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2013年1月30日

「アベノミクス」 で考える

安倍新政権の支持率が、発足 1ヶ月後にしてアップしているんだそうだ。共同通信の調査では、発足直後の昨年末の数字から 4.7ポイント増の 66.7%、日本経済新聞では 6ポイント増の 68%。フジテレビ系の調査だと、先週から 6.8ポイント増の 68.2%だったという (参照)。

日本の内閣というのは、発足直後にいわゆる「ご祝儀相場」というやつで結構な支持率を得るが、その後にどんどんメッキが剥がれたように下がっていくというのが、いつものパターンである。政権発足 1ヶ月後にアップするというのは異例なんだそうだよ。

この支持率アップの要因というのが、「アベノミクス」と呼ばれる経済政策が、早くも一応の成果を上げているように見えるということのようなのである。あの「デフレと円高からの脱却、2%のインフレ目標」などと言われているやつだ。人間というのは、よほどカネに釣られるものらしい。

「一応の成果を上げているように見える」ということだが、確実に数字として表れているのは、「円高からの脱却」だけである。確かにこれまでの円高基調は、素人目からしても行き過ぎだったから、少しは円安方向に振れてもしかるべきところだった。

ところが、現在の日本は貿易赤字の状態にある。つまり輸出よりも輸入の方が多いのだ。だから急に円安になると、輸出企業にとってはメリットがあるが、消費市場にはマイナスにはたらくということも見過ごしてはならないだろう。

とくにガソリンや灯油などは、円高で輸入メリットが増してもなかなか値下げにはならないのに、今回のように円安に振れると 「輸入価格が上がった」 とやらで、すぐに末端価格に反映される。ガソリンなどは既に、全国平均でリッター 150円以上になっている。

こうなると、いろいろな消費物価の上昇に反映される。2%の物価上昇なんて、あっという間かもしれない。ところがこの物価上昇は、円安という外的要因からくるもので、需要の増大によるものじゃないから、経済規模が膨らむということではない。下手すると、「物価は上がりました、収入は変わりません」ということになりかねない。

とまあ、心配事をあげればきりがないが、はっきり言って、経済がこれからどうなるかなんて、実際のところは誰もわからない。これまでいろいろな経済学者が自信たっぷりに発表した経済予測が、人によってバラバラで、それが当たったり外れたりということを目の当たりにしてきた。要するに、「経済は天気予報以上にわからないもの」というしかない。

ある程度は楽観的に構えていないと、市場なんていうのは気分で動くものだから、ますます低迷する。かといって、あまり浮かれるとすぐにバブルになる。というわけで、どうせわからないなら、一喜一憂せずに呑気にやっていけばいいだろうと、私なんかは思っているのである。

ただ、これまで通りの「経済は拡大しなければならない」という思い込みだけは避けたいと思っている。私は一昨日の「正しく現実を知れば、失望ではなく感謝につながる」という記事で、「ほとんどの失望というのは、見当違いの甘えや過剰な期待の産物」と書いたが、経済にも同じようなことが言えると思うのである。

「経済は拡大しなければならない」なんていうのは、幻想にすぎない。これからの世の中、経済なんて停滞して当然と思うぐらいでないといけない。中国みたいに急に発展しすぎて、なおかつその成長を維持しようなんて欲をかいたら、世の中のシステム自体が追いつかないし、地球環境だってもたない。

私の毎度のメタファーであるが、「健康のためには命も惜しくない」というのがナンセンスならば、「経済のためなら地球環境も惜しくない」というのも同様にナンセンスなのである。つつましく暮らそうじゃないか。

 

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