ソースで天ぷらを食う人たちは、鉄板系コナモンも好き
一昨日の 「ソースで天ぷらを食う文化」の続編である。ソースで天ぷらを食うという文化圏は、フォッサマグナより西に、あまりにもきれいに集中しているが、日経の「食べ物新日本奇行」を見ていて、この傾向は「鉄板系コナモン」(つまり、「お好み焼き」とか) を好む地域の傾向とかなり似かよっていることを発見した。
直リンク不能なので、スクリーンプリントして下に転載させていただく。
一昨日の「ソースで天ぷら」の地図とよく似ていることに気付かれるだろう。ソースで天ぷらを食う文化圏というのは、鉄板系コナモン、つまりお好み焼きを好む文化圏とものすごく共通しているのだ。
鉄板系コナモンとソースは、ほぼ不可分の関係である。ということは、ざっくりと言ってしまうと、お好み焼きが好きな人たちが、ソースで天ぷらを食うのである。
ちなみに上記のページで詳細を辿ると、大阪府では「鉄板系コナモンがなかったら生きていけない」という回答が 34%もあった。「大好き」の 46%を加えたら、80%となり、さらに「まあ好き」の 16%を加えれば、96%に達する。この回答には大阪独特の「ノリ」も加わって増幅されているのかもしれないが、いずれにしても圧倒的な人気だ。
昨日の記事で私に「西日本では、天ぷらはソースをかけて食べるんですわ」と教えてくれた大阪在住のカメラマンなどは、昼飯はほとんど毎日うどん、週に 1度以上は家族でお好み焼き屋にでかけ、家庭にあるたこ焼き器で、しょっちゅうたこ焼きを作る。「ボクの体の 8割はコナでできてますから」というぐらいのものである。
翻って、私の生まれた山形県を含む東北地方は、お好み焼きに冷淡な文化圏である。青森県で「なくてもいい」と思われている以外は、「どうでもいい」という態度だ。「どうでもいい」というのは「嫌い」というよりずっと冷淡な態度である。つまり、まともに意識すらしていないのだ。
私の故郷である山形県は、北隣の秋田県と並んで「お好み焼き不毛の地」と言われていて、お好み焼き屋が極端に少ない。県庁所在地の山形市にはいくつかあるみたいだが、私の生まれた酒田市でお好み焼き屋を探そうとしても、なかなか見つからないだろう。少なくとも私が酒田にいた昭和 40年代までは、1軒もなかった。
山形県は人口当たりのラーメン消費量は日本一らしいが、同じ小麦粉系でも、鉄板で焼いてソースをジョバジョバかけるものには、ものすごく冷淡なのだ。私はカップラーメンは年に 5~6回は食べるが、カップ焼きそばは、遙か昔に試しに 1度だけ食べたことがあるというにとどまる。直接鉄板で焼くわけでもないカップ焼きそばでも、こんな具合だ。
そんなわけで私は今でも、お好み焼きの作法を知らない。茶道を習ったことのない人が抹茶をいただくのに戸惑う以上に、私はお好み焼きにうろたえる。何しろお好み焼き(「広島焼き」を含む)を食ったことは、生涯に 3度しかない。3度とも上述の大阪在住カメラマンに有無を言わせず連れて行かれ、何から何までセットしてもらって、おずおずと食べた。
というわけで、お好み焼きというものに全然馴染めない私は、ソースで天ぷらを食うという文化にも馴染めない。嫌いとか不味くて食えないとかいうのではなく、「馴染めない」のである。「食」に関する文化の違いは、「うまい/まずい」ではなく、「馴染める/馴染めない」の感覚から生じるのだ。
そして小麦粉とソースの組み合わせに関する文化は、ソースで天ぷらを食うことも含めて、本当に西と東でかなりきれいに分かれるみたいなのである。
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コメント
俺は天つゆがあれば天つゆですけれどね
( ´,_ゝ`)
投稿: ひろゆき | 2013年3月12日 17:13
私は京都人ですが、コロッケにも醤油をかけるぐらいの断然醤油派です。なので、関西で天ぷらの入ったお弁当を買うと、必ずソースの入った容器しかついておらず、いつも閉口します。
そういえば私の叔父は、キャベツの千切りをマヨネーズで和えた後、ソースをかけてうまそうに食ったり、カレーライスにソースをかけて食ってましたね。
投稿: notch | 2013年3月12日 18:12
ひろゆき さん:
>俺は天つゆがあれば天つゆですけれどね
前に関西のどこだか (大阪だったかなあ) で「天もり」 を食べたら、そばつゆと別に天つゆが付いていたので、びっくりしたことがありました。
関東の人間は、そばについている天ぷらはそばつゆで食うもんだと思っていて、そばに天つゆなんかついていたら、かえって無粋と思ってしまいますがね。
投稿: tak | 2013年3月12日 19:15
notch さん:
>私は京都人ですが、コロッケにも醤油をかけるぐらいの断然醤油派です。なので、関西で天ぷらの入ったお弁当を買うと、必ずソースの入った容器しかついておらず、いつも閉口します。
関西にも 「天ぷらは醤油」派は存在するんですね。心強い (^o^)
投稿: tak | 2013年3月12日 19:16
お邪魔します(笑)
お久しぶりです
私は、天麩羅は、天つゆと塩の二択しかないものと思っていました
