「泡」 の可能性
今年の 6月 9日に「バイオミミクリーの可能性」という記事を書いた。これは生物を模倣することで、人間の役に立つ製品やシステムを作ろうというもので、有名なところでは、植物のイガがくっついて離れにくいことから発想したベルクロ(マジックテープ)や、カジキマグロの肌を模倣して作った高機能の競泳用水着などがある。
さらに、カニの泡吹きから発想した「フォーム(泡)」というのが、私はこれからの有望株だと思っている。カニの泡吹きは、えら呼吸するカニが空気中の酸素を取り入れるために体の表面に水分を出すのだが、まともに出したのではすぐに自分の体が干からびてしまうので、あのフォームという形で出すのだそうだ。フォームは効率がいいのである。
現在は手洗いの石けん(いわゆる「ハンドソープ」)が開発されている。ハンドソープの多くは、容器に付けられたポンプをプッシュすることによって、液体石けんが手に飛び出すようになっているが、これだと結構無駄が多い。
ショッピングセンターや百貨店などのトイレについている液体石けんの容器は、とくに必要以上の量が飛び出すようになっている。これは、液体石けんを供給する業者が、初回にポンプを無料で設置することが多いのだが、この無料容器のポンプが必要以上の量を噴出させて、液体石けんの売上げが伸びるしかけになっているらしい。
必要以上の液体石けんが手に噴出されると、いかにもきれいに洗えるような「気分」になるが、それはあくまでも単なる「気分」であって、石けんの量と洗浄効果が比例するわけではない。そしてその必要以上の石けん分を洗い流すのに、水道代まで余計にかかる上に、積もり積もって浄水場にも負担がかかる。
泡工房という業者によると、ハンドソープをフォーム状で出るようにすると、液体石けん購入のコストが通常のメソッドより 50%以上節約できるという(参照)。さらに水道料も節約できるだろうし、環境負荷削減の効果も大きい。
ハンドソープだけではない。洗顔用フォームだっていいだろう。最近は女性の間で、ネットで泡立てるタイプのものが流行っているらしいが、初めからフォームで出てくれば朝の忙しい時間に助かる。
それから、日焼け止めクリームなんかはもっといいだろうと思うのである。今の日焼け止めは、伸びが悪くて塗りにくいが、フォームタイプにすれば塗りやすくなるだろう。これは機能との両立のためにいろいろと開発のハードルもあるだろうが、金をかけてやってみる価値はある。
「泡」の可能性は、泡と消えるようなものじゃないように思うのである。
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コメント
日焼け止めはナイス・アイデアですね。
あの「延ばす」という面倒な作業がだいぶ減るような気がします。
一方、昔は整髪剤でムースをよく使いましたが、最近はジェルを使っています。なんでなのか、自分でもよくわかりません…
投稿: きっしー | 2012年11月13日 19:31
きっしー さん:
日焼けしないための層を作るという目的との両立には、技術的にちょっと難しい点があるかもしれませんが、作ってもらいたいところですね。
整髪料に関しては、シャンプーにフォームタイプで出てくるのがない (あるいは極端に少ない) ことからみても、馴染みが悪いのかもしれませんね。
投稿: tak | 2012年11月13日 20:50
俺もハンドソープは泡のやつを使ってます(๑╹ω╹๑ )
投稿: hiroyuki | 2012年11月14日 00:12
hiroyuki さん:
私は実は、伝統的な固形石けんです (^o^)
投稿: tak | 2012年11月14日 00:51