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2013年1月29日

パスワード騒動

最近つくづく思うのだが、パソコンの取り扱いが昔と比べてずいぶん簡単になった。今は外部デバイスとの接続が大概 USB で行けるので、昔のように SCSI カードや PCI カードを差し込んでやる必要もない。ありがたいことである。

SCSI とか PCI とか言っても、Windows XP 以後のユーザーの多くは、何のことだかわからないだろう。昔はキーボード、マウス、ディスプレイ以外の接続はほとんど、パソコン本体のネジを外して、スロットに大袈裟なカードを差し込んで、そこからつないでやらなければならなかったのだ。

さらにインターネットではなく「パソコン通信」が主流だった時代には、添付ファイルを送ることもできなかったから、データ・ファイルやプログラムを送る時には、「バイナリ・メール」という形式で送ってやらなければならなかった。

最初にテキスト・メールで「これからバイナリを送るから、よろしく」と断っておいて、次におもむろにバイナリで、データやプログラムを送る。その頃のパソコン・ユーザーは、そのあたりのことがしっかりわかっていたから、それで戸惑うことはほとんどなかった。

ほんの簡単なことで戸惑うユーザーが増えたのは、皮肉なことにパソコン回りが簡単になってからのことである。「何でこんなことがわからないんだ?」と呆れるほどの単純なことで、ひいひい言う中高年ユーザーが増えた。

彼らは、MS-DOS や Widows 3.1 あたりの時代には、決してパソコンに手を触れなかった人たちである。Windows XP ぐらいの時代になって、ようやく「パソコンぐらいはできないといけないかな」とつぶやきつつ大袈裟なタワー型を購入し、手をこまねいているのは、この世代である。

そんなようなおっさんから、夜になってヘルプを求める電話が入って来ると、それはもう最悪である。彼らは自分がどの操作でトラブっているのかすら説明できないのだ。

「あのぅ、ウチのパソコンのパスワードって、何でしたっけ?」
(「そんなの、俺に聞いてもわかるわけないだろう」と思いつつ)「パソコンで何をする時のパスワードですか?」
「メールする時のです」

彼らの「メールする」という言い回しは、かなりアブナい。彼らはインターネット関連の操作は、おしなべて「メールする」と言い表したがるのだ。

「メールする時は、いちいちパスワードなんか入れなくてもいいように設定してあげましたよね。昨日私が送った、〇〇会のお知らせ、読めますか?」
「はい、読めますよ」
「じゃあ、出欠の返事を送ってみて下さい」

しばらくして「出席します」との返事が届く。これで、彼がわからないで困っているのは「パソコンでメールする時のパスワード」じゃないということがはっきりした。じゃあ、何のパスワードなんだ? 特定に手間がかかりそうだぞ。

「パスワード入力を求められたのは、何をしようとした時ですか?」
「だから、メールです」
「メールはたった今、問題なくできましたよね」
「いや、娘のメールなんです」
「娘さんのメールをチェックしたいんですか? それは、いくら親子でもやめといたほうがいいですよ。それに、娘さんのメールのパスワードなんて、私が知ってるわけないでしょ」
「いえ、実は娘が泊まりに来てまして、iPad でメールしたいっていうんですけど、パスワードを入れないとできないみたいでして……」
「それって、娘さんの iPad ですか?」
「そうです」

これで、彼の娘さんが彼の家の Wifi ルーターに接続する時のパスワードがわからなくて騒いでいるのだと、ようやく判明した。

「そのパスワードなら、Wifi ルーターの横っ腹かどこかに貼られた紙に書いてあるはずですよ」
「わいふぁいるーたーって、何ですか?」
「ほら、こないだ無線 LAN でインターネットできるようにするために、設定してあげたでしょ。あの小さなアンテナが付いてて、緑色の光が付いてるやつ」
「ああ、あれね。そうだったんですか。やってみます」

しばらくして、また電話がかかってくる。

「わいふぁいるーたーの横っ腹に貼られた紙に書いてあるパスワードを、何度入力してもメールできないって言うんです」
「おかしいなあ、どんなパスワードですか?」
「私の誕生日をパスワードにしてるんですけどね」
「誕生日ぃ!? ルーターのパスワードがそんなもののはずないでしょ!」

よく聞いてみると、自分のメール・アカウントのパスワードを、ポストイットでルーターの横っ腹に貼ってあるのだった。ふむふむ、あり得ないことじゃないが、メールのパスワードをルーターに貼り付けてどうするというのだ。いや、こんなことではめげないぞ。かなり脱力してしまってたけど。

