スカイマークの「サービス・コンセプト」について
何かと話題の「スカイマーク・サービスコンセプト」だが、どうやら最初のバージョンへの反感が強すぎたせいで、第二版になったようである。
私としては、最初のバージョンでも、機内での苦情は一切受け付けないという項目以外は、「別にこれでいいんじゃないの、安いんだし」と思っていたので、第二版で、「運航に影響が出る可能性がある場合はお受けできません」と改訂されたからには、もうこれで十分と思っている。
「ノン・フリル(サービスなし)」故に実現された低料金ということを理解すれば、余計なサービスを要求する方が無茶というものだ。丁寧なサービスを受けたかったら、それなりの金を払って他社の便を選べばいい。「嫌なら乗らなきゃいい」というのは、テレビ番組を 「嫌なら見なきゃいい」というよりも、ずっとシンプルで説得力のある結論だ。
よく読めばこの「サービス・コンセプト」は、それほどひどいことを言っているわけじゃない。1項目ずつ検証してみようか。
1. お客様の荷物はお客様の責任においてご自身で収納をお願いいたします。収納が困難と思われる荷物はチェックインカウンターにて事前にお預けください。
これは別に無茶な話じゃない。力が弱くて頭の上の棚に上げられなければ、座席の下に入れればいい。どうしようもなかったら、係員に手伝わせなくても、近くの人が手伝えば済む。その方がずっとてきぱきと進むだろう。
不慣れな客がモタモタしていたら、いつまでも放っておいたら離陸できないので、いくらなんでも乗務員が指示してくれるだろう。よっぽど収納が困難なほどの大きさだったら、そもそもゲートインする時のチェックを通らないだろうし。
2. お客様に対しては従来の航空会社の客乗務員のような丁寧な言葉使いを当社客室乗務員に義務付けておりません。客室乗務員の裁量に任せております。安全管理のために時には厳しい口調で注意をさせていただくこともあります。
これに関しては、そもそも JAL や ANA の客室乗務員の言葉遣いは、丁寧すぎて気持ち悪いと、私は常々思っている。あの貼り付けたような笑顔と同様に、不自然きわまりないやりすぎというもので、欧米の航空会社のように素っ気ないぐらいの自然な口の利き方をしてもらう方が、こちらも気楽というものだ。
「CA がタメ口を聞くような飛行機に乗りたくない」 なんていう人もいるようだが、それは極端すぎる反応というものだ。「丁寧すぎる言葉遣い」 と 「タメ口」 の間に選択肢がないってわけじゃあるまいし。
3. 客室乗務員のメイクやヘアスタイルやネイルアート等に関しては 「自由」 にしております。
これに関しても、別にあんなにひっつめ髪にしなくてもいいんじゃないかと常々思っているので、別に気にしない。ネイルアートだって、したけりゃすればいい。
4. 客室乗務員の服装については会社支給のポロシャツまたはウインドブレイカーの着用だけを義務付けており、それ以外は 「自由」 にしております。
JAL や ANA みたいな堅苦しい制服でコストが上昇するよりも、カジュアルにして安上がりにしてくれるなら、それでいいじゃないかと思う。格安航空便を提供する会社としては、当然の運用だ。
私は繊維業界に関わって、ユニフォーム業界についても結構よく知っているので言えるのだが、ユニフォームにかかるコストって半端じゃないのだよ。流通形態の仕組み上、しかたないこととはいえ、制服の値段というのは、「ポリエテル混紡のこれしきのものが、どうしてそんなに高いんだよ!」と言いたくなるほどなのだ。
高校の制服が量販店の同等品質の衣料品の 3倍ぐらい高いのを見ればわかるだろう。格安料金の航空会社が、ポロシャツとウィンドブレイカー程度にとどめておくのは、利口だと思う。それ以外の服まで指定するようなドレスコードを作って、「あとは自費で買え」 というのは酷だろうし。
5. 客室乗務員の私語について苦情を頂くことがありますが、客室乗務員は保安要員として搭乗勤務に就いており接客は補助的なものと位置付けております。お客様に直接関わりのない苦情についてはお受け致しかねます。
「おしゃべりに夢中で、仕事がおろそかになってる」とか、「そもそもうるさい!」とかいうなら話は別だが、多少のことなら私は気にしない。
6. 幼児の泣き声等に関してはご容認をお願いいたします。航空機とは密封された空間でさまざまなお客様が乗っている乗り物であることをご理解の上で搭乗いただきますようお願いします。
赤ん坊の泣き声は本当に迷惑だが、苦情を言って解決するわけでもないので、どうしようもない。理解するしかないだろう。もし機内が満席でなかったら、私なら自主的に離れた席に避難する。
7. 地上係員の説明と異なる内容のことをお願いすることがありますが、そのような場合には客室乗務員の指示に従っていただきます。
これは理解できる。とくに問題ない。
8. 機内での苦情は運航に影響が出る可能性がある場合はお受けできません。ご理解いただけないお客様には定時運航順守のため退出いただきます。ご不満のあるお客様はスカイマークお客様相談センター (03-5708-8235) に連絡されますようお願いいたします。
問題はここなんだろうなあ。「一切受け付けない」という強硬な表現から、上記にモディファイされたわけだが、まだ不満という人もいるようなのだ。実際の運用として、まったく無茶な要求じゃなく、ごく簡単に解決できるようなことだったら、「乗務員の好意として」対応してもらえたら、とてもありがたいと思う。その場合には乗客の方からお礼を言いたい。
この 「サービス・コンセプト」で一番問題なのは、いかにも紋切り型のレトリックであり、これを考えたヤツは文章が下手だなあと思うばかりである。同じ内容でも、「そりゃそうだよなあ。料金が安いんだから、そのくらいは当然だよね」 と思わせられる表現はいくらでもある。
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コメント
まあ、
とにかくクレイマーという人種は
どこにでもいるんですが
ある日の飛行機、
女性なんですが、ひどい女性でした。
ああ、言うのも、思い出すのも嫌です。
私はその女性をなぐってやりたいと思うほどでしたよ。
スチュワーデスさんが、お気の毒で、お気の毒で・・・
ほんと。
投稿: tokiko | 2012年6月18日 14:35
tokiko さん:
よっぽどひどいクレーマーだったんですね。
スカイマークだったら、「退出いただきます」 の一言で済むところでしたね。
投稿: tak | 2012年6月18日 19:57