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2013年1月 2日

「実業団」を英語でいうと?

元旦の昼頃、ラジオのスイッチを入れると、実業団対抗駅伝の実況だった。それでずいぶん昔のことを思い出した。といっても、昔駅伝を走っていたというわけではない。「実業団」という言葉に絡む記憶がよみがえったのである。

10年ぐらい前、ある実業団スポーツ団体のウェブサイト作成を依頼された。私のところみたいな超零細企業に依頼するぐらいだから、かなりマイナーな団体で、資金も豊富ではない。「できるだけ安く仕上げてください」という話だった。

私としてはその依頼にできる限りの誠意をもって対応したつもりだったのだが、それでも資金が続かなくなって、そのウェブサイトは 2年もたなかった。最近になってものすごく簡単な作りのウェブサイトが復活したようだが、「現在、まともな活動ができません ということしか読み取れない内容である。

私がそのサイト作成を依頼された時、「ついでに団体の英文名称を作ってください」なんてことも頼まれた。英語とはいえ、部外者に団体の名称を考えさせるなんて、ずいぶん乱暴な話である。とくに「全日本実業団○○連盟」などの「日本独特ローカル・ルール」みたいな類は、しっくりくるような英語に訳すのが難しい。

なにしろ普通の和英辞書で「実業団」なんて言葉を調べても、その項目が見つからないのである。

多分、英語の世界のスポーツにはプロフェッショナルとアマチュアの区別しかなく、しかもアマチュアは学校と、企業とは関係のないクラブ・チームがリードするという考え方が主流で、学校を出た選手が企業に雇われて、フツーの給料をもらいながら仕事とスポーツをこなすなんていうのは、案外特殊なことなんじゃあるまいか。

企業としてはそのスポーツが強くなって全国ネットにのるような活躍をしてくれれば安い広告料なのだろうが、最近のように景気が悪くなると撤退が相次いで、淋しい限りのことになる。

とくにマイナー・スポーツになると、会社からのスポンサーシップなんてものもほとんどなく、単に社内の自主的同好会みたいなものでしかないというケースも多いようだ。企業にしてみれば、いくら身内とはいえ単なる同好会にまとまった金を出すより、プロ・スポーツのスポンサーシップを取る方が実質的な宣伝効果があるだろう。

というわけで、「全日本実業団○○連盟」の英文名称を考えるというのは、なかなか難しいことだった。Wikipedia によると、「実業団」という日本語に対応する英語は "works team" または "factory team" なのだそうだ。なるほど、英語の Wikipedia で "works team" というのを調べると、次のようにある。(参照

A works team (sometimes factory team) is a sports team that is financed and run by a manufacturer or other business. Sometimes, works teams contain or are entirely made up of employees of the supporting company.

(日本語訳: 「ワークス・チーム」(時に 「ファクトリー・チーム」)は、製造業者などの企業の資金によって運営されるスポーツ・チーム。ワークス・チームは支援企業の社員を含むか、あるいは完全にその社員だけで構成される。

試しに他の実業団スポーツ団体はどんなふうにしているのかと調べてみると、主なところはこんな感じである。

日本実業団陸上競技連合
Japan Industrial Track and Field Association

日本実業団バスケットボール連盟
Japan Industrial and Commercial Basketball Federation

日本実業団バレーボール連盟
Japan Volleyball Federation of Industries

うーん、ちょっと苦しい気がする。どれも産業的にスポーツをやっているというニュアンスではないか。ちなみに「日本実業団バレーボール連盟」というのはあの「V リーグ」の当事者ではなく、今どき珍しい 9人制バレーの団体のようだ。実業団においては、マイナー美学の追求という道もあるようなのだ。

他をあたると、「全日本実業団自転車競技連盟」なんかは、英訳する際に「実業団」なんていう日本独特の概念はスッパリと切り捨てて、"Japan Bicyclist Club Federation" で済ませている。この方がずっと潔しという気がする。ここは企業からの補助にあまり期待していないんだろうか。

さらに潔いのが 「日本実業団バドミントン連盟」で、"Nippon Jitsugyodan Badminton Renmmei" と、「バドミントン」以外はすべてローマ字で済ませている。なかなかの気合いだが、気合いが良すぎるという気もする。これじゃ、アルファベットで表記する意味がない。

私としては結局、"All Japan Works Team Federation of ○○" に落ち着くという気がするが、ただこれだと、「プロじゃない」 ということが強調できない弱みがある。でも、日本だってラグビーの「トップリーグ」やバレーボールの「V リーグ」なんかは、かなりプロに近いグレーゾーンだしね。

 

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コメント

あけましておめでとうございます。
Works teamというのは、例えばバイクのレースで、あまたいるプライベートチームに混ざってホンダ等のバイクメーカーが自らやっているチームというようなニュアンスだと理解していたのですが、どうなんでしょうか。
バレーボールのボールを製造する企業のチームなら、この概念でもワークスチームってことになるんでしょうけど。
ところで、実業団とか社会人のチームや選手って、本当にアマチュアと呼んで良いのでしょうかね。特に、スポーツ専業みたいな人は。

投稿: きっしー | 2013年1月 3日 16:42

きっしー さん:

>Works teamというのは、例えばバイクのレースで、あまたいるプライベートチームに混ざってホンダ等のバイクメーカーが自らやっているチームというようなニュアンスだと理解していたのですが、どうなんでしょうか。

実は私もそう思っていたんですが、Wikipedia の 「実業団」の項に次のようにありました。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%9F%E6%A5%AD%E5%9B%A3

>日本語で「ワークス・チーム」というと、本業と密接に関わる分野における企業チーム、特にモータースポーツにおける自動車・オートバイメーカーの運営するチーム (factory-backed) を指す。

そして、英語の Works team の項には、チームの例としてサッカーやらラグビーが挙げられているので、考え直した次第です。

投稿: tak | 2013年1月 3日 17:48

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