現役時代は、社用などで(笑)天麩羅専門レストランで食べていたからです
しかし、この頃、自分で幕の内弁当を買ってきて食べてみると,天麩羅が一品だけ(笑)(ほとんどがエビ天)(たまに野菜天麩羅)入っていて、気が付いたら私も、添付のソースをかけて食べていました(現在、大阪在住ですから)
この記事を読むまで、天つゆ・塩の二択以外のソースを掛けている・・・という自覚はありませんでした
まあ、この場合、天麩羅のレベルもレベルですから,ソースでも構いません
なお、大阪では,紅ショウガの天麩羅というものが、ポピュラーです
主に、弁当に入って居ますが(笑)
私はもともと大阪育ちなので、うどん文化の方ですが、蕎麦屋にも時々入ります
近所に有名店があるので
その蕎麦屋では、いつも天麩羅蕎麦を注文しますが、さすがにソースは,出て来ません(笑)
投稿: alex99 | 2013年3月12日 22:50
alex さん:
>この記事を読むまで、天つゆ・塩の二択以外のソースを掛けている・・・という自覚はありませんでした
このあたりが、大阪の魔力ですね (^o^)
>まあ、この場合、天麩羅のレベルもレベルですから,ソースでも構いません
と、かくのごとくに違和感を覚えないというのも、文化圏のなせる技でしょうね。
私なんか、本当に馴染めませんから。
>なお、大阪では,紅ショウガの天麩羅というものが、ポピュラーです
またしても、意表を突くことを!
思わず Google で画像検索してみると、冗談じゃなく本当にあるんですね。
びっくりです。馴染めん! (^o^)
とすると、我が故郷でポピュラーな「納豆汁」(納豆入りみそ汁)なんていうのも、関西人には馴染めないんでしょうかねえ。
投稿: tak | 2013年3月12日 23:09
tak-shonai さん
大阪名物(笑)の紅ショウガの天麩羅
馴染めないとおっしゃいますが(笑)
みょうがの天麩羅というものがありますね
味覚的には、あれに近いかな?
発想的には,天麩羅油と正反対のピリ辛と清涼さ(笑)というところでしょうか?
あまり塩辛くない,薄味の薄くスライスされた紅ショウガを使うんですが、案外いけますよ(笑)
さすがに、大阪でも、恐らく、ちゃんとした蕎麦屋では出て来なくて
弁当専用の庶民メニュー(笑)だと思いますが
私も,大阪育ちながら、今回、帰阪して初めてお目にかかりました
投稿: alex99 | 2013年3月12日 23:39
私の母方は祖父佐賀県人祖母大阪人、母は大阪育ちで父佐賀県人、私は小2まで佐賀で育ちましたが、家の中の食文化はずっと女系の大阪風やったと思います。
で、物心ついたときからうちの天ぷらは甘味少ない薄口醤油仕立ての天つゆに大根おろし、醤油やソースは間に合わせやと今でも思てますが、どちらか選べと言われたら、私はおしょゆうです。
それから、スーパーで売ってる出来合いのつゆにも蕎麦用と素麺用を分けてるメーカーがあるくらいなので、薄口醤油のあっさり天つゆと濃口醤油のしっかり蕎麦つゆは別物やと、関西では両方出てくるんやないでしょうか。揚げ油の違いもあるでしょうしね。
そうそう、紅生姜の天ぷらは、商店街や市場の総菜屋には、うちらが子供の昔にも並んでた定番商品です。
それにしても、どちらの地図でもなんか浮いてますねぇ、佐賀県は^^;
投稿: Jizi_t | 2013年3月13日 11:02
>そんなわけで私は今でも、お好み焼きの作法を知らない。茶道を習ったことのない人が抹茶をいただくのに戸惑う以上に、私はお好み焼きにうろたえる。
大阪のお好み焼き屋では、焼いたのが出てくるのではなく、材料が鉄板のある席に運ばれて出てくるだけです。あとは、客がああだこうだ言いながら、つまり、もうひっくり返してもいいんちゃうかとか、まだ早いとかの会話ですね。大阪人はとにかく、くっちゃべるのが好きなので、お好み焼きはぴったりなんです。広島焼きは技術がいるのでこうはいきません。
特に女の子と行くと、擬似家庭の雰囲気が生まれて、いい雰囲気になります。
投稿: ハマッコー | 2013年3月13日 20:58
alex さん:
>大阪名物(笑)の紅ショウガの天麩羅
>馴染めないとおっしゃいますが(笑)
馴染めないというだけで、食えばそれなりにおいしくいただけるんじゃないかという気はします。
しかしながら、自分から積極的にチョイスして食べようとは思わないので、申し訳ないですが、それが「馴染めない」ということです ^^;)
私は前にも書きましたが、どこに行っても大抵どんなものでも食えます。ハツカネズミの踊り食いとかはちょっと困りますが、虫だろうが幼虫だろうが、食います。
ただ、「馴染める/馴染めない」は、別の問題ですので、こればかりはゴメンナサイというしかありません。
投稿: tak | 2013年3月13日 22:39
Jizi_t さん:
へえ、三代ぐらい続いた大阪人だと思っていましたが、佐賀の血も半分混じっているんですか。それでも、さすが食文化は女系で受け継がれるんですね。
途中で佐賀の地に 「隔離」 されていたので、多分戦後になって猛威を発揮した 「ソースで天ぷら」 文化に感染せずに済んだという仮説はいかがでしょうか?
