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2012年8月 9日

「メビウス」を巡る冒険

タバコの「マイルドセブン」が名称を変更して「メビウス」になると聞き、「へぇ、シャープの登録商標とは、商品分野が違うからかぶらないんだろうなあ」なんて思っていたが、実はスペルも違うんだそうだよ。

マイルドセブンの新しい名称は、メビウスはメビウスでも、スペルが "MEVIUS" なんだそうだ。「何だそれ? そんな単語は見たことも聞いたこともないぞ」と思ったが、それもそのはず、JT の造語で、ロイターの記事によると、こんなことなんだそうだ (参照)。

「メビウス(MEVIUS)」は造語。マイルドセブンの M と S を付け、真ん中に EVOLUTION の EV、I & YOU (U) の IU を入れた。

なんだかもってまわった風な説明だが、要するにカタカナの「メビウス」が先にあって、後から屁理屈を付けただけというのが見え見えである。元々登録してあった複数の商標の中から、良さそうなのをみつくろったんだろう。

タバコの商品名に "mild" や "light" などの言葉を入れてはならないとすることの多い海外での販売強化が、名称変更の目的の一つであるはずなのに、もろにカタカナ発想のネーミングというのは笑える。

ちなみに「メビウスの環」でおなじみのドイツの数学者は、"August Ferdinand Möbius" で、英語でメビウスの環は"Mobius strip" と表記して、発音は 「マビアス・ストリップ」 に近く聞こえる。シャープの「メビウス」は "Mebius" で、これもカタカナ発想。

"MEVIUS" は、音楽グループの "Glay" や、トヨタの箱っぽい形の車 "Voxy" と同じような、カタカナ発想によるテキトーな造語というわけだ。「夜露死苦」の横文字版みたいで、こう言っちゃなんだが、私だったら恥ずかしくてできない。

この関連で、JT の小泉光臣社長が会見で 「現在は、ウィンストンというサブプレミアム価格帯が好調だが、今後のさらなる利益成長を実現するためには、プレミアム価格帯の強化が重要になってくる」 と述べたと伝えられている。

これを聞いて、「あれ、ウィンストンって、アメリカのタバコじゃなかったの?」と思った人もいるだろうが、実はこれ、米国の R.J.レイノルズから商標権を買取った JT が、今は米国以外での販売権をもってるんだそうだ。ウィンストンだけじゃなく、キャメルとかラッキーストライクとか、諸々のブランドがそうなっている。

つまり米国のタバコ会社は、タバコという商品は衰退するものであると、とっくに見切りを付け、ブランドを売り払ってしまったのである。それを喜んで買い取った JT としては、日本のタバコ市場も縮小してきたので、東南アジアなどの海外市場で販売強化しようとしているわけだ。

その昔、「アメリカのタバコ会社は、国内で売れなくなったタバコを日本で売りまくって、健康被害を輸出している」なんて言われたものだが、今や同じことを JT がやっているという構図である。これもかなり恥ずかしい。

 

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