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2012年12月18日

小選挙区制が日本の現状に合わないわけが見えてきた

私はこれまで、小選挙区制というのは「おおむね OK」だと思ってきた。二大政党による政権交代を容易にし、同じ政党が長期にわたって政権を担当することによる弊害を阻止できることは、かなり重要なメリットだと認識してきた。

自分が生まれた直後からほぼ 60年にわたって続いた、事実上の自民党一党支配による政治的な堕落に、リアルタイムで付き合ってきた者にとっては、政権交代が行われにくい選挙システムというのは、それだけでアウトだ。小選挙区制というのは問題はあるにせよ、ベターな選択だと思ってきたのである。

ところが、最近はこの考えに疑問を抱き始めた。前から小選挙区制を支持しなかった人にしてみれば、「何を今さら」ということになるかもしれないが、今の日本の状況では、小選挙区制がうまく機能しにくいということが見えてきたと思う。

というのは、ここ 3回連続で極端な結果が出すぎているからだ。前々回の「小泉郵政選挙」から始まって、「民主党による政権交代」「今回の揺り戻し」と、決まって第一党が 300議席前後の「どうみても取りすぎ」という結果になっている。

米国の大統領選挙のようにたった一人を選ぶのなら、勝った者が総取りするシステムで問題ないが、何百人かを選ぶ議会選挙選挙で、こんなにもその時々のムードで極端な結果になってしまうというのは、ちょっと危ない。

考えてみれば小選挙区制がうまく機能する社会というのは、大抵の選挙民にとって、その立場や土地柄や社会的地位などにより、別に深く考えたり迷ったりしなくても、自ずから支持政党がはっきりと決まりやすい社会だ。

米国でも英国でも、大抵の人が支持政党を明確に意識していて、選挙の度に大きく揺れ動くということはない。だから選挙結果にも、それほど極端な揺れ戻しは現われない。

ところが日本においては、半数以上の人が「支持政党なし」なんて呑気なことを言える政治風土がずっと続いているのだ。個々の選挙民の利害を明確に代弁してくれる政党がはっきりしないから、その時々の風向きに流される浮動票が、やたらと多い。

そのために近頃はとみに、選挙の度に極端な結果となって現われる。つまり政権交代の容易さは保証されたが、薬が効きすぎて、それ以上の不安定要因が増大してしまったわけだ。

各人が明確な支持政党をもたないという現状は、小選挙区制を基本としたシステムを是とする視点からは、「選挙民の意識があまりにも未成熟」 と映る。これでは小選挙区制はまともに機能せず、不安定要因だけが拡大する。

「だったら選挙民の意識を成熟させればいい」なんていっても、それは急には無理なことだ。そもそも小選挙区制がうまく機能する社会が「成熟した社会」なのかといえば、それは甚だ疑問で、「成熟させろ」なんていう主張はある意味傲慢ですらある。

一方、小選挙区制を非とする視点からは、「日本に合った中選挙区制に戻せ」とか「比例代表制を拡大しろ」とかいう主張が出てくる。しかし、あの派閥の親分によるぐちゃぐちゃにとぐろをまいたような体制になりやすい中選挙区制に戻るのは、私としてはゴメンである。

あるいは比例代表制を拡大したら、確かに選挙民の意向は忠実に反映されるだろうが、ただでさえ「半数以上が支持政党なし」という特殊な現状なのだから、「一時的な風向きが忠実に反映されたからといって、それでどうなる?」ということになる。

「じゃあ、どうしたらいいんだ」と言われても、こればかりは明確な結論なんて言えない。私としては「政治とは面倒なものだよなあ」と、ため息をつくばかりである。

 

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コメント

極端でしたよね┐(´д`)┌ヤレヤレ

投稿: hiroyuki | 2012年12月18日 21:49

hiroyuki さん:

私は、選挙結果が実際の得票率に尾ひれを付けたようにちょっとだけ誇張された議席数として現われることは、いいことだと思っています。

そうでなければ、何も変わりませんから。

しかし、それにしても最近は極端すぎですね。お天気もそうですが。

投稿: tak | 2012年12月19日 00:17

どんな制度にも長所と短所がある。
私は、
衆議院は完全小選挙区制、参議院は全部比例、
が良いと思う。
現行は、足して2で割る典型だ。

p.s.
大選挙区制(定員5なら1有権者5票)も考えたい。

投稿: McC | 2012年12月19日 14:45

McC さん:

