高いワインは、本当においしいのか?
私はずっと前から 「ワインはさっぱりわからない」 と、正直に公言している。日本酒のテイスティングなら結構自信を持っているのだが、ワインとなると、どんな高いものを飲まされても、そんなにおいしいと思ったことがない。
Wired の "「1,300万円のワイン」 はどんな味がするのか" という、世界で最も高い値段のついたワインの記事には、「人はワインの味を味覚ではなく値段の高低で判断していることを実証した」 という研究成果も、併せて紹介されている。
これは、カリフォルニア工科大学の神経経済学者アントニオ・ランゲル准教授の研究である。同じワインを飲んでも、それが高価なワインだと信じている時には、快感の認識に関わる脳の領域の活動がより活発になるのだそうだ。つまり、「このワインは高いんだよ」 と聞かされたら、それだけで 「おいしい」 と感じてしまうのだ。
この研究チームが、ワインの鑑定家ではない人を対象に、値段を知らせずにブラインド・テイスティングを行った際には、最も値段の安いワインが最もおいしいと報告された。それどころか、ワインのエキスパートと思われるスタンフォード・ワインクラブの人たちに対して同様の実験を行ったときも、結果は同じだったというのだから、ある意味、ひどい。
その辺のスーパーで売られている安物のワインでも、おいしいものは結構おいしい。そして、たまに何かの集まりの流れでちょっとした高級レストランなんかに行ってしまい、奮発して血圧の上がりそうな値段のワインを注文してしまっても、それが値段に釣り合うほどおいしいかといえば、そんな風に感じたことは、はっきり言って一度もない。
私の味覚中枢は、値段に影響を受けにくいのか、あるいは 「ああ、馬鹿なことに無駄金を使ってしまってるな」 というケチな後悔の念の方が先に立って、満足感までぶちこわしてしまうのか。少なくとも私は、値段にごまかされにくいか、あるいは逆に値段に反発してしまうタイプの味覚の持ち主のようなのだ。
ただ、「ワインはさっぱりわからない」 とはいえ、その味の違いまでさっぱりわからないかといえば、そんなことはない。自慢じゃないが私は以前、職場の誰もが 「全然区別がつかない」 と匙を投げた、水道水とエビアンとヴォルヴィックとクリスタルガイザーの目隠しテストで、あっさりとすべて言い当てた男である。
こんなのは私に言わせれば、全然大したことじゃなく、おそらく、庄内のおいしい米と水と魚で育った者なら、当たり前にできるだろう。「こんなに明々白々な違いが、どうしてわからないの?」 という程度のことだ。
だから、味や風味や舌触りやのど越しの違いなどは、ちゃんとわかる。ただワインに関しては、どうしてそんなことでべらぼうなまでの値段の違いがついてしまうのかが、さっぱり理解できないのである。
私の感覚でいうと、フツーに飲んでフツーにおいしいのは、1本 1,000円とか、庶民的な値段のワインである。500円でもおいしいのはおいしい。何しろ、クセがないのだ。一方、やたらと高い値段のワインは、「おいしい」 というより 「個性的」 なのである。簡単にいうと、「ちょっと変」 なのだ。
この 「ちょっと変」 を 「おいしい」 と認められるようになるには、かなり飲み慣れないといけないんだろうと思う。しかし私は、そんなに高いワインを 「飲み慣れる」 まで金を使うことに、あんまり意義を感じられないのだよね。要するに。
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コメント
Perritoというサッポロビールが輸入しているチリワイン(赤白あるが我が家では主に白)を愛飲しています。近所のスーパーで560円です(笑)
そういえば、以前どこかの大学教授がTwitterで「日本で1000円くらいで売られている外国産ワインは現地では100円くらいの安物だから買う意味ない」という趣旨のことを訳知り顔で呟いていましたが、現地で普通に愛飲されているのはそういうワインのようです。
実際、イタリアのリヴォルノという街で友人(日本人)が暮らしているのですが、リッター100円(!)程度のワイン(量り売り)がけっこう美味しくて日常的に飲んでいる、と話していました。
投稿: 山辺響 | 2012年6月29日 14:42
山辺響 さん:
そういえば、20年近く前に勤めていた団体の新年記念講演会に、ソムリエの田崎真也さんをお招きしたことがあり、彼も
「1000円だろうが、500円だろうが、その人にとっておいしければ、おいしいワイン」
とおっしゃっていたのを思い出しました。
世界一のソムリエがそう言ってるんだから、文句あるかってなもんですね。
それにしても、リッター 100円とは、水より安い (^o^)
投稿: tak | 2012年6月29日 16:36
はじめまして。
まのと申します。 いつも 楽しく読ませていただいています。
どうぞよろしくお願いいたします♪
ワインですか~
私 何でも飲みます(笑)
以前は白が好きでしたが 最近は 赤に変更
たしか 芸能人の川島なおみは 私の血液はワインでできていると言ったのに 高いワインと安いワイン 間違えていました
わたしも味覚より 値段聞いて判断しちゃいます(笑) 高価イコール美味しい(笑)
結局 自分にあえば美味しいと言うことなんですよね。
投稿: まの | 2012年6月29日 19:11
まの さん:
>わたしも味覚より 値段聞いて判断しちゃいます(笑) 高価イコール美味しい(笑)
>結局 自分にあえば美味しいと言うことなんですよね。
ということは、高価なものが自分に合うということですか ? (^o^)
投稿: tak | 2012年6月29日 22:16
「値段に反発するタイプ」ってのはいいネーミングですね。
値段にしろ葡萄の種類にしろ、
「情報」ってのは「自分と言う主体」と言う価値基準を、市場の論理によって変質させ易い側面ってあるような気がします。
自分が求める青写真、みたいのがある程度明確じゃないと
情報ってのは「自立」の邪魔になり易い気がしますね、僕は。
投稿: ミギヤマ | 2012年6月29日 22:19
ミギヤマ さん:
>「値段に反発するタイプ」ってのはいいネーミングですね。
さりげなく埋め込んだ地雷を発見してくださいまして、ありがとうございます (^o^)
投稿: tak | 2012年6月29日 23:14
ちちちがいます(;^_^A
投稿: まの | 2012年6月30日 08:17
まの さん:
了解しました (^o^)
投稿: tak | 2012年6月30日 09:44