「いじめ」と「イジリ」、あるいは「虐待」と「しつけ」
大津市の例の事件で、「こりゃ、テレビ・ドラマか!」と言いたくなるほどに、呆れた実態が知られてきている。悪役とそのバックに連なる陰湿な構造という、ものすごく典型的な筋立がうかがわれ、それがあまりにも典型的過ぎるので、現代劇というよりは時代劇のような様相すら呈している。そこに水戸黄門役がまだ登場していないだけだ。
私は近々京都に出張する予定があるのだが、新幹線で大津市内を通過するだけでムカついてしまうだろうと思う。東海道新幹線には「大津」という名の駅がないが、新幹線のレールは大津市内を通っているようなのだ。今この瞬間も、新幹線の中でムカついている人が多いだろう。
この問題では、いじめたとされる生徒の母親が昨年 11月の保護者会で、「アンケートは周りの目撃情報を基に全く関係ない人間が推測で書いた」と主張したと、中日新聞で報道されている。つまり「いじめはなかった」と強弁しているようなのだ(参照)。
さらに未確認情報として、この母親が「(アンケートによっていじめたとされたことで)濡れ衣の息子も被害者」と言ったとか、加害者の一人の親が PTA 会長だった(これが上述発言の本人あるいは夫かは、わからない)とか、うんざりするような話がネット上を飛び交っている。
未確認情報については、取り扱い注意なのであまり深入りしたくないが、加害者とされる同級生が、「いじめではなく、遊びのつもりだった」と言ったことは確認されている。読売新聞の記事に、次のような記述がある。
加害者とされる同級生らに直接確認し、経過も公表していた。いずれの行為も、同級生らは 「いじめではなく、遊びのつもりだった」と否定していたという。
つまり大津市教委は、いじめの当事者の生徒に聞き取り調査をしたものの、「いじめではなく、遊びのつもりだった」なんて厚かましいことを言われて、「あぁ、そうですか」と引き下がったというわけだ。
フツーは「遊びのつもりだった」なんて言われても、「ふざけんじゃねぇ!」となるところだが、大津市のケースではあっさり認められているのである。これが大津警察署が被害届を 3回はねつけたという事実とともに、裏側の陰湿な権力構造をうかがわせる材料になっている。
とはいえ、そこまで行くとまさに取り扱い注意未確認情報の最たるもので、ガセネタである可能性も高い。で、ここで私が問題にしたいのは「いじめではなく、遊びのつもりだった」という加害者の言葉である。これ実は、いじめ問題には付きものの話だ。
いじめられる方は死ぬほど思い詰めているのに、いじめる方は「遊び」のつもりなのである。この認識のギャップが、いじめ問題のなくならない要因の一つだ。いじめる方も、いじめは悪いことと知っているのに、自分のしているのはそこまでいかず、「遊び」なんだと思っているのである。
今回の大津市のケースは、どう言いつくろおうとも「遊び」で済むものではないようで、これは「聞き取り調査では『遊びのつもりだった』と言え」と、大人の入れ知恵があったんじゃないかと、私は疑うのだが、他のケースでは、いじめる側に 「いじめの認識」がないことも結構ある。
世の中には「イジリ」という言葉がある。ジョーク混じりに結構ひどい扱いをすることを、面に関西方面では「イジリ」と言って、「イジられ役」とか「イジられやすい性格」なんていうのがあるらしい。しかし、一方が「イジってるだけ」と思っていても、他方は「いじめられた」と受け取ることが、実は多いのだと思う。
幼児虐待などでも、子供を殺しておいて「しつけのつもりだった」などという親がいる。というか、ニュースをみていると子供を虐待して殺した親のほとんどがそう言う。もっと言えば、「愛のムチ」と「暴力」、さらに「冗談」と「セクハラ」の関係もそんなところがある。当事者同士の認識が一致しないと悲劇になる。
「知って犯す罪と、知らずに犯す罪とでは、知らずに犯す罪の方が重い」という釈尊の言葉は、まさにその通りなのである。これについて私は何度か書いているので、以下を参照頂ければ幸いだ。
「無明」と「罪」
※ いじめや虐待の問題では、心理学的にかなり多くの知見があるのだが、今回は敢えてそこには触れない。つまりこの記事のテーマは、幼児期における愛情への不満とかいう方向には振っていないので、そっちの視点からコメントされたい方は、自分のブログなどで展開していただきたい。
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コメント
こいつら、日本語わからんのか!「いじめ=弱い者をいたぶって楽しむ遊び」やろが!
もいっかい、小学校1年からやりなおせや、ボケ!あんだら!
投稿: 下衆野郎下衆マリオ | 2012年7月 6日 21:35
下衆野郎下衆マリオ さん:
レス不能につき放置。
投稿: tak | 2012年7月 7日 19:52
文責のある情報とそうでない情報の区別しての投稿おつかれさまです。
それにしても、いじめのつもりだったから許される範囲を超えているような事象ではないように思います。加害者保護者がいじめはなかったとしているのも「??」です。
テレビで、大津署と被害者父親のやりとりを録音したものを聞きました。被害届の受理拒否ではなく、被害届をだしても立件は難しいですよと回答していたようです。でも、いつもニュースを見ている感覚からすれば、警察は普通に動くケースであるという印象です。どうしても背後の権力構造や、未確認情報ですが、加害者の身内に警察OBがいるという情報を疑ってしまいます。
そして、本来ならわが子を問いただして、その行動をとがめるべき加害者 の両親が、同様に、罪悪感が欠如しているのではないかと疑っています。
投稿: リア充推進委員会 | 2012年7月 9日 09:14
リア充推進委員会 さん:
レスが遅れて済みません。
これは本当に気の滅入る 「事件」 です。まさにいろいろな要素が絡み合ってとぐろを巻いているという印象です。
こういうケースでは一番すっきりするのが 「水戸黄門の登場」 ですが、現代社会ではなかなかそういうわけにもいきません。
投稿: tak | 2012年7月15日 22:16