TPP と、中国を見据えたパワーバランスの問題
政府は 15日の記者会見で、TPP 交渉の席に着くことを正式に表明した。
私としても TPP はかなり微妙な問題と思っているので、あまり正面切って語ろうという気にならず、一昨年 11月の「TPP 交渉のごたごた」という記事以外では、積極的な言及を避けてきた。結構ずるく振舞ってきたのである。
この記事の中で私は、当時の野田首相がホワイトハウスに表明したという条件と、それを受けたホワイトハウス側の解釈が全然違ってしまっていることを切り口として、これまたずるいことに、かなり遠回しなことを言っている。
穏便な調整型の野田さんと、言辞を(あえて恣意的に)ストレートに解釈したホワイトハウス側の「言語感覚」(あるいは「言語戦略」?)の違いを問題にしたのだ。そこへ行くと今回の安倍さんは、もちろん周到な事前ネゴをしたのだろうが、結構ストレートに意志を伝えたようだ。
安倍さんのいう「聖域」がいつまで聖域であり続けるのか、保証の限りではないので、ヤバイ要素はまだまだいくらでもあるが、今回は前の野田さんの時とは違って、少しはまともなコミュニケーションになったようだ。
TPP について原則的なことを言えば、私は参加することには賛成の立場である。一昨年 11月の「ずるい記事」でも、「(交渉のテーブルに着く前の段階で、既にボコボコにパンチを食らい始めているが)だからといって TPP に参加するのが間違いだとは言えない」と、最低限の態度表明はしている。(我ながらずるいレトリックではあるが)
参加することによるデメリットもいろいろと語られていて、それぞれもっともな指摘もあるにはあるのだが、それでも大局的に見ると、TPP という枠組みに参加しておかないと、後々でやっかいなことになるだろうと思うのである。
一番気になるのが、環太平洋地域で TPP による経済的結びつきを強固にしておかないと、中国主導で別の経済圏が東南アジアに出現し、うっとうしいほど強い存在感を発揮してしまう可能性があるということだ。
全然目立たないけれど、TPP と並んで進められようとしているプログラムに RCEP(東アジア地域包括的経済連携)というのがあり、中国はこっちの方で影響力を発揮したい様子なのだ。これは何も中国が言い出しっぺというわけではなく、日本だって関わっているのだが、中国としては行きがかり上、RCEP で主導権を取って TPP に対抗するしかない。
となると、TPP に日本が初期の段階からある程度の影響力をもって参加するというのは、何も日本一国だけの都合で損だとか得だとかいう以上に、東アジア、環太平洋地域のパワー・バランスをも左右する問題になるはずなのだ。
そんなわけで私としては、中国の影響がやたら強い経済圏で暮らすよりも、いろいろと問題はあるだろうが、TPP の中で暮らす方が、少しは気分が良さそうだと思っているのである。
それならば、当初は TPP 不参加の立場を取っていて、後になってから 「中国は嫌だから、やっぱりこっちの方に入れて下さい」 なんて頭を下げるより、始めから日本の主張を盛り込んだ TPP にしていく方が得策である。そのためにも、日本が苦手な外交的ネゴシエーションの訓練にもなるぐらいのつもりで、交渉にも早いうちに参加した方がいい。
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コメント
なんとなく…確かに…
(´・ω・`)ショボーン
投稿: ひろゆき | 2013年3月16日 15:28
私はこのニュースに接するたびに、幕末の攘夷派と開国派の対立を思い出すんですよね…^^;
世界のパワーバランスから言っても、日本の立ち位置なんて、キャスチングボードも握れないでしょうから、とにかく早いうちから、会議に顔くらいは出して、いろいろ言っておいてもらいたいと思っていました。
とはいえ、こういう交渉事は日本はとりわけ下手ですから、メジャーリーグ選手の代理人のように、アメリカ人のプロの交渉人なんかを雇って、やってもらったらいいと思うのですが…(笑)
投稿: もりけん | 2013年3月16日 22:59
ひろゆき さん:
私としても、「何となく」という段階から抜けきっているわけではないので、大いばりで主張しづらいところです ^^;)
投稿: tak | 2013年3月17日 13:41
もりけん さん:
>私はこのニュースに接するたびに、幕末の攘夷派と開国派の対立を思い出すんですよね…^^;
こういう図式を持ち出すと、TPP 賛成派は大抵、「日本は今でも 2国間 FTA などで十分に経済を開放しているから、鎖国状態なわけじゃない」 と言いますが、周囲が統合的な経済圏を確立してしまったら、相対的に鎖国状態に近寄ってしまいますよね。
>とにかく早いうちから、会議に顔くらいは出して、いろいろ言っておいてもらいたいと思っていました。
会議に顔を出して、「あんまりひどかったら、土壇場でケツまくるぞ」 ぐらいの態度をうっすら見せるぐらいはするべきでしょうね (^o^)
>メジャーリーグ選手の代理人のように、アメリカ人のプロの交渉人なんかを雇って、やってもらったらいいと思うのですが…(笑)
それはちょっと…… (^o^)
世界の笑い者になりそうなので、極秘裏にコンサルしてもらうぐらいにしたいところです。
投稿: tak | 2013年3月17日 14:19
報道によれば、すでにどのような内容が合意されているかは6月だか7月だかに実際に協議に参加するまで分からず(いろいろ諜報活動は頑張っているものと信じたいですが)、すでに合意されている内容については後発の参加国=日本が覆すことはできない、という条件のようで……。
まぁひいき目に見ても価格の高い福袋的な買い物かな、と思っています>TPP
投稿: 山辺響 | 2013年3月18日 17:21
山辺響 さん:
>すでに合意されている内容については後発の参加国=日本が覆すことはできない、という条件のようで……。
この辺りが日本の踏ん切りの悪さのツケで、「聖域」がどこまで聖域になるのかわからないところですね。
投稿: tak | 2013年3月19日 01:38