へその生態系は熱帯雨林並みなんだそうだよ
生物多様性の維持は生態系保護の結果であると同時に、生態系そのものを支えるシステムでもある。つまり、生態系は生物多様性によって支えられ、またそれによって生物多様性も維持される。つまり生物多様性の維持は、環境保護の基本なのだ。
熱帯雨林は生物多様性の宝庫といわれる。大は象のような大型ほ乳類から、小は多種多様な微生物、細菌にいたるまで、未発見のものまで含めて、ものすごい生物多様性がみられる。そしてなんと、人間のへそというのは、生物多様性において熱帯雨林とよく似ているというのである。意外なフラクタル。
ナショナルジオグラフィック ニュース によると、ノースカロライナ州立大学・生物学部の Rob Dunn 氏らの生態学者チーム研究の結果、人間のへそは意外なほどの生物多様性に満ちていて、それは熱帯雨林によく似ているとわかったのだそうだ(参照)。なんと我々は、体表面に熱帯雨林的生態系を持っているのである。ちょっと引用してみよう。
調査の結果、60人のへそから 2368種の細菌が見つかり、そのうち 1458種は新発見の可能性があるという。
細菌は少ない人では 29種、多い人では 107種もいたが、平均では約 67種が見つかった。92%の細菌種は、サンプル提供者全体の 10%足らずにしか存在しなかった。これはすなわち、ほとんどの細菌種が 60人中 1人からしか見つからなかったことを意味する。
例えば、あるサイエンスライターからは、これまで日本の土壌でしか発見例のない細菌と思しき種が見つかったが、この人物は日本への渡航歴はなかった。そのほか、数年間へそを洗っていないというかぐわしい人物からは、いわゆる極限環境微生物 2種が見つかった。通常は氷冠や熱水噴出孔などの過酷な環境に生息するものだ。
このように多様性に富んだ細菌が見つかったが、調査結果からは特定の傾向も浮かび上がった。すべての被験者に共通して見つかった菌が 1つもない一方で、8種の菌はサンプル提供者の 70%以上に見つかったのだ。そして見つかった場合、それらは決まって大量に存在した。
この「特定の傾向」というのが、熱帯雨林の特徴とそっくりなんだそうだ。それにしても、人間のへそというのがそれほどまでに生態系的に個性的なものであるとは、ちっとも知らなかった。
日本への渡航歴のない人のへそに、どんなようにして「日本の土壌でしか発見例のない最近と思しき種」が紛れ込んだのか、これは謎というよりロマンというべきだろう。また、「通常は氷冠や熱水噴出孔などの過酷な環境に生息する」細菌をへそに飼っていた人というのは、いったいどんな変わった人なんだろうと、興味は尽きない。
私にしても、普段風呂に入るたびにへそを念入りに洗うなんていう習慣はない。ということは、私のへそにも、かなり変わった細菌が住み着いているかもしれないではないか。調べてもらいたいぐらいのものである。
体に存在する微生物というのは、その人の免疫機能からニキビ、肌の柔らかさにまで影響を及ぼしていると考えられるのだそうだ。そういえば昔は、へそをいじったり洗いすぎたりすると腹痛になるなんていわれていたが、それは単なる俗説ではなく科学的な根拠があるのかもしれない。
我々の免疫機能のいくばくかは、へそに棲息する微生物によって保証されている可能性があるとしたら、あまりきれいに洗い流したりせずに、むしろ 「仲間」 として共存すべきなんだろう。
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コメント
ぼくがパソコンを始めた頃、このサイトをよく見てました
「おざなり」を検索して再び拝見すると
ブログを更新していたことに喜びを感じました
これからも読ませて頂きます
投稿: flyhigh | 2012年11月29日 20:12
flyhigh さん:
再び読んで頂き、うれしく存じます。
末永くよろしくお願いいたします。
投稿: tak | 2012年11月29日 23:42