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2012年8月18日

「らくらくスマートフォン」 のパラドックス

先日、近くの家電量販店を覗いたら、「らくらくスマートフォン」なるものが売り出されていたので驚いた。ちょっと触ってみると、多分ベースはアンドロイドなのだろうが、ユーザーインターフェイスは独自の「らくらくっぽい」イメージになっていて、タッチするとビビッと「プッシュ感」がある。

多分、年寄りはあのくらいの確かなプッシュ感がないと、安心してあちこち触りまくれないのかもしれない。ただ、かといって、UI をらくらくっぽく作り替えてプッシュ感さえあれば年寄りにも使いやすいのかといえば、ちょっと疑問だ。

帰宅してネットで調べてみたら、"「パソコン教室わかるとできる」、全国 239教室で 「らくらくスマートフォン F-12D 講座」 を開講" という記事が出てきたので、思わず笑ってしまった。パソコン教室に通わないと使いこなせないようでは、ちっとも 「らくらく」 じゃないじゃないか。

私の周囲には、パソコン教室に通って PC の使い方を習ったという人が何人かいる。そして彼らに共通しているのは、いくらパソコン教室なんかに通っても、ちっともまともに使いこなせていないということだ。パソコン教室に通って PC が得意になったという人に、私は一度も出会ったことがない。

こう言っちゃなんだが、彼らはウェブ・ブラウジングや Google を使った検索、メールの受発信、デジカメで撮った画像の保存なんていう 「基本の基本」ですら、あまりよく理解していない。ましてや Skype とかになると、自分でもできるものとハナから思っていない。

「パソコン教室で、一体何を習ったんですか?」と聞くと、電源の入れ方・切り方、マウス操作の仕方、キーボード操作、お絵かきの仕方等々だそうだ。ああ、その程度のことを授業料払って習おうなんていう発想だから、せっかく PC を買ったのに、いつまで経っても年賀状の宛名すら印刷できないのである。

「この先の人生、どうせそんなに長くないんだから、もう死ぬ前に PC を使いこなすなんて絶望的に無理です。気軽にインターネットをやりたかったら、PC なんてさっさと諦めて iPad にしなさい」と言うと、そのうちの一人がようやく観念して iPad を買ったので、初期設定から連絡先の入力まで、一通りしてあげた。

1ヶ月ぐらいしてから「どうです? iPad、使いこなしてますか?」と聞くと、「いや、せっかく買ったんだけど、慣れたパソコンの方がまだわかるから、全然触ってない」という信じられない答えが返ってきた。ちなみに彼の PC は、Windows XP モデルで、起動するまで 5分以上かかり、さらに IE が起動するまで 1分以上かかるという時代物である。

その時代物をトロいと感じないで済むというレベルで、「慣れたパソコン」なんてよく言えるものだと、ある意味感心した。かくまでに「パソコン教室」で習ったもの以外には、自分で進んで触ってみようという気がないから、ちょこっと触りさえすればおもしろいほどサクサク動く iPad に、手をこまねいているのである。

今度、ちゃんと教えてあげなきゃと思うが、この分野というのは、人に 10教わったら 8つ忘れるのである。ちゃんと自分で調べてトライすれば、1つ調べるうちに 10以上覚えるのだが、教えてあげなければ触ることもできないというのだから、仕方がない。

話は 「らくらくスマートフォン」 に戻るが、ぶっちゃけて言えば、この手の分野で 「らくらく」 でなければ使いこなせないという人は、そもそもスマホなんて要らないのである。せいぜい 「らくらくホン」 で、通話と短いメールさえできればいい。それ以上の機能はあっても宝の持ち腐れにになるだけで、本来はガラケーですら過剰装備だ。

通話とメールがとりあえず苦もなくこなせる人なら、そもそも 「らくらくスマートフォン」 なんてものより iPhone を持つ方がずっと楽しいだろう。楽しければ自分から進んで触ろうとする。そして触っていさえすれば自然に覚えてしまうというのは、PC でもケータイでもスマホでも同じなのだ。

通話とメールだけで苦労しているという人は、そもそもそれだけじゃあまり楽しいはずがないから、自分で進んで触ろうとはしない。触らないから覚えないというのは、これもまた、PC でもケータイでもスマホでも同じことである。

問題は、インターネットをこなしたいと思っているくせに、機器に触るのに気後れするタイプの人である。「車の運転よりずっと簡単だし、操作に失敗しても絶対に死なないから」 と言っても、やっぱり自分から触ろうとはしない。

営業実績は、顧客への訪問頻度に比例するという説がある。同様に、デジタル機器の扱いに慣れるかどうかは、自分から進んで触りまくれるかどうかにかかっている。

 

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