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2012年7月 4日

何がユニバーサルデザインかは、一概には言えないもの

昨日の「ユニバーサルデザインとバリアフリー」という記事に、山辺響さんがおもしろいコメントを付けてくれた。「確実に人を躓かせる方法」という、ニューヨークの地下鉄の出口にある、途中一段だけ約 1インチ (25.4mm) 高い段が潜んでいる階段のビデオの紹介である。

リンク先に飛んでビデオをみると、「確実に」というわけではないが、本当に多くの人がつまずいている。もんどり打って倒れるわけではないが、思わず手すりをつかんだり前方のステップに手をついたりしてしまうぐらい、明確につまづく人が多い。

つまずかずに昇り切っている人もいないわけではないが、既に何度もつまずいて、この階段のリスクを体で学んだからこそ、問題なくいけるのだろう。それもおそらく 1度や 2度のつまずきでは、しっかりとは学べないだろうと思う。そのくらい微妙な差でつまずくのである。

このビデオでわかるように、人はほんのわずかの段差でつまずくが、目で見て明らかにわかるほどの段差だと、かえってつまずかないものだ。認識しにくい差でつまずくのである。「年を取ると座布団でつまずいて転ぶ」というが、それはまさに実感である。

自分の目より高いところにあるものに頭をぶつけやすいというのも、「認識されにくいものにつまずく」のと同じことだと思う。人は間近にあって自分の目より高いものというのは、見えていないのだ。

自分の目の高さと頭の高さのごくわずかな差の間に存在するものに頭をぶつけるというのは、本当に痛恨だが、生活の場ではこの微妙な高さのところに、頭をぶつけやすいものが案外たくさん配備されているのである。あんまり高いと手が届かなくなって、それはそれで不便なことになるので、しかたがない。

ちなみにニューヨークの地下鉄階段のビデオで、私は庄内空港のエスカレーターのことを思い出した。それは 2年前に書いているので、こちら を参照して頂きたい。

要点だけをいうと、庄内空港のエスカレーターは、老人の転倒事故を防ぐためにものすごくゆっくりしたスピード(通常の 3分の 2 の速さ)に設定されている。それがあまりにトロいために、多くの人は乗ったとたんに前につんのめりそうになる。

停電などで止まっているエスカレーターを昇ろうとすると、止まっているとわかっていても、体ががくっとつんのめりそうになるのを経験した人は多いだろう。あれと似たことが起るのだ。エスカレーターに慣れた人ほど、エスカレーターの標準的なスピードが体に染みついていて、無意識にそれに体の重心移動を合わせようとするので、がくっとなりやすい。

空港側によると、開業してから 13年間に 5件の老人による転倒事故が起きたので、スピードを落としたというのだが、 ほぼ 2年半に 1件の割という事故に懲りて、乗るたびにこけそうになるリスクを、普通の人に強いているわけである。

庄内空港には幸か不幸か昇りエスカレーターしかないが、降りエスカレーターでこんなことをしたら、確実に転げ落ちる事故が続出すると思う。こうなると、ユニバーサル・デザインというのは、本当に一概には言えないものだと思う。

 

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コメント

さっそくネタにしていただいて恐縮です(って、リンク先は私のサイトではないけど)。幼児を抱っこして躓いているお父さん(1分18秒くらい)、本当に危ない…。昇り専用というわけではなくて、動画の50秒、1分11秒、1分19秒あたりに、降りようとしている人の姿もありますね。降りる人は転ばないのかなぁ。

「この動画、やらせじゃないの?」と疑うこともできるかもしれないけど、そうだとしたら、出演の皆さん名演技なので、それを賞賛したいです(笑)

そういえば我が家の近所に、歩道と車道の段差が微妙なところがあって、そこを「降りる」たびに「ドン!」と頭に響くような衝撃を受けてしまうので、最近ではすっかり用心するようになりました(笑) あれは私の身体が予期している段差より低いのか高いのか…。

投稿: 山辺響 | 2012年7月 4日 15:20

山辺響 さん:

ご指摘、ありがとうございます。あとで確認したら、降りる人もいたので訂正しました。

ちなみに階段を降りていて、降りきったと思ったのに実はもう一段あったという時と、その逆に、もう一段あると思ったのに降りきっていたという時、その両方とも「ガツン!」と脳天に響きますね。

投稿: tak | 2012年7月 4日 16:26

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