予防接種と、その意義の説明
インフルエンザ・ワクチンの予防接種をする人が案外多いらしい。自らの意志で医者に行って打ってもらうんだから、大したものだ。予防接種をすると、感染しにくいとか、感染しても発病しにくいとか、たとえ発病しても軽く済むとか、いろいろなことが言われる。しかし私なんか医者嫌いだから、好んで接種したいとは思わないのだよね。
「感染しても、寝てりゃ治るから」なんて言って予防接種を嫌がっていると、「それは自分勝手な態度で、ウィルスをまき散らしことによる他人への感染を防ぐためにも、予防接種はするべきだ」なんて、殺し文句的なことを言う人もいる。しかしよく考えれば、予防接種をしても、他に感染させるリスクって変わらないんじゃないかと思うんだがなあ。
実際のところは、予防接種しても感染しないというわけじゃなく、ウィルスが体内(血液内)に入った時点での免疫効果を高める効果があるということのようだ。だったら、注射しようがしまいが、呼吸器(鼻とか喉とか)の段階で感染して、そのウィルスを他にまき散らすことはあり得るだろう。
むしろ発病しなかったり症状が軽く済んだりする分だけ、あちこち出歩いちゃったら、逆効果なんじゃあるまいか。そのあたり、少なくともまともに説明してもらったことがない。
いや、今日はインフルエンザ・ワクチンに対する疑念を述べるのが主眼というわけじゃない。私が言いたかったのは、「いろんなことを、まともに説明してもらった経験って、少ないよなあ」ということだ。例えば小学校でいろんな予防注射をさせられたが、その度にきちんとした説明を受けたことってない。
まさに小学校の頃は、何だか知らないが突然体育館に移動させられて一列に並ばされ、順番に注射された。その注射が何の意味があるのか、まともに説明してもらったことなんてない。
だから、私としては小学校時代に、納得して予防注射されたという経験が一度もない。後になって渡される集金袋の明細欄に「○○予防接種代」とか書いてあるので、「ああ、そういうことだったのかな」と思うばかりだった。
「子供に説明しても理解できるはずがない」なんて思っているのだとしたら、大変な間違いで、ずいぶん馬鹿にした話である。逆に、説明もなく痛い注射をされることによる不信感の方がずっと問題だ。私はそれに関して、今でも腹立たしい記憶がある。
それは幼稚園時代にまで遡る。当時は結核予防に関連してツベルクリン注射というものがあって、その結果が陽性反応だったらいいのだが、陰性反応だと、結核菌を薄めた BCG 注射というのをされ、免疫をつけるというシステムが実施されていた。
そもそもツベルクリン注射をされるのさえ嫌なのに、2~3日してその注射の痕をもっともらしく調べられる。これに関しては何の説明もなく、問答無用である。私は幼稚園の年少の時に陰性反応だったらしい。回りの友達の多くは陽性だったようで、あっさりと放免されているのに、私は別の列に並ばされ、いかにも痛そうな注射を打たれそうになった。
しかしこれが、前述の如く事前に何の説明もないのだから、幼稚園児だった私としては、納得いかないのも無理はない。何で自分だけ注射されなければいけないのだ。頭にかっと血が上った私は、幼稚園中逃げた。逃げて逃げて逃げまくったが、ついに掴まって、抵抗虚しく無理矢理 BCG 注射を打たれた。
私は何が何でも注射が嫌だったわけではない。新たな注射をしなければならない理由を、きちんと説明されたなら、私は子供心にも嫌々ながら受け入れただろう。それが問答無用なのだから、幼稚園というのはよくよく理不尽なところだと、不信感ばかりが残った。幼稚園の先生の言うことなんか、金輪際聞くものかと思った。
似たような経験は、自動車教習所でもある。車庫入れや縦列駐車などの実技の練習で、それがどういう意味があるのか、何の役に立つのか、全然説明なしで、いきなり 「あの狭いところにバックで入れ」 なんて言われるのである。そんなことだから、運転免許を取得しても、車庫入れをバックですることの意味をわかっていない人が案外多い。
私は自分で調べ、「車は後輪差というのがあるので、カーブを曲がる時には頭を大袈裟に振るものである。その大袈裟に振らなければならない頭を先に狭いスペースに入れてしまっては、出入りしにくい」とわかって、初めて納得した。同じ説明をしてあげて、「ああ、そうか、それでわざわざバックで入るのか」と、初めて納得する人は、少なくない。
職人の修行でも、親方は何の説明もしてくれず、ただ「先輩のやることを見て盗んで覚えろ」というのがスタンダードらしい。しかし私の知人の宮大工は、自分の子供にしっかりと技術の基礎とその意義を説明して練習させた。すると、「職人の世界では 10年かかるといわれる技術を、3年かからず習得できた」と言う。
最初にしっかりとその意義を説明し、納得させたら、不信感は消えるし、スキルの習得だって格段に速いのである。だって、自分の習得する技術の意義とそのゴールがしっかりわかったら、そこに到達するために必要な工夫をするもの。
平均的日本人は結局、説明するのがものすごく下手くそなのだ。だから、つい説明がすっ飛ばされてしまう。そして説明してもらえないから、自分なりの工夫もしにくい。状況ごとにきちんと説明するというメソッドを確立したら、日本の教育はかなり水準の高いものになるだろうに。
今日はインフルエンザの予防接種の話からずいぶん広がってしまったが、こうした 「そういえば、そういえば」でとりとめもないほど広げて行く思考メソッドというのは、時としてなかなか有効な場合がある。
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コメント
俺は偽陽性でした´ω`)ノドモ
投稿: hiroyuki | 2012年12月 6日 21:06
ツベルクリン反応はいつも陰性でした。他の子達は注射したところが500円玉大に赤くなるのに、私のは直径5mmほど、友達がうらやましくてなりませんでした。そのあと恐怖のBCG注射が待っていました。注射の痛いったらありゃしない。毎年BCG の季節が憂鬱でしたね。なんの注射か全く知りませんでした。理由を話してくれたらもう少し恐怖心が薄れたかも。
投稿: ハマッコー | 2012年12月 7日 00:39
ワタシは初めて8年前子供を授かりましたが、予防接種の説明は親でさえしてもらってませぬ。しかも受けるか受けないかの確認さえありません。なんと任意だそうじゃないですか・・・しかも受けないと、虐待と疑われて電話がかかってくるとか。でも新しいワクチンは自分らが実験対象なもの。オソロシイと思ってしまいます・・・
投稿: こりす | 2012年12月 7日 06:56
hiroyuki さん:
そういえば、偽陽性ってのもありましたね。
BCG しなきゃいけないんだっけかな?
投稿: tak | 2012年12月 7日 21:24
ハマッコー さん:
やっぱり、問答無用でしたか。
ありゃ、一種の虐待ですよね。
投稿: tak | 2012年12月 7日 21:25
こりす さん
21世紀になっても、そんな状態ですか。
驚きです。
投稿: tak | 2012年12月 7日 21:27