ブロードバンドはもはや生活必需品
Slashdot によると、9月にニューヨークで開催された "UN ソーシャル・グッド・サミット 2012"で発せられた「ブロードバンドは贅沢か、基本的人権か」という問いかけに、「基本的人権」と答えた人が圧倒的に多かったという (参照)。
これは Mashable の Lance Ulanoff 氏が観衆に向けて、挙手による回答を求めたものだったようだが、パネリストとして同席していた ITU 事務総局長の Hamadoun Touré 氏と Ericsson CEO の Hans Vestberg 氏も、「基本的人権」との意見に同調していたそうだ。以下、Slashdot からの引用である。
Touré 氏は、よりよいヘルスケアや教育、持続可能な経済や社会開発を可能にするオンラインの世界に誰もが接続できるようにする必要があると述べ、Vestberg 氏はブロードバンド人口が 10%増えると持続可能な GDP が 1%増えると述べたという。3G以上のモバイルブロードバンド契約者は 10億人を超えており、5年以内に 50億人に達すると予想されているそうだ。
いやはや、この設問、気持ちはわかるが、ちょっと乱暴すぎる気がしないか? 私ならごく慎ましく 「ブロードバンドは贅沢品か、生活必需品か」とでも聞くだろう。「基本的人権」とは、いくらなんでも言い過ぎだ。
と思って本家の元記事を当たってみると、"Is Mobile Broadband a Luxury Or a Human Right?" というのが原文だった(参照)。"Human right" は普通に訳したら 「人権」 であり、「基本的人権」 というのはいささか訳しすぎだろう。ちょっとセンセーショナルな線を狙いすぎだ。
観客の多くは、「ブロードバンドはもはや、決して贅沢品じゃない」という意味合いで、「人としての権利」と答えたに違いない。設問が二者択一なのだから、そうと答える方が、より抵抗が少なかったんだろう。
私は既に、生活していく上での多くの情報をインターネットから得ているし、買い物や移動のためのチケット購入などにインターネットを使っている。これがなかったら、もう今の暮らしは維持できない。
ちょっと前まで、テレビ CM の最後に「詳しくはウェブで」という一言を付け加えると、一部の視聴者から猛烈な反発があったそうだ。「インターネットを使いこなせない視聴者への配慮に欠ける」というわけだ。ところが今となっては、「インターネットは使えて当たり前」になったので、遠慮なく「詳しくはウェブで」がくっつくようになった。
実際には、今でもインターネットを使いこなせない人がいくらでもいるが、そのほとんどはビジネスの現役を終えた人たちである。もし仕事相手にメールもウェブ閲覧もできない人が混じっていたら、不便でしょうがない。お引き取りいただくか、必死に学んで使えるようになってもらうしかない。
その意味でも、Vestberg 氏が主張するように、ブロードバンド人口が 10%増えるごとに持続可能な GDP が 1%増えるというのは、本当のところだと思う。「持続可能な GDP」というのがミソだ。ブロードバンドの活用で、無駄な CO2 排出が、かなり抑えられるだろう。
モノを「モノの形」のままで運んだら、結構な CO2 が排出されるし、時間もかかる。それを重さのないデジタルな情報に還元してやれば、そりゃ電気は使うからまったくゼロにはならないにしろ、環境負荷は格段に減るし、ほぼ一瞬で済む。その意味でも、ブロードバンドは今よりもっと活用されていい。
私は今となっては、ブロードバンドができさえすれば、どんな田舎に住んでもいいと思っている。というより、都会には住みたくない。自然の中でハイタッチな情報に接してさえいられれば、他のかなりの部分はデジタル情報で十分である。
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コメント
確かにネットのつながらない暮らしは不便そうですね
投稿: hiroyuki | 2012年10月23日 20:33
hiroyuki さん:
>確かにネットのつながらない暮らしは不便そうですね
ネットがつながるというだけでなく、ブロードバンドでつながるというのが、重要です。
128kbs 程度では、ストレスで病気になります ^^;)
投稿: tak | 2012年10月24日 11:51