>衆議院は完全小選挙区制、参議院は全部比例、
>が良いと思う。

う~ん、ただでさえ極端な結果になりやすいところにもってきて、完全小選挙区制ですか。

投稿: tak | 2012年12月19日 16:05

違憲状態の区割りの変更も含め、現状、小選挙区300、比例代表180の配分を半々くらいにしてはどうでしょう。

投稿: clark | 2012年12月19日 21:37

 比例代表というのは、A党が提示する味噌も糞もごったにした名簿に投票することになり、私には耐えられません。
 私の属する選挙区は前回も自民党が勝った保守的な田舎ですが、小選挙区選挙の第1回で共産党の候補者が当選した全国唯二の内の一つです。その候補者は中選挙区のときから時にはトップ当選するほど自民党支持者からも支持されていました。結局、選挙は人物という見本のような人ですね。
 だから、私は中選挙区で一人が定員数の投票権を持つ制度を支持します。一人で自民党にも共産党にも候補者次第で投票できます。政党も定員の数だけ心置きなく候補者を擁立できます。派閥の数だけ擁立してもよいでしょう。喧嘩にはなりません。
 松原仁は良いけど、あいつは民主党だからなあ。という人も心置きなく投票できるし、本当はA党から出たいけど選挙区事情でB党からでているというような候補者もいなくなり、政界再編もやりやすいでしょう。
 投票は候補者名をあらかじめ印刷し上のチェックボックスに印するようにすれば、機械で読み取ることができて開票もスムーズにできると思われます。

投稿: basara10 | 2012年12月20日 04:22

>ただでさえ極端な結果になりやすいところにもってきて、完全小選挙区制ですか。

決められる政治と言ってください。
参議院はチェック機能が主任務で、極端を抑える役を担う。
両院がそれぞれの目的のために、選挙制度も独自のものに、変える必要があると思います。

投稿: McC | 2012年12月20日 11:50

clark さん:

議員の数が多すぎるという意見がありますが、私はこのくらいでいいと思っています。

人口が 1億2000万人もいる国ですから、決して多くないでしょうし、あんまり少ないと、組閣する時に人がいなくなっちゃう ^^;)
(まあ、議員以外からの登用も OK なので、その方がいいといえばいえるかもしれませんが、一応議院内閣制ではあるので)

投稿: tak | 2012年12月21日 09:49

basara10 さん:

>比例代表というのは、A党が提示する味噌も糞もごったにした名簿に投票することになり、私には耐えられません。

その気持ち、わかります。
とくに「なんでお前が?」と言いたくなるようなスポーツ選手が入ってたりすると、萎えますね。

>だから、私は中選挙区で一人が定員数の投票権を持つ制度を支持します。

このご意見、案外多いんですね。
「当選させたくない候補者にマイナス票を投じる」というアイデアよりは、可能性はあるでしょうけど。

ただ、例えば定数 2 の選挙区で、1人にしか投票しない人と 2人に投票する人があるでしょう。

また、定数 2 の選挙区では 1人が 2人にしか投票できないのに、定数 3 の選挙区では 1人が 3人に投票できるということになります。

そうなると、「1票の重み」 ならぬ 「有権者 1人の重み」 をが問題になって、またぞろ面倒な議論になりそうな気がします。

投稿: tak | 2012年12月21日 09:57

McC さん:

>参議院はチェック機能が主任務で、極端を抑える役を担う。

衆議院で与党が 3分の 2 以上の場合は、単なる 「チェック機能」に終わりますね。

投稿: tak | 2012年12月21日 10:06

>衆議院で与党が 3分の 2 以上の場合は、

かつては、「3分の 2 」は途方もないハードルでした。
選挙制度を変える、とは大変なことなのですね。

投稿: McC | 2012年12月21日 23:38

McC さん:

まさにそう思います。

投稿: tak | 2012年12月21日 23:48

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