>それから、スーパーで売ってる出来合いのつゆにも蕎麦用と素麺用を分けてるメーカーがあるくらいなので、薄口醤油のあっさり天つゆと濃口醤油のしっかり蕎麦つゆは別物やと、関西では両方出てくるんやないでしょうか。
なるほど。
蕎麦つゆで天ぷら食うなんて、それこそ 「馴染めない」 ということなのかもしれませんね。
>揚げ油の違いもあるでしょうしね。
これ、このコメントをきっかけとしてググってみて、初めて明確に知りました。
前から、「江戸の天ぷら力任せだな」とは思っていましたが、油からして違うんですね。
ちなみに、私の生まれた庄内は、西回り航路の終着地ということもあって、天ぷらは上方風に近いと思います。
それでも、醤油文化を捨ててソースをかけるには至りませんでした。
(佐賀よりもずっと離れてるし ^o^)
>それにしても、どちらの地図でもなんか浮いてますねぇ、佐賀県は^^;
徹底した「二重鎖国」制度を敷いていたので、隣接地域からの影響よりもむしろ、幕府のある江戸からの影響の方を受けたんでしょうかね。
投稿: tak | 2013年3月13日 23:03
ハマッコー さん:
>大阪人はとにかく、くっちゃべるのが好きなので、お好み焼きはぴったりなんです。広島焼きは技術がいるのでこうはいきません。
なるほど。
だから広島焼きは、完成品が供されるんですかね。
だとしたら、今度広島に単独で出張しても、駅ビルのはずれにある広島焼き屋の群落に、一人で突入できますかね。
(これまでは、ビビッてしまって入れませんでした。外国の B級メシ屋には平気で突入するのに ^^;)
>特に女の子と行くと、擬似家庭の雰囲気が生まれて、いい雰囲気になります。
ほうほう、なるほど。これは新鮮な情報です (^o^)
投稿: tak | 2013年3月13日 23:09
大阪育ちの(大学からずっと東京ですが)の私が,久しぶりに東京でお好み焼きに出会ったのは、十数年前
びっくりしたのは、お好み焼きを,客にクックさせないんですね
コックが偉そうに,勝手に、ヘビースペック過ぎる(時代の変化もありますが)マヨネーズまみれの分厚い,柔らかい「おこのみやき」を作り上げて、客に与える
お好み焼きは,大阪では、大阪経験のあるハマッコーさんが指摘されているように、片隅で,客が自分好みに焼き上げるものです
勝手に作るなよ!
高校時代の私は、コテでペタペタと叩いて,乾いた薄手のお好み焼きを作るのが楽しみだったのに,出て来たのは,厚手で味の濃い、別物でした
今は,大阪でも,同じ方式です
中国人の女の子が焼いてくれます
余計に反中感情が(笑)
投稿: alex99 | 2013年3月14日 00:51
alex さん:
そうですか。
大阪でも客が自分で焼かない方向なんですか。
ますますわからなくなってきました (^o^)
投稿: tak | 2013年3月14日 00:59
はじめまして(^O^)
いつも楽しく拝見させていただいています(^o^)/
私は沖縄に住んでいますが、鉄板系コナモンを沖縄で食べたのが先日(昔からある)お好み焼き屋に行ったのみで、沖縄では(かなり増えては来ているのでしょうが)お好み焼き屋やもんじゃ焼き屋というものはあまりないのに、98%の人が「まあ好き」以上というのには驚きです(^_^;)
コナモンなら、サーターアンダギーやヒラヤーチー、タンナファクルーなど色々とあります。
(もちろん、天ぷらも子供の頃からおやつとしても食べていましたし)
私は東京在住の頃にお好み焼きやネギ焼きを食べたり、大阪出張や広島出張の時に地元のお好み焼きやたこ焼きを食べたりしていたので、沖縄に帰ってきた今でも自宅で焼いたりはしていますがね。
投稿: harmar | 2013年3月22日 14:41
harmar さん:
>コナモンなら、サーターアンダギーやヒラヤーチー、タンナファクルーなど色々とあります。
サーターアンダギー以外は初耳でしたので、ググって調べました。
ヒラヤーチーは、クレープっぽくて、沖縄の鉄板系コナモンと言えそうですね。
投稿: tak | 2013年3月22日 23:12