中途半端な「丸刈り」がお詫びのシルシにならない理由
例の「丸刈り謝罪」の話がまだ世間で話題になっていて、あちこちで議論になっていることに驚く。何だかんだといいながら、日本は平和だ。
かくいう私も今月 5日に "AKB の「異界度」" という記事を書いたのだが、書きながらなんとなく気が晴れなかった。彼女たちの「異界度」とは別の違和感が、どうしても拭いきれなかったのである。ところが昨日、その違和感の正体がふとしたはずみでわかったので、ここに書いておく。
私の覚えた違和感とは、「丸刈りで謝罪」という言い回しだったのである。そもそものことを言えば、「丸刈りになって詫びる」などという言い回しはない。「丸刈り」なんていうのは、単にそこら中で見られるヘアスタイルの一種でしかなく、謝罪のシンボルにはなり得ない。
じゃあどうすればいいのかと言えば、「坊主頭になって詫びる」のである。「剃髪」、つまり「刈る」のではなく「剃る」のである。スキンヘッドになることだ。そのまた本来のことを言えば、不面目なことや残念なことをしてしまった後に、その代償として仏門に入るというのが、オリジナルの精神である。本当に「坊主になる」のである。
この件に関して米国の CNN などは「体面を失って名誉を回復しようとする武士のよう」などと、いっぱしの文化論的論評を加えている。しかし本来の武士道精神からといえば、合戦などで心ならずも命を取ってしまった敵方の武将の菩提を弔うために仏門に入るなどというのが、最も典型的なモデルであって、「自ら対面を失う」というのは二義的なことだ。
熊谷直実は源平合戦で、平清盛の息子である敦盛の命を取るという武功を立てたが、若く、教養にもあふれた武将の命を無惨に取ってしまったことで耐え難い世の無常を感じ、仏門に入って敦盛の菩提を弔い続けたといわれる(参照)。このエピソードは日本人の心の琴線に触れるものとして語り継がれ、能にまでなっている(参照)。
つまり元々の意味は、すべての世俗的欲望を捨て去って仏門に入り、心ならずも犯してしまった業を悔い改め、関係者の菩提を弔うということなのである。もっとも実際には、そう簡単に仏門に入るわけにもいかないから、「世俗的欲望を捨て去って、しばらく謹慎します」という決意の象徴として、頭を丸めるということが行われるようになった。
ということは、お詫びのために頭を丸めるということは、単なる「丸刈り」ではなく、「剃髪」つまり、スキンヘッドにまでならなければいけないのである。ところが、昨今の「お詫びのシルシとしての丸刈り」というのは、あまりにも中途半端だ。あれではお詫びにならない。
振り返ると、不祥事を起こしたスポーツ選手や芸能人が頭を丸めたというケースがかなりあったが、そのニュース画像を見るたびに私は、「この程度の丸刈りだったら、そこら中にいるじゃん。ちっともお詫びのシルシになってないじゃん」と思ったものだ。
最近では ボクシングの亀田大毅、野球の二岡智宏 のケースがある。やっぱりここはスキンヘッドにまでならないと、お詫びにはならない。
「坊主になって反省するのは男だけで、女にはそんな習慣はない」という指摘もあるが、そんなことはない。女だって剃髪して尼さんになることがいくらでもあった。峰岸みなみという子は、頭の丸め方が中途半端すぎてモロに貧相になってしまったが、思いっきりスキンヘッドにしてしまえば、いっそかっこよかったかもしれないのに。
もっとも、前に "「世間の空気」と一体化している人" という記事で書いたように、彼らの「謝罪」ということ自体もずいぶん不思議な行為であるわけで、そこまで考えるといろいろなことがナンセンスすぎて、付き合いきれないことになるわけだが。
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コメント
なるほど剃髪かー(´・_・`)
投稿: hiroyuki | 2013年2月11日 00:08
いつも楽しく拝見させていただいてます
この件をあまり詳しくは知らないので、見当違いでしたらごめんなさい。
何にせよ、前以てやっちゃダメって言われていた約束を破ったのだから、今更何を言ってもダメって大人は教えてあげないといけないのではないかと僕は思います。頭を丸めるならカツラをかぶってステージに出るのではなく、元の長さに戻るまで、表舞台に出ない覚悟が必要なのではないかと僕は感じてならないのです。
投稿: わさび | 2013年2月11日 08:47
いつも拝見させていただき、幅広い知識とシャープなものの見方に感銘を受けています。
すでに指摘が入ってるかもしれませんが、亀田興毅の例はちょい違いますね。
興毅は元から丸刈りで、リンク先の丸刈り謝罪したのは次男の大毅です。(今は伸ばしてるはず)
投稿: k2 | 2013年2月11日 11:06
hiroyuki さん:
剃髪です (キッパリ)
投稿: tak | 2013年2月11日 16:01
わさび さん:
>何にせよ、前以てやっちゃダメって言われていた約束を破ったのだから、今更何を言ってもダメって大人は教えてあげないといけないのではないかと僕は思います。
まあ確かに、いろいろ面倒見て、ギャラも出して、歌や踊りのレッスンもしてあげて、いっちょまえにしてあげるという、いわば契約なので、「その代わり、恋愛禁止ね!」という事項に制限されるのを承知で加わったのですから、約束事といえばいえますがね。
ただ、そうした約束事がものすごく重要視されちゃうところが、「異界」と思ってしまうんですよね。
>頭を丸めるならカツラをかぶってステージに出るのではなく、元の長さに戻るまで、表舞台に出ない覚悟が必要なのではないかと僕は感じてならないのです。
それに関して言えば、その通りだと思います。
投稿: tak | 2013年2月11日 16:05
k2 さん:
ありゃ、確かに亀田興毅というのは、私の早とちりでした。
さっそく修正させていただきます。
ご指摘、ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。
投稿: tak | 2013年2月11日 16:06
AKBって海外進出も考えてるのでしたよね、歌って踊れてだけに特化した。
秋元さんはブリトニー・スピアーズをめざしているのでしょうかね。
投稿: BEKAO | 2013年2月13日 12:45
BEKAO さん:
アジア圏でならいけるでしょうが、欧米ではダメでしょうね。
投稿: tak | 2013年2月13日 18:38