「死ぬならがんに限る」というのは、本当のようだ
相変わらず葬式に出席することが多い。平均すると月に 2回以上は、黒いスーツに黒いネクタイを締めて香典を持っていくということになっている。
先日も知人が 70歳で亡くなった。彼は昨年の冬から食欲がなくなり、春に病院で検査を受けたところ、末期の胃がんが見つかった。余命 3ヶ月と言われたが、10ヶ月生きて痛みもなく、亡くなる 3日前まで杖を突きながらとはいえ自分の脚で歩き、最期は自宅のベッドで妻と娘に看取られ、安らかに息を引き取った。
自宅で死ぬと警察が入って大変なことになるから、病院で死ぬ方が面倒がないといわれるが、彼の場合はかかりつけの医師が往診して死亡診断書を書いてくれたので、何の問題もなかった。
彼は胃がんと診断されてから抗がん剤による治療を受けたが、それによる副作用がひどく、「がんで死ぬ前に抗がん剤で殺されるのはまっぴらだ」と、一切の治療を断った。医者からは副作用の穏やかな治療をするとの申し出があったが、「どうせいずれは死ぬのだから、苦しむ期間を延ばすだけの治療は要らない」と、自宅でのんびりと暮らした。
病院からは何度か治療の申し出があったが、「もう結構です。これは自己責任ですから」ときっぱりと断り、病院のベッドで副作用に苦しむよりも、自宅で好きなことをして最期を迎えることを選んだのだった。「もう少し世の中の役に立ちたかったところだが、仕方がない。死ぬのは少しも恐くない」と、さばさばしたものだった。
その間、精神世界の本を読みあさり、税金関係の申告を済ませ、身辺の始末を済ませた。かなり前から食が細り、死ぬ 3日前からは何も食べていなかったので、体の中には未消化物が何もなく、きれいなものだった。まったく始末のいい人である。
最近読んだ、『大往生したけりゃ医療とかかわるな』 (幻冬舎新書 中村仁一・著) という本には、「死ぬのは『がん』に限る。ただし、治療はせずに」と書いてある。Amazon のページにあるこの本の紹介は、こんな感じだ。
3人に 1人はがんで死ぬといわれているが、医者の手にかからずに死ねる人はごくわずか。
中でもがんは治療をしなければ痛まないのに医者や家族に治療を勧められ、拷問のような苦しみを味わった挙句、やっと息を引きとれる人が大半だ。
現役医師である著者の持論は、「死ぬのはがんに限る」。
実際に最後まで点滴注射も酸素吸入もいっさいしない数百例の「自然死」を見届けてきた。
なぜ子孫を残す役目を終えたら、「がん死」 がお勧めなのか。
自分の死に時を自分で決めることを提案した、画期的な書。
70歳での死は、ちょっと早すぎるという気もするが、がんで死ぬ死に方のお手本を見せてもらったような気がする。見事な最期だった。
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コメント
うーむ…(゚ー゚;
投稿: hiroyuki | 2013年2月 4日 21:01
私の場合は、まだ年齢的に(今年39歳)自分の死というものを具体的にイメージする機会はありませんが、やはり親世代が老いてきたのを見ていると、少しではありますが、わかるような気がします。
投稿: もりけん | 2013年2月 4日 21:58
「しっかりと死んでみせる」という見本ですね。心の中で“さらば”と呟いていたんじゃないでしょうか。
日々を大切に生きていたからこその「技」ですね。
投稿: ハマッコー | 2013年2月 5日 02:56
アンドロイドスマホを使ってほぼ50日、毎日格闘し、IT -literacy が向上したと錯覚している自分がいます。
本当は iphone でテザリングしたかったんですが、総合的なコストを考慮して、えいやっとアンドロイドにしてしまいました。説明書なんてほぼ何も書いてなくて、勝手に使えよといわんばかりです。弄ってるうちにPINロックがかかってしまい、肝心なPUK がどこにも記載されていなく、キャリアに問い合わせてもすぐに回答がない、待つこと二時間半、やっとロックが解除できました。
こりゃ、殆どの人は無理だわと思いました。サポートデスクはてんてこ舞いだと想像できます。
投稿: ハマッコー | 2013年2月 5日 03:31
アンドロイドスマホの件、投稿先を一日間違えてしまいました。お許しください。
投稿: ハマッコー | 2013年2月 5日 03:36
ワタシは二十のとき先輩が胃がんで亡くなった様を見てたので、がん治療に対する恐怖が強いです。抗がん治療もそうですが、体が順に弱っていってるのに入院中は規定通りのカロリーなど点滴しちゃうので、うまく死ねないというのは変な表現ですが、ワタシががんになったら点滴も嫌だと思うようになりました。入院するのが家族にとっては楽なような気がしてるんですけど、死ぬときだけでも、家族に手伝ってもらって、この方のように楽に行きたいですね~。というわけで、往診してくれる代替医療をしてくれる病院は押さえておきました!(笑)
投稿: こりす | 2013年2月 5日 08:38
もりけん さん:
一度できてしまった制度や組織を壊すのは簡単ではないのと同じように、一度できてしまった、できるだけ生かすのが医療の務めという固定観念を壊すのは大変です。
やっぱり本人がはっきり意思表示しておかないと、いざという時になって、苦痛を長引かせるだけの延命治療をされてしまいがちです。
投稿: tak | 2013年2月 5日 22:34
ハマッコー さん:
アンドロイド・スマホの件、了解です。
投稿: tak | 2013年2月 5日 22:36
こりす さん:
救急車を呼んで病院に担ぎ込んでしまうと、それからは大変なことになるようです。
見極めが肝心ですね。
投稿: tak | 2013年2月 5日 22:38