「自分で貼った紙じゃなくて、その機械に元々貼ってあるのを見てください!」

これでようやく彼の娘さんの iPad はインターネットに接続できたのであった。ああ、疲れた。

 

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コメント

拓明さんが FaceBook をやってらっしゃるとは初めて知りました。
とりあえず、「いいね!」しました。
(σ´∀`)σオゥイェ

投稿: hiroyuki | 2013年1月29日 22:50

hiroyuki さん:

ありがとうございます。

投稿: tak | 2013年1月30日 00:59

あぁ、面白かった。抱腹絶倒。

--------------
先日、友人と skype で会話をしていたら、相手から送られてくる内蔵カメラの画像がどんどん暗くなって、仕舞いには、お凸しか見えなくなってきました。

「おかしいよ、T社のサポートデスクに電話して聞いてみたら」

そこで友人はT社に電話、私は skype 経由で一部始終を聞いていました。

T社のサポートデスクの担当者に機種名を告げ、

友:「skype で会話中に相手に送られる画像が暗くて顔の表情が殆ど見えない状態なんですけど」

T社:「プリンターとかカメラのことは当社ではわからないんですけど」

「えっ、カメラですよ、カメラ、内蔵カメラの読み取り画像が暗いんですよ」

「あ、その場合は Fn キ-を押しながら、F8 キーを押してください」

「それって、ディスプレイの画面が明るくなっただけじゃないですか。内蔵カメラの読み取り画像が暗いと言ってるんですよ」

「それでは、パソコンを隣の部屋へ持っていってください」

「えっ、何のために隣の部屋に持っていくんですか?」

「環境を変える変えるためです。それをやってみて結果をまた電話してください」

「環境って何のことですか? 隣の部屋へもっていって何が変るんですか?」

「 …… 」

「隣の部屋へもっていく理由を教えてよ」

「……」

「だからさ、あなたがその理由を説明できないのに、隣の部屋にもって行けっておかしいでしょ」

「無線LAN の環境が変ります」

「何を言ってるの。無線LAN の環境と内蔵カメラの読み取り濃度は全く関係ないでしょ。分からなければ、分かる人に代わりなさい。」

「では、後ほど他のものから電話させます」

その後、男性社員から電話がかかってきて、キーの操作をして内蔵カメラのリセットをし、あっという間に解決。

要約しましたがここまでで15分かかってます。

メーカーのサポートデスクもこの程度です。こういうところへパソコンに不慣れなおじさんが電話したら一時間かかっても終わりませんね。

こういうやり取りが日本中で行われてるわけです。
こういう人件費のコストは積み上がると、とてつもない金額になりますね。


投稿: ハマッコー | 2013年1月30日 02:39

本記事にも思い切りうなずきましたが、ハマッコーさんのサポートデスクの話も、まさに実体験あります。

以前使っていたDELLのインクジェットプリンタで年賀状を出力しようとしたところ、ある程度以上の画質で印刷しようとするとなぜか途中で切れてしまい、エラーメッセージも出ない。サポートデスクに電話したところ、「画質を下げてください」の答えしか返ってこない。たかだか葉書サイズで最高画質出せないプリンタって何…。

電話を切って、「ある程度以上のデータがちゃんと送られていないってことは、プリンタスプーラとか、データのバッファの問題だなぁ」と思って、設定のかなり奥の方からそれらしきものを探して、何とか解決。

けっこう面倒だったので、「確かにこれは素人さんには難しいかも」と思いましたが……あれ?(笑)

投稿: 山辺響 | 2013年1月30日 11:42

ハマッコー さん:

これまた、すごいですね。
内蔵カメラって、本体内のゴチャゴチャの影響を受けるんでしょうかね。

ところで、前に聞いたサポートデスクの上手な応答ってのをご披露します。

「キーボードを打っても反応しなくなっちゃったんですが」
「それでは、そのキーボードを持ってください」
「持ちました」
「そのまま後ろに 5メートル下がって下さい」
「下がりました」
「線がはずれてますので、差し込んで下さい」

これは、プロだなあと思いました (^o^)

投稿: tak | 2013年1月30日 13:43

山辺響 さん:

サポートデスクってのも、頼りにならないものですね。

ベテラン・ユーザーの方がよくわかってるということで、知り合いに頼りがちというのも、理解できました ^^;)

投稿: tak | 2013年1月30日 13:51

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