言うとったやんけ、ほれ!」と証拠を出せるという効果はあるかもしれない。ただ実際問題として、そんなビミョーなことを書くという時には、やっぱりその場でよく確認するものだしね。
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コメント
こんばんは~
tak-shonaiさん私もボイスレコーダーを
4000円で買って
今度の夫の大手術でのお医者様の言葉を入れています。
ところが、肝心なときはわすれて
あっと気がついてスイッチを入れると
がさがさがさがさがさがさという紙をめくる音のみ
だったり。
私の「ありがとうございました~」などと言う無粋な声だったりします。
慣れないものですね。汗
投稿: tokiko | 2012年6月15日 18:48
tokiko さん:
慣れないと、そんなものですね。
その意味では、昔のごっついカセットレコーダーの方が、存在感があるだけ使いやすいかも。
投稿: tak | 2012年6月15日 22:14