小沢さんのとってつけたような 「正論」
小沢さんがようやくお尻に火がついて、新党結成を公式に表明した。この人、一部では「原理原則にこだわる人」とか「原理主義者」なんて言われているようだが、私には全然理解できない。この人に原理原則があるとしたら、田中派時代からの遺産の「数の論理」だけなんじゃあるまいか。
先月 27日の「政局には付き合いきれない」という記事で私は、「小沢さんの言うことは案外コロコロ変わるし、政策を政局の道具にしているとしか思われないところがある」と書いた。するとその 1週間後、自民党の茂木さんが「小沢さんの言っていることは民主代表時代と 180度違う」と言いだした。日経のウェブサイトから少し引用する (参照)。
茂木氏は小沢元代表が福田康夫首相 (当時) に持ちかけた自民、民主両党の大連立協議を引き合いに「小沢さんから、一緒に消費増税をやろうという話だった。(与野党の)政策協議についても政策そのものについても、今言っていること、言おうとしていることと 180度違うなと思う」と語った。
5年前に消費増税をエサにした大連立構想で自爆した張本人が、今さらとってつけたように「国民の生活が第一だから増税反対」なんて言っても、どうすれば信用できるというのだ。彼にとって「国民の生活」というのは、自分の都合次第で優先度がずいぶん変わるらしい。
「反増税」とセットで言い始めた「反原発」にしても、それが彼の「原理原則」から出たものとは到底思われない。そもそも彼の口から原発をきちんと批判する言葉が出たのを、少なくとも私は聞いたことがない。
昨年の原発事故直後にはひたすら沈黙を守るだけだった男が、大好きな選挙が近づいたとたんに「総選挙は反増税・反原発で戦えば勝てる」と言いだした。これをご都合主義のかけ声と言わずに、何と言えばいいのか。
彼は消費増税に関しては「増税の前にやるべきことがある」という、とてもぼかした言及をした(つまり、5年前はその「やるべきこと」を無視して大連立を構想したわけだ)が、原発再稼働については、「反原発」のかけ声以外に、ぼかした言及すら伝わってこない。こんな具合ではいつ「原発推進」に変わるか、あぶなくてしょうがない。
今月 1日の「小沢さんの賞味期限」という記事に山辺響さんが、今回の一連の動きでの小沢さんの言動について、"あれだけ正論なのに何だか共感できません。「それは正論だけど、あなた以外の人に言ってほしい」という感じ…" とコメントしてくれたが、まさに言い得て妙である。
新党の名称は、せいぜい「小沢商店」にでもすればいい。
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コメント
いつも楽しく拝見させております。
Sennaです。
どうせ選挙勝てませんから…。
記事にするだけ、あの人の思うつぼの様な気もします。なんというか、幼児が泣いて気を引いてるようなそんなイメージですね。
それに言ってる事が正論すぎて逆に気持ち悪い。言えないこと言う政治家の方がまだ信用できる気がします。ま、それが今の●主党とは全く思わないですが。
投稿: Senna | 2012年7月 5日 16:03
Senna さん:
>どうせ選挙勝てませんから…。
そうですね。
(の一言で決着 ^^;)
投稿: tak | 2012年7月 5日 18:05
まあ、おっしゃる通りだとは思いますが…
ただ、長期的に消費税の大幅引き上げが必要という立場であれば、5年前の経済状況なら景気へのインパクトという点からはの躊躇はなかったということなのではないでしょうか。もちろん、その後景気は後退に入るわけだし経済の先行きなんてわからないので、こういうタイミング論はあまり意味がないのですが。
私はもっと大幅な引き上げが不可避なことはわかっているんだから、今回の引き上げは、それを人質にして財務省がいやがる他の改革を抱き合わせにしてやればよかったのにと思っています。その意味で、政局が荒れて今回の法案が廃案にならないかなあと密かに願っています。次回に繰り出すカードがより強力になります。が、それにしても野田さんは胆力が無さすぎです。
投稿: きっしー | 2012年7月 5日 21:17
きっしー さん:
5年前でも、景気の底流はそんなに力強かったというわけではないと思いますし、サブプライムローン問題からリーマンショックにつながる年でもありますが、まあ、こういう話のタイミング論というのは、確かに言われるほどの大きな意味はないと思っています。
野田さんの増税案は、付随するおみやげがあまりにも小さいですね。社会保障との一体改革というのも、なんだか尻つぼみだし。
投稿: tak | 2012年7月 5日 22:26