ユニバーサルデザインとバリアフリー
近頃の住宅建築というのは、ずいぶん進歩したもので、バリアフリーや高気密高断熱なんていうのは当たり前になっている。私の実家は、昨年死んだ父が 7年前に新築したものだが、敷居の出っ張りはないし、冬でも暖かいし、とにかく大したものである。
父は古い家に住んでいた頃は、「冬に風呂に入るのが命がけだ」と言っていたが、それは半分は冗談にしても、残り半分はシリアスな問題だった。ところが新築した家では冬に風呂に入るのが本当に楽だ。この家に引っ越したおかげで、当時寝たきりだった母は、白髪が消えて髪が濃く黒くなったし、顔色がよくなった。多分、寿命が 2年ぐらい伸びたと思う。
当然、家中がバリアフリーで、つまづいて転ぶような出っ張りはどこにもない。今の住宅はそれが当然らしい。ところが、あまりにもバリアフリーすぎる家に住んでいると、つまずくことに関する警戒心がなくなって、外に出かけた時によく転ぶようになるという指摘がある。
バリアフリーの家というのは、本当に体が不自由になってしまった人にはいいが、動ける人にとっては、あまりにも行き届きすぎなのだそうだ。ある程度の段差などは、あった方がいいというのである。その方が体がなまらない。
人間、年取ってつまずきやすくなると、ちょっとしたものにつまずいて転ぶ。座布団につまずいて転んで骨折するなんていうことも珍しくない。ところが、はっきりした段差だと、あまりつまずかない。明確な段差で体を鍛えておく方がいいというのも、もっともな話である。
ユニバーサル・デザインとバリアフリーとは、かなり共通してはいるが、やはり少し違うと思う。それは、CSR(「企業の社会的責任」と訳される) が、昔は「公害を出さなければいい」という意識だったが、今はもっと積極的に環境に対する貢献が求められているのと似ていると思う。
より進んだユニバーサル・デザインというのは、「バリアをなくす」という段階から「人生をより楽しいものにする」という段階に進まなければならないと思う。
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コメント
「ちょっとしたものにつまづいて転ぶ」「ところが、はっきりした段差だと、あまりつまづかない」を読んで、ふむふむと思っていたら、偶然のタイミングですが、こんなのを見つけました。
「確実に人を躓かせる方法」
http://www.monogocoro.jp/2012/06/29/new-york-city-subway-stairs.html
動画を見ている限りでは「確実に」とまでは言えないように思えますが、それでも面白い。
投稿: 山辺響 | 2012年7月 4日 13:40
山辺響 さん:
本当に、かなりつまずきますね。しかも、思わず前方に手をついちゃうぐらいに。
下っているときは、そのステップで足をつく時に少し 「ガツン!」 という感覚があるのかなあ。
関連で、2年前に書いた庄内空港のエスカレーターのとろさを思い出しました。あれも危ないです。
https://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2010/08/post-c2fd.html
それから、あんな風につまずくのを "trip on" というのを、初めて知りました。
これまでは 「旅行、外出」 という名詞としての意味しか知りませんでした。いくつになっても、知らないことというのは多いものですね。
投稿: tak | 2012年7月 4日 14:16